45歳からの激しい運動は危険?中高年における筋骨格系疾患リスクを最適化する「ちょうどいい」運動量の新事実

中高年夫婦が公園を楽しく速歩きしているイラスト。筋肉や関節の健康に適度な運動が重要であり、激しい筋トレは控えるべきことを示している。

結論「45歳以上の中高年者において、激しい運動(VPA)は筋骨格系疾患(MSD)リスクを32%増加させ、最適な健康のための運動量は年齢や高血圧の有無によって異なることが判明しました

この記事はこんな方におすすめ

45歳以上で、これから健康のために運動を始めたいと考えている方
現在、熱心に運動に取り組んでいて「やりすぎ」かどうか不安を感じている方
自身の年齢や持病(高血圧など)に合わせた最適な運動量を知りたい方
変形性関節症やサルコペニアなどの筋骨格系疾患の予防に関心がある方

時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ

🔴疑問:45歳以上の中高年者にとって、筋骨格系疾患(MSD)を予防し、関節や筋肉の健康を保つための最適な運動強度と運動量はどれくらいなのか?
🟡結果:慢性疾患などの交絡因子を調整後、激しい運動(VPA)はMSDリスクを32%増加させました。PAとMSDリスクの関係はU字型であり、最適な週あたりエネルギー消費量(METs)は、45〜74歳で約1500 METs、75歳以上で約1400 METs、高血圧患者で約1600 METsであることが特定されました。 
🟢教訓:45歳以上の方は、MSDリスクを避けるために激しい運動(VPA)を避け、年齢や健康状態に応じて中強度(MVPA)を中心とした最適なMETsを目指して運動量を調整すべきです。
🔵対象:中国の全国的な大規模調査(CHARLS)のデータを用いた45歳以上の成人15,909人を対象とした横断研究であり、信頼性の高い母集団で分析されました。

はじめに

皆さん、定期的な運動されていますか?

私はいつも三日坊主でなかなか続きません(笑)

年齢を重ねるごとに「健康のために運動を始めよう!」と考える方は多いですよね。

しかし、運動はすればするほど良い、という単純なものではないという事実をご存知でしょうか?。

特に中高年層にとって、運動の「量」「強度」のやりすぎが筋肉や関節のトラブルを引き起こす可能性があります。

今回ご紹介するのは、2024年にイギリスの国際公衆衛生雑誌『BMC Public Health』に掲載された運動と健康に関する最新の研究です。

この研究では中国国内の45歳以上の15,909人を対象に、どれくらいの運動量が筋骨格系疾患リスクに影響するのかを詳しく調査しました。

私たち中高年が、安全かつ効果的に健康を維持するための重要な知見を提供してくれます。

noteで簡略版も公開しています↓↓↓

【警告】45歳からの激しい運動は危険?中高年における筋骨格系疾患リスクを最適化する「ちょうどいい」運動量の新事実|Dr.礼次郎
長年の通説が覆されました。 健康のために運動を「頑張りすぎ」ると、関節や筋肉のトラブルにつながります。 45歳以上の中高年者が激しい運動(VPA)を行うと、筋骨格系疾患(MSD)のリスクが、慢性疾患の要因を調整した後でも32%も増加すること...

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた

生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。
以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。

今回読んだ論文

“”Physical activity levels and musculoskeletal disease risk in adults aged 45 and above: a cross-sectional study””

(45歳以上の成人における身体活動量と筋骨格系疾患リスクとの関連:横断研究)

Jieping Zhu, Ting Zhu, Kangli Lai, et al.

BMC Public Health. 2024 Oct 25;24(1):2964. doi: 10.1186/s12889-024-20357-4.

PMID: 39455997 DOI: 10.1186/s12889-024-20357-4

掲載雑誌:BMC Public Health【イギリス】 2024年10月より

研究の要旨

研究目的

45歳以上の成人における身体活動(PA)レベルと筋骨格系疾患(MSD)リスクとの関連を探り、用量反応関係を明確にして、個々に合わせたガイドラインを提供することを目的としました。

研究方法

中国のCHARLSデータを用い、45歳以上の成人15,909人を対象とした横断的分析を実施し 、身体活動(PA)を国際身体活動質問票(IPAQ)に基づき低強度身体活動(LIPA)、中高強度身体活動(MVPA)、高強度身体活動(VPA)に分類し 、多変量ロジスティック回帰モデルなどで関連性を調べました 。

