うつ病への新たなアプローチ?ロッククライミングとボルダリングの驚くべき治療効果

屋内ボルダリングジムでカラフルなホールドを登る人物のイラスト。穏やかな表情で集中し、マインドフルネス状態を表現したレトロ調デザイン。

結論「マインドフルネスを取り入れた屋内ボルダリングは、中等度のうつ病症状を軽度へと長期間にわたり改善させる、副作用のない安全で効果的な新しい運動療法です。」

この記事はこんな方におすすめ

✅ うつ病の症状に悩んでおり、薬以外の補助的な改善策を探している方
✅ 運動がメンタルヘルスに良いと聞いて、何を始めようか迷っている方
✅ 新しい趣味としてボルダリングやクライミングに興味がある方
✅ 科学的根拠に基づいた最新のうつ病治療アプローチを知りたい方

時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ

🔴疑問:ロッククライミングやボルダリングは、うつ病の治療に本当に効果があるの?

🟡結果:8〜10週間のインドアボルダリング(マインドフルネスとの組み合わせ)を行うことで、中等度のうつ症状が「軽度」にまで明確に改善し、その効果は6〜12ヶ月間も続きました。

🟢教訓:無理のない範囲で、ボルダリングのように「目の前のことに集中する」運動を取り入れることは、心身の健康改善に大きく役立つ可能性があります。

🔵対象:ドイツとオーストリアで行われた、471名(平均年齢43歳の中等度のうつ病患者)を対象とした研究のまとめです。日本人にも運動療法として十分に応用できる内容です。

※本記事内の画像は主にChat GPTおよびGeminiを用いて、すべてAIで生成しております。
すべてイメージ画像であり、本文の内容を正確に表したものではありません。
あらかじめご了承ください。

はじめに

皆さん、こんにちは!

皆さんは、日々の仕事や家事に追われ、「なんだか気分が晴れないけれど、運動する気力もわかない…」と悩んでいませんか?

わたしも外科医として長時間の手術や緊迫した当直が続くと、心身ともにヘトヘトになり、休日は何もやる気が起きずにただ時間が過ぎてしまう…という失敗をよく経験します。

本日ご紹介するのは、そんな悩みに答えてくれる画期的な運動療法に関する研究です。

イギリスの精神医学専門誌『BMC Psychiatry』に掲載されたこの論文では、なんと「ボルダリング」などのロッククライミングがうつ病の改善に役立つかを検証しています。

今回は、薬に頼らない新しいアプローチとして注目される、このクライミング治療の可能性について一緒に読み解いていきましょう。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、

生の一次情報をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。
以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。

今回読んだ論文

“”Effectiveness of indoor rock climbing and bouldering as treatment for depression – a systematic review””

(うつ病治療としての屋内ロッククライミングおよびボルダリングの有効性:システマティックレビュー)

Robin Larsson, Anette Larsson, Lena Nordeman

BMC Psychiatry. 2025 Sep 23;25(1):858. doi: 10.1186/s12888-025-07292-3.

PMID: 40988014 DOI: 10.1186/s12888-025-07292-3

掲載雑誌:BMC Psychiatry【イギリス IF 3.6(2024)】 2025年より

Effectiveness of indoor rock climbing and bouldering as treatment for depression - a systematic review - PubMed
PROSPERO: CRD42024468119, date of registration: 24-01-2024.

研究の要旨(Abstract)

研究目的

ロッククライミングがうつ病の症状を効果的に軽減できるか、その効果の大きさはどれくらいか、そして効果は長期間持続するのかを評価することです。

研究方法

中等度のうつ病を持つ成人を対象に、屋内ロッククライミングの効果を他の介入(待機リストや他の運動、心理療法など)と比較した7つの臨床試験を収集・分析しました。

研究結果

マインドフルネスを併用した8〜10週間の屋内ボルダリングは、うつ症状を臨床的に意味のあるレベルで中等度から軽度へと有意に減少させ、その効果は6〜12ヶ月後も持続しました。

結論

屋内ロッククライミング(特にボルダリング)は、中等度のうつ病に対する有効で安全な補助的介入として推奨できる有望な治療法です。

考察

クライミング単独の効果なのか、マインドフルネスやグループで行うことによる相乗効果なのかを切り分けるため、今後はさらに質の高い比較試験が求められます。

研究の目的

うつ病は世界中で最も一般的な疾患の一つであり、現在も多くの人が苦しんでいます。

通常の治療としては、抗うつ薬や認知行動療法などのカウンセリング、そして有酸素運動のような運動療法が広く推奨されています。

しかし、薬には副作用のリスクがあり、効果が十分に出ない患者さんも少なくありません。

そこで近年注目されているのが「ロッククライミング(ボルダリング)」です。

クライミングは、高い壁を登るという「問題解決のプロセス」「達成感」、そして目の前の課題に没頭する「マインドフルネス」の要素を含んでおり、ただ体を動かす以上の特殊な心理的効果があるのではないかと考えられています。

この研究は、ロッククライミングがうつ病の症状をどの程度減らすのか、その変化は患者さん自身が実感できるほど意味のあるものなのか、そして一時的ではなく長期間続くのかを解き明かすために行われました。

研究の対象者と背景

この研究がどのような人たちを対象に行われ、具体的にどのような環境で行われたのか、その背景を詳しく見ていきましょう。

対象者のプロフィール

分析の対象となったのは、客観的なテストによって「中等度のうつ病」と評価されたり、医師から診断を受けたりした成人471名です。

参加者の平均年齢は43歳で、女性が270名、男性が197名含まれていました。

単なる趣味ではなく「専門家主導の心理療法」

ここで非常に重要な前提条件があります。

この研究で行われたボルダリングは、休日に友人と遊びで行くような単なるスポーツではありませんでした。

実は、対象者が受けたのは「ボルダリング心理療法(BPT)」と呼ばれる、医療・心理の専門家(心理療法士や精神科の正看護師など)が主導する構造化されたプログラムだったのです。

専門家であり、かつクライミング経験も豊富なインストラクターの指導のもと、8〜13名程度のグループ単位で、マインドフルネス演習と組み合わせて厳密に行われました。

今回含まれた7つの臨床試験はすべてドイツとオーストリアで実施されたものです。

運動によって筋肉を使い、思考を集中させることで得られる脳内の変化は人間の根本的なメカニズムに基づくため、日本人にも応用できる可能性は十分にあります。

しかし、「医療とクライミング両方の専門知識を持つインストラクターが指導するグループ心理療法」という環境を、現在の日本でそのまま再現するのは非常に困難です。

この点は、この研究結果を私たちが実生活に取り入れる上で、大きなハードルになると言えます。

研究の手法と分析の概要

この研究は、過去に行われた複数の質の高い臨床試験を統合して分析する手法を取っています。

具体的にどのように信頼性を高めているのかを解説します。

研究デザインと評価の流れ

研究チームは、2025年1月までに世界のデータベースに登録された論文の中から、屋内ロッククライミングを用いた対照試験を厳選しました。

最終的に7つの質の高い研究(合計10本の論文)が選ばれました。 

介入の期間は1回の単発セッションから、週1〜2回で4週間から10週間継続するものまで含まれ、効果の持続を見るための追跡調査は最長12ヶ月後まで行われました。

患者さんのうつ症状の変化は、国際的に信頼されているうつ病評価スケールを用いて測定されています。

この分析の信頼性を担保する工夫

なぜこのような分析手法が使われたかというと、単一の小さな研究だけでは「たまたま良くなった」可能性を排除できないためです。

研究チームは「PEDroスケール」という客観的な点数をつけて各研究の質を評価し、さらに「GRADEアプローチ」という世界基準を用いて「この結果はどのくらい確実なのか」を厳格に判定しています。

この二重のチェックにより、非常に信頼性の高い結論を導き出しています。

【補足:各種用語】

システマティックレビュー

特定のテーマに関する過去の質の高い研究を世界中から集め、偏りなく総合的に分析する手法のこと。
医学において最も信頼度が高い証拠(エビデンス)とされます。

マインドフルネス

過去の後悔や未来の不安にとらわれず、「今、ここ」にある自分の状態や目の前のことに意識を100%向ける心理的な手法です。

MADRS / BDI-II

うつ病の重症度を測るための評価テストです。
点数が高いほど症状が重いことを意味し、点数が下がれば改善したと判断されます。

MCID(最小臨床的有意差)

統計上わずかに数字が変わったというだけでなく、患者さん自身が「確かに体調が良くなった」と実感できるスコアの最小の変化量のことです。

研究結果

ボルダリングがうつ症状を「実感できるレベル」で改善!

この研究の最もワクワクする発見は、

マインドフルネスを取り入れた屋内ボルダリングを週1回(1回2〜3時間)、8〜10週間継続した結果、患者さんのうつ症状が中等度から軽度へと明確に改善したことです。

具体的には、うつ病評価スコア(MADRS)が平均でマイナス8.3ポイントも低下しました。

これは、患者さんが実感できる基準である「MCID(5ポイント)」を大きく上回る素晴らしい変化です。

もちろん、この変化は統計的にも確かなものでした(P<0.05)。

さらに、この嬉しい効果はプログラムが終了してから6ヶ月後、さらには12ヶ月後でもしっかりと持続していることが確認されました。

他の治療法と比べるとどうなのか?

ボルダリングは、何も介入しない場合(待機リスト)や、自宅で一人で行う運動プログラムと比較して、明確に優れた効果(MCIDを超える差)を示しました。

一方で、変化がなかった(陰性所見)指標もあります。

うつ病の標準的な治療法である「グループ認知行動療法(CBT)」と比較した場合は、スコアに意味のある差は出ませんでした。

これは、ボルダリングが劣っているという意味ではなく、「専門的な心理療法と同レベルの素晴らしい改善効果があった」というポジティブな意味を持ちます。

また、ロープで安全を確保して登る「トップロープクライミング」を4週間行った場合も、症状自体は軽減しましたが、実感できるほどの大きな差(MCID)には届きませんでした。

研究結果のまとめ表

結果の全体像を一目でわかるように表にまとめました。

項目比較対象結果(効果の大きさ)統計的有意性
8〜10週間のボルダリング(+マインドフルネス)無介入(待機リスト)中等度から軽度に改善(実感できる大きな差)有意差あり
8〜10週間のボルダリング(+マインドフルネス)自宅での一人運動プログラムボルダリングの方が実感できるレベルで優秀有意差あり
8〜10週間のボルダリング(+マインドフルネス)グループ認知行動療法(CBT)どちらも同等に改善(悪化していない)有意差なし
4週間のトップロープクライミングウォーキングなど症状は減るが、実感できるほどの差ではない有意差なし
副作用やケガの発生すべての対象者報告なし(極めて安全)

この結果が意味すること

この結果は、ボルダリングが単なる筋肉トレーニングではなく、メンタルヘルスを立て直す強力なツールになることを示しています。

抗うつ薬のように胃腸の不調や吐き気といった副作用を心配する必要がなく、しかも効果が1年も続くというのは、現在治療中の方にとって非常に明るいニュースだと言えます。

研究の結論

安全で有効な「心の補助治療」としての地位

研究の結論として、屋内ロッククライミング(特にマインドフルネスを併用したボルダリング)は、中等度のうつ病に悩む成人にとって、臨床的に意味のある効果をもたらす安全で持続的な補助的介入であることが証明されました。

薬の副作用のリスクを負わずに、楽しみながら心身を回復させるアプローチとして、非常に有望な選択肢となります。

礼次郎の考察とまとめ

論文著者らの考察

グループ効果の可能性と今後の課題

論文の著者らは、今回の素晴らしい結果について冷静な考察も加えています。

一つは、「ボルダリング自体の効果なのか、併用したマインドフルネスの効果なのか、その境界線がまだ明確ではない」という点です。

もう一つは、介入がグループで行われたため、「仲間と一緒に課題に取り組む連帯感」がうつ症状を和らげた可能性もあるとしています。

今後は、抗うつ薬や有酸素運動といった標準治療との直接対決や、ボルダリング単独での効果を測る研究が必要だと述べています。

日常生活へのアドバイス

日本人のわれわれが、この論文から学び活かせる具体的なアクションをいくつか提案します。

週1回の「非日常」をスケジュールに組み込む

週にたった1回、ボルダリングジムに足を運ぶだけでも、心にポジティブな変化をもたらす可能性があります。

まずは初心者向けの体験クラスを予約してみましょう。

「目の前の石」にだけ集中する

壁を登る時は「落ちたらどうしよう」ではなく「次はどの石を掴むか」に集中します。

これが自然なマインドフルネスとなり、日常の悩みから脳をリセットしてくれます。

誰かと一緒に挑戦してみる

一人で黙々と登るのも良いですが、友人やジムの仲間と一緒に「惜しい!」「いけた!」と声を掛け合うことで、孤独感が薄れ、心の回復がさらに早まるかもしれません。

今の治療の「プラスアルファ」として楽しむ

運動が良いからといって、現在処方されているお薬を自己判断でやめるのは危険です。

あくまで今の治療の「心強いサポート役」として主治医と相談しながら取り入れてください。

うつ病の治療というと、「安静にすること」や「薬を飲むこと」ばかりに気が向きがちですよね。

しかし、自らの手足を使って壁を登りきった時のあの圧倒的な達成感は、きっとあなたの心に新しい風を吹き込んでくれるはずです。

焦る必要はありません。

自分のペースで、少しだけ目線を上げてみませんか?

締めのひとこと

「高い壁を乗り越えた達成感は、きっとあなたの心を晴れやかにしてくれます。」

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

本ブログでは、Pubmed医中誌Clinical Keyヒポクラm3日経メディカルケアネットなどの信頼性ある医療情報サイトを参考に、論文の検索・選定を行っています。
記事の内容は、筆者自身が論文を読み解き、わかりやすく要約・執筆しています。

画像は主にChat GPT・Geminiを使用しAIで作成しております。

あくまでも、すべてイメージ画像です。

本文の内容を正確に表した画像ではありませんのでご注意ください。

免責事項

本記事でご紹介した内容は、あくまで特定の査読済み医学論文の科学的知見を解説することのみを目的としており、筆者(Dr.礼次郎)個人の、診療上の推奨や個人的な意見ではありません。

特定の治療方法、治療薬、生活スタイル、食品などを批判する意図や、推奨する意図は一切ございません。

本記事は、医師による診断や個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

実際の治療方針や服薬については、必ず主治医にご相談ください。

読者の皆様は、記事の内容をご自身の責任において吟味し、適切に判断してご利用ください。

記事内の画像やイラストは、AIを用いて内容をイメージ化したものであり、本文の内容を正確に表したものではありませんので、あらかじめご了承ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました