
結論「学業プレッシャーの増大が、現代の若者の情緒不安定を引き起こす主要な原因の一つである可能性が、20年間のデータから明らかになりました。」
この記事はこんな方におすすめ
✅最近、子どもの元気がなくて心配な保護者の方
✅学校現場でのストレスケアに悩む教育関係者の方
✅「勉強のストレス」がどこまでメンタルに響くのか知りたい方
✅10代の不安や抑うつの背景にある社会的要因を理解したい方
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:なぜ近年、10代の若者のメンタルヘルスが悪化しているのか?学業のストレスは本当に関係があるのか?
🟡結果:2009年から2021年の間に、強い学業プレッシャーを感じる生徒は13%から26%へと倍増し、それに伴い情緒的問題も急増しました。特に中学3年生(Year 11)の女子では、約57%が強い圧力を感じています。
🟢教訓:テストの結果だけでなく、子どもが感じている「負担感」そのものに目を向ける必要があります。特に女子生徒へのサポートは急務です。
🔵対象:英国ウェールズの11〜16歳の男女、計318,554人。学歴社会である日本においても、非常に示唆に富む結果と言えるでしょう。

※本記事内の画像は主にChat GPTおよびGeminiを用いて、すべてAIで生成しております。
すべてイメージ画像であり、本文の内容を正確に表したものではありません。
あらかじめご了承ください。
はじめに
皆さん、こんにちは!
「最近の子どもは、昔よりストレスに弱くなったのでは?」
という話を耳にすることはありませんか?
でも、実態は少し違うのかもしれません。
わたし自身、子どもの頃は成績が良かったものの、高校あたりでガクンと落ちてしまい、そこから必死に食らいついてなんとか医師になることができました。
しかし、今の子どもたちが学んでいる内容を見ると、わたしたちの時代よりも格段に高度化していると感じます。
正直に言って、今この瞬間から、あの過酷な勉強をこなして医者になれと言われても、わたしには到底無理です。
それほど、現代の子どもたちが置かれている状況は、わたしたちの想像以上にシビアなのです。
本日ご紹介するのは、英国の児童心理学・精神医学の専門誌『JCPP Advances』に掲載された、非常に大規模な調査結果です。
20年間という長いスパンで、階級社会であるイギリスの11歳から16歳の若者たちが感じている「学業の重圧」がどう変化し、それが心の健康にどう影響したのか、その真実を一緒に読み解いていきましょう。

noteで簡略版も公開しています↓↓↓

自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。
以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。
今回読んだ論文
“”Change over time in perceived schoolwork pressure and associations with emotional problems among 11-16-year-olds: A repeat cross-sectional study in Wales, UK””
(11〜16歳における学業へのプレッシャーの自覚と情緒的問題の関連の変化:英国ウェールズでの反復横断研究)
Jessica M Armitage, Gemma Lewis, Nicholas Page, et al.
JCPP Adv. 2025 Mar 3;5(4):e70005. doi: 10.1002/jcv2.70005. eCollection 2025 Dec.
PMID: 41395337 DOI: 10.1002/jcv2.70005
掲載雑誌:JCPP Advances【イギリス IF 4.4(2023)】 2025年より
研究の要旨(Abstract)
研究目的
2002年から2021年のウェールズにおける、若者の学業プレッシャーと情緒的問題の長期的推移と、その両者の関連性を明らかにすることです。
研究方法
11歳から16歳の生徒318,554人を対象に、20年間にわたる計8回の反復横断調査を実施し、自己報告によるアンケートデータを分析しました。
研究結果
2009年以降、学業プレッシャーと情緒的問題はともに大幅に増加しており、特に高学年の女子においてその傾向が顕著でした。
結論
学業プレッシャーの増大は、同時期に観察された若者の情緒的問題の増加を説明する重要な要因の一つである可能性が高いという結論に至りました。
考察
近年の経済状況の変化や学歴重視の風潮が、学校現場に高い要求を突きつけ、結果として生徒のメンタルヘルスに負担を強いていると考えられます。
研究の目的
なぜ今、この調査が必要だったのでしょうか。
世界的に若者の不安やうつといった情緒的問題が増加していますが、その具体的な原因を特定する研究は驚くほど少ないのが現状です。
そんな中、学校生活の大部分を占める「学業へのプレッシャー」が、このメンタル悪化の波を引き起こしているのではないかという疑問が浮上しました。
従来の知見では家庭環境やSNSの影響が語られがちでしたが、今回の研究は「学業負担の主観的な変化」が、時代とともにどう心の健康を蝕んできたのかを、31万人という圧倒的な規模で証明しようとしたのです。

研究の対象者と背景
今回の調査の舞台は、英国のウェールズです。
31万人の大規模データ
対象となったのは、2002年から2021年の間にウェールズの二次学校(日本の中学校・高校に相当)に通っていた11歳から16歳の男女、合計318,554人です。

人種と日本への適用
ウェールズの全生徒を対象とした公的な調査に基づいているため、データの信頼性は非常に高いと言えます。
「英国の話だから日本には関係ない」とは言い切れません。
日本も英国と同様、高い学歴志向と厳しい試験文化を持つ国です。
むしろ、同調圧力や「失敗できない」という感覚が強い日本人にとって、この研究結果は他人事ではない警告として受け止めるべきでしょう。
研究の手法と分析の概要
この研究は「反復横断調査」という、非常に手間のかかる手法を用いています。
データの連続性
2002年から2021年にかけて計8回、異なる時期の生徒たちに同じ質問を投げかけ、時代ごとの「平均的なストレス値」を算出しました。
これにより、個人の変化ではなく「社会全体の潮流」としての変化を捉えることができます。

信頼性を高める工夫
学業プレッシャーの強さは4段階、情緒的問題は「気分の落ち込み」「イライラ」「神経質」「睡眠障害」の4項目からなる妥当性の高い尺度(HBSC-SCL)で測定されました。
分析時には、学校ごとの違いや家庭の経済状況による偏りが出ないよう、高度な統計モデル(マルチレベルモデル)が使用されています。
【補足:各種用語】
情緒的問題(Emotional Problems)
不安、抑うつ、イライラ、不眠などの心理的症状のこと。
反復横断調査
異なる時期に、同じ対象者集団(今回は中高生)からサンプルを抽出して繰り返す調査。
統計的有意(P値)
その結果が偶然ではなく、意味のある差であることを示す指標。本研究では一貫して高い有意性が保たれています。
研究結果
驚くべき結果が、数字として突きつけられました。
2009年を境にプレッシャーが「激増」
調査の初期(2002〜2004年)には微増傾向にあった学業プレッシャーは、一度2009年にかけて低下しました。
しかし、そこからが深刻です。
2009年に「プレッシャーを強く感じる」と答えた生徒は13%でしたが、2021年には26%へと倍増しました。
狙い撃ちされる「女子」と「最高学年」
特に注目すべきは、性別と学年による格差です。
性別
女子は男子よりも一貫して高いプレッシャーを感じており、その増加幅も女子の方が大きかったのです。
学年
最上級生である15〜16歳(Year 11)の女子では、2021年時点で57.4%もの生徒が「強いプレッシャー」を訴えています。

学業プレッシャーが情緒を破壊する
データ分析の結果、情緒的問題(不安や抑うつ症状など)の増加傾向は、学業プレッシャーの変化と見事に一致していました。
以下の表は、2009年を基準とした「情緒的問題のスコア」が、その後の調査年でどれだけ増加したかを示したものです。
ここで注目すべきは、学業プレッシャーという要因を統計的に差し引いた(調整した)あとに、増加の数値がガクンと下がるという点です。
| 調査年 | 情緒的問題の増加幅(性別・年齢などを調整) | 学業プレッシャーを考慮に入れた後の数値 | 減少率(学業の影響度) |
| 2019年 | 2.23 | 1.64 | 約26%ダウン |
| 2021年 | 2.79 | 2.12 | 約24%ダウン |
この「減少」は、近年起きている情緒的問題の増加分のうち、約4分の1が「学業プレッシャーの増大」というたった一つの要因だけで説明できてしまうことを意味しています。

変化がなかった指標(陰性所見)
意外なことに、家庭の経済的な豊かさ(Family Affluence)によるプレッシャーの感じ方に大きな差はありませんでした。
お金持ちの子も、そうでない子も、等しく学校からの重圧に苦しんでいるというのが現代のリアルです。
この結果は自分にとってどんな意味があるのか?
「うちの子が暗いのはスマホのせいだ」と決めつける前に、学校で課されているハードルが本人の耐容量を超えていないかをチェックしてあげてください。
彼らは、親の世代が想像する以上に、厳しい競争社会を学校の中で生きているのです。
研究の結論
「学力向上」の代償としてのメンタルヘルス
本研究の結論は明白です。
2000年代後半からの若者の情緒的問題の悪化には、学業プレッシャーの増大が寄与しています。
これは単に「宿題が多い」というレベルの話ではなく、「良い成績を取って良い大学へ行かなければ、幸せな人生はない」という社会全体の文化的・経済的なプレッシャーが、学校という窓口を通じて子どもたちに直撃していることを意味しています。

礼次郎の考察とまとめ
論文著者らの考察
著者らは、この傾向の背景にいくつかの要因を挙げています。
社会・経済的要因
2008年の経済危機以降の緊縮財政により、学校の予算が削られる一方で、学校には高い成果が求められるようになりました。
その歪みが、生徒への過剰な要求となって現れている可能性があります。
性格特性の変化
現代の若者は、以前の世代よりも「完璧主義」の傾向が強まっているという指摘もあります。
失敗を極端に恐れる心理が、プレッシャーをより増幅させているのかもしれません。
日常生活へのアドバイス
この研究結果を、わたしたちの明日からの行動にどう繋げるべきでしょうか。
「成績」以外の価値観を家庭に持ち込む
学校が「数値」で評価される場所であるからこそ、家庭では本人の努力や趣味、性格など「数値化できない良さ」を意識的に褒めてあげてください。
特に中3〜高1の女子のサインを見逃さない
データが示す通り、この層は最も脆弱です。
不眠やイライラが増えたら、それは「甘え」ではなく、システムによる「圧迫死」のサインかもしれません。
プレッシャーの言語化を助ける
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、それが勉強の「内容」なのか「周囲の期待」なのか「将来への不安」なのか、ゆっくりと紐解く手助けをしてください。
「休むこと」を正当化する
休止は敗北ではありません。
メンテナンスです。
追い詰められる前に、戦略的に休ませる勇気を持ちましょう。

子どもたちが「勉強がつらい」とこぼすとき、それは単なる怠慢ではなく、彼らなりに社会の重圧と戦っている証拠です。
どうか「自分たちの頃はもっと大変だった」と比較せず、今の時代を生きる彼らの孤独な戦いに、優しいエールを送ってあげてほしいと思います。
締めのひとこと
「学歴や成績という物差し以上に、目の前の笑顔が大切にされる社会でありたいものですね。」

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
本ブログでは、Pubmed、医中誌、Clinical Key、ヒポクラ、m3、日経メディカル、ケアネットなどの信頼性ある医療情報サイトを参考に、論文の検索・選定を行っています。
記事の内容は、筆者自身が論文を読み解き、わかりやすく要約・執筆しています。
免責事項
本記事でご紹介した内容は、あくまで特定の査読済み医学論文の科学的知見を解説することのみを目的としており、筆者(Dr.礼次郎)個人の、診療上の推奨や個人的な意見ではありません。
特定の治療方法、治療薬、生活スタイル、食品などを批判する意図や、推奨する意図は一切ございません。
本記事は、医師による診断や個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
実際の治療方針や服薬については、必ず主治医にご相談ください。
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