研究結果

慢性疾患などの交絡因子を調整した後、高強度活動(VPA)は筋骨格系疾患(MSD)リスクを32%増加させることが判明しました。身体活動(PA)と筋骨格系疾患(MSD)リスクの関係は非線形なU字型パターンを示し、最適な週あたりのエネルギー消費量(METs)が年齢や高血圧の有無で異なることが特定されました。

結論

45歳以上の成人では高強度身体活動(VPA)が筋骨格系疾患(MSD)リスクを大幅に増加させるため、最適な筋骨格の健康を促進するために、年齢や高血圧の有無に基づいて週あたりの代謝当量(METs)を調整すべきであると結論付けられました。

考察 

低強度身体活動(LIPA)と高強度身体活動(VPA)が中高年者の筋骨格の健康に大きな利益をもたらさないと、いう仮説を支持し、身体活動(PA)が筋骨格系疾患(MSD)リスクに対して閾値効果を持つ可能性 を示唆していると考察しています。

研究の目的

筋骨格系疾患(Musculoskeletal disease:以下MSD)は、高齢者の身体障害の主要な原因であり、これらの状態を予防する上で身体活動(Physical activity:以下PA)の役割を理解することは極めて重要です。

しかし、PAレベルとMSDリスクの間の用量反応関係については、いまだに明確ではありませんでした。

従来の知見では、中高強度活動(Moderate vigorous physical activity:以下MVPA)から高強度活動(Vigorous physical activity:以下VPA)は低強度活動(Low intensity physical activity:以下LIPA)よりも健康に利益をもたらすと示唆されていましたが、一方で高レベルのPAが筋骨格系の傷害リスクを増加させる可能性も指摘されていました。

本研究は、この曖昧さを解消し、45歳以上の成人におけるPAレベルとMSDリスクとの関連を定量的に探ることを目的としました。

具体的には、MSDリスクを低減するための最適なPAレベルを見つけ出し、年齢やその他の健康状態に基づいて個々に合わせた(テーラーメイドの)ガイドラインを提供することを目指しました。

筋骨格系疾患の定義と有病率

中高年になると加齢・筋力低下・姿勢の変化などによりリスクが高まるため、適切な予防が重要になります。

本研究におけるMSDは、骨、筋肉、関節、腱に影響を与える状態を包含しています。

具体的には、医師による診断のあった股関節骨折、関節炎、リウマチ性疾患、および潜在的なサルコペニア(筋肉量減少:2019 AWGS基準に基づく、握力や椅子からの立ち上がり時間で評価) を持つ参加者がMSDグループ(7,014人)に分類されました。

対象者全体のMSD有病率は44.09%でした。

研究の対象者と背景

中国の大規模調査CHARLS(China Health and Retirement Longitudinal Study)データを使用。

本研究は、中国健康・退職縦断調査(CHARLS)の2015年調査からのデータを利用して実施されました。

CHARLSは中国国内の広範囲な地域からの参加者を含む、信頼性の高い大規模な全国規模調査です。

当初21,095人のデータが分析の出発点となり、欠損値を持つ参加者を除外した後、最終的に45歳以上の成人15,909人が分析対象となりました。

• 人数: 15,909人

• 平均年齢: 60.38歳

• 性別: 男性7,558人、女性8,351人(ほぼ半々)

• 年齢構成: 45-59歳および60-74歳のグループが大部分を占めました。

• 都市部・農村部の両方を含む背景として、中国も日本と同様に急速な高齢化社会が進行中であり、生活習慣病や運動不足が社会問題となっています。
アジア人種という共通性もあり、日本人にとっても参考になる内容です。

背景として、中国も日本と同様に急速な高齢化社会が進行中であり、生活習慣病や運動不足が社会問題となっています。
アジア人種という共通性もあり、日本人にとっても参考になる内容です。

研究の手法と分析の概要

身体活動レベルの測定

PAレベルは、世界的に広く使用され、中国でも妥当性と信頼性が示されている国際身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire:以下IPAQ)を用いて評価されました 。

代謝当量(Metabolic equivalents of tasks:以下METs)の1週間あたりの総量(PAエネルギー消費量:METs/週)に基づいて、参加者のPAの強度は以下の3つのレベルに分類されました :

• LIPA(低強度身体活動): 600 METs/週未満
• MVPA(中高強度身体活動): 600〜3000 METs/週
• VPA(高強度身体活動): 3000 METs/週超

【補足:各種用語】

METs(メッツ)

METs は、運動の強さやエネルギー消費量を表す単位で、 1 METsは安静時の消費エネルギー量 に相当します 。

本研究では、
LIPAに3.3 METs(安静時の3.3倍)、
MVPAに4.0 METs(安静時の4.0倍)、
VPAに8.0 METs(安静時の8.0倍)

が割り当てられ 、 週METs は「METs × 日々の活動時間(分) × 週の活動日数」で計算されます 。

統計分析と検討

本研究では、PAとMSDに「関連性があるかどうか」を詳しく調べるために、多変量ロジスティック回帰分析が使われました。

この分析を行うにあたり、結果が他の要因に左右されてゆがまないよう、「交絡因子(結果に影響を与えかねない、運動量とは別の要因)」を以下の通り、段階的に「調整(考慮に入れて影響を取り除くこと)」しました。

• 個人の基本的な情報(人口統計学的要因): 年齢、性別、同居状況、教育レベル。
• 日々の生活習慣(ライフスタイル要因): 喫煙、飲酒、BMI、睡眠時間、階段昇降、投薬使用。
• 既に持っている病気(慢性疾患条件): 高血圧、脂質異常症、糖尿病/高血糖。

さらに、PAレベルとMSDリスクの間の「どれくらい運動すればリスクが最も下がるか」という非線形な関係(U字型パターンのように、一直線ではない関係)を詳細に探るために、制限付き三次スプライン回帰(RCS)という高度な分析手法も適用されました。

研究結果

多変量ロジスティック回帰分析と層別分析の結果、

身体活動(PA)と筋骨格系疾患(MSD)リスクの関連は、活動強度や個人の健康状態によって大きく異なることが明らかになりました。

交絡因子調整後のVPAによるリスク増加

人口統計学的要因、ライフスタイル要因、 および慢性疾患条件 (高血圧、脂質異常症、糖尿病など)をすべて調整した後の分析において、以下の点が確認されました。

• VPA(高強度)に従事する45歳以上の成人 は、LIPAと比較してMSDリスクが 32%増加
(OR = 1.32, 95% CI (1.04, 1.66), P<0.05)。

• MVPA(中高強度)もリスク増加の傾向(OR=1.26)を示しましたが、統計的な有意水準(P=0.052)はわずかに上回りました 。

PAとMSDリスクはU字型の関係

RCS分析の結果、PAエネルギー消費量(METs/週)とMSDリスクの間には U字型の非線形な関係 が存在することが示されました。

これは、PAレベルが低すぎても、高すぎても MSDリスクが高まることを意味します。

MSDリスクが最も低くなる年齢・高血圧別の最適なMETs

最適なPAエネルギー消費量(METs/週)が、層別分析により特定されました。

対象者グループ最適な週あたりMETs
45〜74歳の成人約1500 METs/週
75歳以上の成人約1400 METs/週
45歳以上の高血圧患者約1600 METs/週

年齢と高血圧が関連性に与える影響(層別分析)

解析の結果、年齢と高血圧の状態は、PAレベルがMSDリスクに与える影響を大きく左右することが判明しました。

 【年齢別】60歳から74歳のリスク増加が顕著

この年齢層では、VPAに従事している人は、LIPAよりもMSDリスクが49%も増加しました(OR=1.49, P<0.05)。

加齢に伴う筋肉量や骨密度の減少、回復能力の低下、激しい運動(VPA)がストレスを増幅させリスクを上昇させた可能性を示唆しています。

 【血圧別】正常血圧者では中高強度でもリスクが増加

血圧が正常な人では、中高強度以上の運動は、低強度活動よりもMSDのリスクを高める傾向が見られました

研究の結論

45歳以上の成人において、VPAはMSDリスクを大幅に増加させるため、避けるべきであると結論付けられました。

最適な筋骨格の健康を促進するためには、PAとMSDリスクのU字型の関係を考慮し、年齢や高血圧の有無に基づいて週あたりの代謝当量(METs)を調整することが推奨されます。

• 45〜74歳の成人は約1500 METs/週。
• 75歳以上の成人は約1400 METs/週。• 高血圧患者は約1600 METs/週。

これらの推奨事項は、特にMSDを持つ個人の健康利益を最大化し、リスクを最小限に抑えることを目的としています。

【礼次郎の考察とまとめ】

論文著者の考察

本研究の結果は、PAレベルとMSDリスクの間にU字型の非線形な関係が存在し、PAがMSDリスクに対して閾値効果を持っているというエビデンスを裏付けました。

MVPA(中高強度身体活動)はMSDリスクを減らし、一般的な健康状態を改善する一方で、過剰な活動レベルは筋肉や関節の怪我のリスクを高める可能性があることが示唆されています。

このU字型の傾向は、PAが過剰になるとMVPAであっても腰痛のリスクを高めるという先行研究の報告とも一致します。

特に60〜74歳のグループでVPAがリスクを大幅に高めた背景として、加齢に伴う筋肉量・骨密度の減少や回復能力の低下が、VPAのストレスを増幅させた可能性が指摘されています。

また、高齢者が不適切な運動技術や指導不足のままVPAに従事すること、基礎疾患があること、不十分な休息時間などが、使いすぎによる傷害(overuse injuries)を助長した可能性も挙げられています。

日常生活へのアドバイス

この研究結果は、中高年が運動習慣を見直す上で具体的で貴重な示唆を与えてくれます。

45歳以上が今日から実践すべき「ほどよい運動」のヒントとして、以下が提案されます。

高強度運動(VPA)を避けるか、量とフォームを厳格に管理する

45歳以上、特に60歳を超えている方は、息が切れるような激しい運動(VPA)はMSDリスクを大幅に高める可能性があります。

無理な追い込みは避け、MVPA(中強度)を中心とした継続可能なレベルで実施しましょう。

目標METsを「週1500」を目安に定める

多くの45〜74歳の方にとって、MSDリスクを最適化する目安は約1500 METs/週です。

例えば、MVPA(4.0 METs)を週に5日、1日30分行うことで600 METsとなり、これに日常活動を加えて1500 METsに近づける工夫が必要です。

高血圧の持病がある場合は、1600 METsを目標にする

高血圧を持つ方は、最適なPAレベルが約1600 METs/週と、通常よりわずかに高めです。

最適な筋骨格の健康を促進するために、週METsを適度に増やすべきだと示唆されています。

運動技術と回復時間を確保する

VPAを行う際は、不適切なフォームが傷害リスクを高めるため、専門家から適切な指導を受けましょう。また、十分な休息と回復時間を確保し、オーバーユースによる怪我を防ぐことが重要です。

どんな運動をすればいい?具体例

★ おすすめのMVPA例(週1500METs程度)

✅ 速歩き(30分 × 5回/週)
✅ 軽い筋トレやストレッチ(20分 × 3回/週)
✅ 階段の利用

👉 ポイントは「継続できること」と「オーバーワークにならないこと」。

締めのひとこと

運動は“ちょうどいい”がいちばん。あなたに合ったペースで、筋肉も関節も元気に保ちましょう✨。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

本ブログでは、Pubmed医中誌Clinical Keyヒポクラm3日経メディカルケアネットなどの信頼性ある医療情報サイトを参考に、論文の検索・選定を行っています。
記事の内容は、筆者自身が論文を読み解き、わかりやすく要約・執筆しています。

画像は主にChat GPT・Geminiを使用しAIで作成しております。

あくまでも、すべてイメージ画像です。

本文の内容を正確に表した画像ではありませんのでご注意ください。

免責事項

本記事でご紹介した内容は、あくまで特定の査読済み医学論文の科学的知見を解説することのみを目的としており、筆者(Dr.礼次郎)個人の、診療上の推奨や個人的な意見ではありません。

特定の治療方法、治療薬、生活スタイル、食品などを批判する意図や、推奨する意図は一切ございません。

本記事は、医師による診断や個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

実際の治療方針や服薬については、必ず主治医にご相談ください。

読者の皆様は、記事の内容をご自身の責任において吟味し、適切に判断してご利用ください。

記事内の画像やイラストは、AIを用いて内容をイメージ化したものであり、本文の内容を正確に表したものではありませんので、あらかじめご了承ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました