
結論「良質な睡眠パターンは、生物学的年齢を若返らせ、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患リスクを下げる」
この記事はこんな方におすすめ
✅睡眠の質が“内臓年齢”や病気リスクにどう関係するのか知りたい人
✅喘息・COPD・肺の不調に悩んでいて、生活改善のヒントを探している人
✅生物学的年齢を若く保ち、老化や病気を予防したい人
✅睡眠リズムやいびきが気になっていて、医学的な根拠ある対策を知りたい人
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:「ぐっすり眠るだけで、喘息やCOPDのリスクが下がるって本当?」しかも“体の中の老化”にも関係があるって?
🟡結果:睡眠スコアが1点上がるごとに、生物学的年齢加速(PhenoAgeAccel)は0.156年減少し、喘息リスク14.3%、COPDリスク12.4%、ILDリスク6.7%の低下が見られた。この関連においてPhenoAgeAccelが媒介的な役割を果たしていた。
🟢教訓:「睡眠」は体を休めるだけじゃない。“炎症”を抑えて肺の健康を守り、体内の老化速度を遅らせる大事な習慣である。
🔵対象:イギリスの成人30万人超を平均12.5年にわたり追跡した、信頼性の高い前向き大規模コホート研究がベース。

※本記事内の画像は主にChat GPTおよびGeminiを用いて、すべてAIで生成しております。すべてイメージ画像であり、本文の内容を正確に表したものではありません。あらかじめご了承ください。
はじめに
皆さん、毎日質の良い睡眠をとれていますでしょうか?
私は日中にいつも眠いです(笑)
実は「睡眠の質」が「呼吸器、いわゆる肺や気管支の疾患」と関係があることをご存じでしょうか?
慢性呼吸器疾患(CRDs)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、間質性肺疾患(ILD)などを含み、世界的に見ても非常に一般的な非感染性疾患です。
これまでの研究により、不適切な睡眠パターン(睡眠不足や過剰な睡眠、不眠症、いびき、日中の眠気など)が、喘息やCOPDのリスク上昇と関連していることが示唆されてきました。
しかし、睡眠パターンがCRDの発症にどのように影響するのか、その具体的なメカニズムは未だ十分に解明されていませんでした。
今回ご紹介するのは、この疑問に答えるべく実施された、英国発の大規模な前向きコホート研究です。
この研究では、「生物学的年齢(PhenoAge)」という、見た目ではわからない“体の中の老化度”が、睡眠と呼吸器疾患のリスクを結びつける媒介役となっていることが初めて明らかになりました。
今回は、英国発のこの注目研究をご紹介し、日本でも活かせる健康づくりのヒントを解説します!
noteで簡略版も公開しています↓↓↓

自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。
今回読んだ論文
“Accelerated biological age mediates the associations between sleep patterns
and chronic respiratory diseases: Findings from the UK Biobank Cohort”
(加速した生物学的年齢が睡眠パターンと慢性呼吸器疾患の関連を媒介する:UKバイオバンク・コホート研究の結果)
Dongze Chen, Zekang Su, Yali Zhang et al.
PMID: 39488025 DOI: 10.1016/j.hrtlng.2024.10.012
掲載雑誌:Heart & Lung【アメリカ】 2024年11月
研究の要旨
研究目的
睡眠パターンと慢性呼吸器疾患(CRDs)の関連性を調査し、生物学的年齢(PhenoAge)がその関連にどの程度媒介する役割を果たすかを解明すること。
研究方法
英国の大規模な前向きコホート研究であるUKバイオバンクのデータを使用。5つの自己申告による睡眠特性から「睡眠スコア」を算出し、生物学的年齢(PhenoAge)を評価。多変量解析および媒介分析により、CRDsの発症リスクとの関連性を評価した
研究結果
睡眠スコアが1点上がるごとにPhenoAgeは0.156年減少し、CRD(喘息、COPD、ILD)のリスクも有意に低下した。PhenoAgeは、睡眠スコアとCRDの関連を部分的に媒介していた。
結論
より良い睡眠スコアは、より若い生物学的年齢とCRDリスクの低下に有意に関連しており、生物学的年齢がその関連において媒介的な役割を果たしていた。
研究の目的
この研究は、世界的に一般的な非感染性疾患である慢性呼吸器疾患(CRDs)(主にCOPD、喘息、ILDを含む)と、
睡眠パターンとの関連性を深く掘り下げることが目的でした。
従来の研究では、不健康な睡眠パターン(睡眠不足・過剰、不眠症、夜型、いびき、日中の眠気など)がCRDリスクの上昇と相関することが示されていましたが、
その背後にある生物学的なメカニズムは不明瞭でした。
そこで本研究は、見た目の年齢ではなく、血液検査データなどから算出される「生物学的年齢加速(PhenoAgeAccel)」に注目し、
この体内の老化度が、睡眠とCRDリスクの関連を媒介しているのではないかという仮説を検証しました。
研究の対象者と背景
対象疾患
研究で追跡された呼吸器疾患は以下の3つです:
✅気管支喘息(ぜんそく)
✅COPD(慢性閉塞性肺疾患:いわゆる肺気腫・タバコ病)
✅ILD(間質性肺疾患)
研究の対象者
• UK Biobankに2006年から2010年の間に登録された中高年(40~69歳)の参加者のうち、ベースラインでCRDと診断されていなかった303,588人が解析対象となりました。
• 参加者の平均年齢は登録時点で56.6歳であり、追跡期間の中央値は12.5年に及びました。
• 追跡期間中に、
喘息と診断されたのは11,105人(3.7%)、
COPDは9,380人(3.1%)、
ILDは1,667人(0.5%)でした。
全体のCRD発症者は20,803人(6.9%)でした。

注意点:人種的背景
UK Biobankの参加者の大多数(95.3%)は白人(Write)であったため、この結果を日本人を含む多様な集団に外挿する際には慎重な考慮が必要であると、著者らは述べています。
研究の手法と分析の概要
睡眠スコアの算出方法
本研究では、UKバイオバンクの自己申告情報に基づき、以下の5つの睡眠特性を用いて「睡眠スコア」(0点から5点)が算出されました。
健康的な特性を満たすごとに1点が加算されました。
1️⃣ 睡眠時間(7〜8時間が理想)
2️⃣ 日中の眠気(ない方が良い)
3️⃣ クロノタイプ(朝型が良い)
4️⃣ いびき(ない方が良い)
5️⃣ 不眠症(ない方が良い)
このスコアにより、参加者は以下の4つのグループに分類されました:
理想的(5点)
良好(4〜5点)
中程度(2〜3点)
不良(0〜1点)
生物学的年齢の測定(PhenoAge)
生物学的年齢(PhenoAge)は、暦年齢と9つの一般的な臨床生化学的バイオマーカー(例:C反応性蛋白、アルブミン、白血球数など)の線形結合によって計算されました。
PhenoAgeAccel(生物学的年齢の加速:車のアクセルのイメージ)は加速した老化を示唆します。
疾患の判定と解析方法
疾患の有無は、電子医療記録およびICD診断コードをもとに判定されました。
加えて、参加者の血液データを用いて生物学的年齢(PhenoAge)を推定し、呼吸器疾患との関係を評価。
解析にはCox比例ハザードモデルなどの統計手法が用いられ、睡眠パターンが疾患リスクにどう影響し、さらにPhenoAgeがその媒介になっているかどうかが検討されました。
信頼性の確保として、解析にあたり、社会人口統計学的因子(年齢、性別、BMI、民族性)、社会経済的地位(教育レベル、Townsend剥奪指数)、生活習慣(喫煙状況、飲酒頻度、運動量、食事スコア)など、既知の重要な交絡因子がすべて調整されました。
【補足:各種用語】
UK Biobank(UKバイオバンク)
イギリスで50万人以上の成人を対象に、健康・生活習慣・遺伝情報などを長期にわたって追跡している世界有数の大規模研究プロジェクトです。
医療や公衆衛生の研究に広く活用されており、信頼性の高いデータベースとして知られています。
クロノタイプ
クロノタイプとは、人それぞれが持つ「朝型・夜型」などの体内時計の傾向を指します。
朝早く起きて活動するのが得意な人は「朝型」、夜に活動が活発になる人は「夜型」とされます。
睡眠と健康の関係では、朝型のほうが生活リズムが整いやすく、健康リスクが低い傾向があるといわれています。
生物学的年齢(PhenoAge:フィーノエイジ)
見た目や実年齢とは異なり、「血液検査などの身体データから推定される、体の中の老化度」を示す指標です。
PhenoAgeはその一種で、炎症や代謝など複数のバイオマーカーを元にしており、病気のリスクや健康寿命の予測に活用されています。
PhenoAgeAccelは、この生物学的年齢が暦年齢に対してどれだけ加速しているかを定量化したものであり、死亡や様々な疾患の予測因子として広く認識されています
COX比例ハザードモデル
統計解析で使われる手法のひとつで、
「ある条件(たとえば睡眠スコア)が病気の発症リスクにどれくらい影響するか」を解析するためのモデルです。
本研究では、睡眠パターンと呼吸器疾患の発症リスクの関連を調べるのに、このCOX比例ハザードモデルが使われました。
研究結果
本研究では、睡眠スコア、生物学的年齢、CRDリスクの間に一貫した関連性が示されました。
1.健康的な睡眠パターンは生物学的年齢を若返らせる
線形回帰分析の結果、健康的な睡眠パターンは以下のように生物学的年齢の加速(PhenoAgeAccel)と有意に負の関連を示しました。
• 睡眠スコアが1点上がるごとに、PhenoAgeAccelは平均0.156年減少(Beta: -0.156, P < 0.0001)。
⇒良好な睡眠で加速が遅くなった
• 睡眠パターンが「良好」(スコア4~5)な参加者と比較して、「不良」(スコア0~1)な参加者は、PhenoAgeAccelの中央値がより高かった(不良: 0.6年、良好: -1.1年)。
⇒不良な睡眠で加速が促された
• 個々の睡眠特性では、
「適切な睡眠時間(7~8時間)」
「日中の眠気のなさ」
「朝型(クロノタイプ)」
の3つが、PhenoAgeAccelの低下と特に強い関連を示した。
2.加速した生物学的年齢はCRDリスクを上昇させる
PhenoAgeAccelが暦年齢に対して加速しているほど、各種CRDのリスクが増加しました。
• PhenoAgeAccelが1年増加するごとに、
⇒喘息リスクは2.8%増加 (HR: 1.028)
⇒COPDリスクは4.3%増加 (HR: 1.043)
⇒ILDリスクは5.7%増加 (HR: 1.057)
3.健康的な睡眠パターンはCRDリスクを大幅に低下させる (Path c)
睡眠スコアが高いほど、CRDの発症リスクが累積的に減少する傾向が見られました。
• 睡眠スコアが1点上がるごとに、
⇒喘息リスクは14.3%減少 (HR: 0.857)
⇒COPDリスクは12.4%減少 (HR: 0.876)
⇒ILDリスクは6.7%減少 (HR: 0.933)
個別の睡眠特性において、最も保護効果が高かったのは以下の項目でした。
• 日中の頻繁な眠気がない:
⇒喘息リスク29.1%減少
⇒COPDリスク24.1%減少
⇒CRD全体リスク25.9%減少。
• 不眠症がない:
⇒喘息リスク25.4%減少
⇒COPDリスク16.2%減少
⇒CRD全体リスク20.4%減少。
• 適切な睡眠時間(7~8時間):
⇒喘息リスク17.9%減少
⇒COPDリスク19.1%減少。
4.生物学的年齢が睡眠とCRDの関連を媒介する
本研究の核心である媒介分析により、PhenoAgeAccelが睡眠スコアとCRDリスクの関連において、媒介的な役割を果たしていることが確認されました。
• 睡眠スコアとCRDの関連におけるPhenoAgeAccelの媒介割合は、
⇒喘息で2.81% (95% CI: 2.35% to 3.27%)。
⇒COPDで4.94% (95% CI: 4.23% to 5.66%)。
⇒ILDで12.48% (95% CI: 10.43% to 14.53%)。
特に、「日中の眠気のなさ」とCOPDの関連(媒介割合10.20%)や、「クロノタイプ」とCRD全体(媒介割合12.77%)において、生物学的年齢が重要な生物学的メカニズムを担っていることが示されました。

研究の結論
一言でまとめると、
健康的な睡眠パターンを持つことは、体内の老化速度を遅らせ、それが喘息やCOPDなどの慢性呼吸器疾患のリスク低下に繋がるということです。
この結果は、睡眠の質が単なる疲労回復を超えて、全身の細胞レベルでの老化プロセス(生物学的年齢)を通じて、慢性的な肺の健康に深く関与していることを示しています。
また、PhenoAgeAccelのような客観的な生物学的年齢の指標が、CRDの予防やスクリーニングにおいて有効なツールとなる可能性を支持しています。

【礼次郎の考察とまとめ】
論文著者らの考察
媒介メカニズム:炎症と免疫調節
著者らは、不健康な睡眠パターンがCRDにつながる中間メカニズムとして、炎症と免疫調節不全が関与していると考察しています。
睡眠障害が発生すると、視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)軸や交感神経系が活性化し、炎症性サイトカイン(IL-6やTNFなど)の放出を促すことで、CRDを誘発・悪化させる可能性があります。
PhenoAgeAccel自体が、C反応性蛋白や白血球数といった炎症・免疫関連のバイオマーカーを用いて構築されており、体内の炎症状態を反映していることが、媒介役割の根拠となっています。
公衆衛生上の示唆
この知見は、公衆衛生上および臨床的に重要な意味を持ちます。
睡眠スコアはCRDの一次予防における信頼できるスクリーニングツールとして価値があり、PhenoAgeAccelは生物学的年齢の有効な尺度としてCRDとの強力な関連性を持つことが裏付けられました。
研究の限界
本研究は大規模で信頼性が高いものの、いくつかの限界があります。
UKバイオバンクの参加者は主に白人(コーカソイド)であり、一般集団を代表していない可能性が指摘されています。
また、睡眠特性が自己申告に基づいているため、リコールバイアスによる誤分類の可能性が残ります。
さらに、この研究では睡眠時無呼吸などの重要な交絡因子を考慮できておらず、残余交絡の存在も排除できません。
日常生活へのアドバイス
この研究結果を踏まえ、私Dr.礼次郎が提案する、明日から実践できる「肺の健康を守る睡眠習慣」は以下の通りです。
✅ 7~8時間の安定した睡眠時間を確保する
適切な睡眠時間(1日7~8時間)が、生物学的年齢の加速を防ぐ重要な要素であることが示されています。
✅ 朝型の生活リズムを意識する
「早いクロノタイプ(朝型)」は、PhenoAgeAccelの低下やCRDリスクの減少と関連していました。
日光を浴びるなどして、体内時計を朝型にリセットすることを試みましょう。

✅日中の頻繁な眠気を放置しない
日中の強い眠気は、CRDリスクの上昇と強く関連しています。眠気の原因を探り、生活リズムの乱れを解消することが重要です。
✅不眠の訴えがあれば専門医に相談する
不眠症の不在はCRDリスクの大幅な低下と関連していました。
持続的な不眠は、単なる寝不足ではなく、体内の慢性炎症のサインである可能性があり、専門的な介入が必要です。

✅いびきや無呼吸がある場合は評価を
論文の限界点として挙げられた睡眠時無呼吸は、CRDの悪化につながる重要な因子です。
いびきや睡眠中の呼吸停止が疑われる場合は、睡眠専門医に相談し、適切な診断と治療を受けてください。

肺の健康と、体内から若々しくあるために、ぐっすり眠る良質な睡眠は、あなたの「生物学的年齢」を巻き戻す、最強の予防薬なのです。
締めのひとこと
今夜から、肺の健康のためにぐっすり眠る習慣を意識してみませんか?

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
本ブログでは、Pubmed、医中誌、Clinical Key、ヒポクラ、m3、日経メディカル、ケアネットなどの信頼性ある医療情報サイトを参考に、論文の検索・選定を行っています。
記事の内容は、筆者自身が論文を読み解き、わかりやすく要約・執筆しています。
免責事項
本記事でご紹介した内容は、あくまで特定の査読済み医学論文の科学的知見を解説することのみを目的としており、筆者(Dr.礼次郎)個人の、診療上の推奨や個人的な意見ではありません。
特定の治療方法、治療薬、生活スタイル、食品などを批判する意図や、推奨する意図は一切ございません。
本記事は、医師による診断や個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
実際の治療方針や服薬については、必ず主治医にご相談ください。
読者の皆様は、記事の内容をご自身の責任において吟味し、適切に判断してご利用ください。
記事内の画像やイラストは、AIを用いて内容をイメージ化したものであり、本文の内容を正確に表したものではありませんので、あらかじめご了承ください。
私礼次郎のおすすめ安眠グッズ
山崎育三郎さんのCMでもおなじみ「ナイトリカバー」🌛
睡眠薬ではないので即効性は無いのですが、
ぐっすり眠れて翌日の疲れが少なく感じます!🌝
ジンジャー味も私の好み👍️
みなさまも、明日に疲れを残してくない日にはぜひ!


コメント