
結論「白ごはんやパンをやめて、パスタに変えるだけで、体重やお腹まわりが減るかもしれません。」
この記事はこんな方におすすめ
✅ダイエット中だけど炭水化物を完全に抜くのはツラい…という方
✅高齢の家族の食事管理に悩んでいる方
✅白ごはんやパンをよく食べる生活を見直したいと思っている方
✅血糖値や生活習慣病リスクを下げたい中高年世代の方
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:ごはんやパンの代わりにパスタを食べるのって、体にいいの?
🟡結果:パスタをよく食べていた人は、2年後に体重・お腹まわりが明らかに減っていました(平均−0.56kg)
🟢教訓:主食を少し変えるだけでも、健康リスクを減らすヒントになりそうです
🔵対象:スペインの肥満傾向にある高齢者が対象。日本人でも取り入れ方次第で応用可能です

はじめに
皆さん、こんにちは!
突然ですが、ダイエット中でも「やっぱりパスタが食べたいなあ…」と感じたこと、ありませんか?
糖質制限や健康管理を意識していると、どうしても「パスタ=太る食べ物」と思ってしまって、なかなか手が伸びにくいですよね。
私も以前、「炭水化物は全部NG」と思い込んで、ごはんもパンもパスタも我慢していた時期がありました。でも、結局ストレスがたまって、こっそりパスタを山盛り食べてしまったことも…(笑)
本日ご紹介するのは、そんな“パスタ好きだけど健康も気になる”私たちにとって、とても嬉しい研究です。アメリカの栄養専門誌『Journal of the American Nutrition Association(アメリカ栄養学会雑誌)』に掲載されたこの論文は、「パスタを食べても、むしろ体重やお腹まわりが減るかもしれない」という驚きの結果を報告しています。
今回は、その研究結果をもとに、食生活に役立つヒントをわかりやすく解説していきます。
自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

今回読んだ論文
“Pasta Consumption and Cardiometabolic Risks in Older Adults with Overweight/Obesity: A Longitudinal Analysis”
(過体重・肥満の高齢者におけるパスタ摂取と心代謝リスク:縦断的分析)
J Am Nutr Assoc. 2025 Feb 19:1-13.
PMID: 39970054 DOI: 10.1080/27697061.2025.2463454
掲載雑誌:Journal of the American Nutrition Association(アメリカ栄養学会雑誌) 【アメリカ】 2025年2月より
研究の目的
この研究の目的は、「炭水化物の中でも、パスタは体に良い影響を与えるのか?」を明らかにすることでした。
とくに注目されたのは、体重・お腹まわり(腹囲)・BMI・血圧・血糖値・脂質(コレステロールなど)といった「心代謝リスク」と呼ばれる健康指標への影響です。
世の中では「炭水化物=太る」といったイメージが定着していますが、パスタは血糖値を上げにくい“低GI食品”としての特徴があります。研究チームは、「パスタならむしろ健康的なのでは?」という疑問をもとに、科学的なデータでその可能性を確かめようとしました。

研究の対象者と背景
この研究で調査されたのは、スペイン国内に住む55歳〜75歳の高齢者約6,000人。
全員が過体重または肥満であり、さらにメタボリックシンドローム(高血圧や脂質異常などを複数抱える状態)という、生活習慣病リスクの高い人たちです。
対象者は「PREDIMED-Plus(プレディメッド・プラス)」というスペイン全土で行われている大型の健康研究に参加しており、パスタなどの食生活と、体の変化を2年間にわたって追跡されました。
この研究は、オリーブオイルや魚、野菜を多く食べる「地中海食」が基本のスペイン人を対象としています。日本人の場合、主食は白ごはんが中心であり、食文化も異なるため、全く同じ効果が得られるとは限りません。
ただし、「白ごはんやパンの代わりに、パスタ(特にゆで加減が固めで低GIなもの)を取り入れてみる」という食べ方の工夫は、日本でも応用できる可能性があります。

研究の手法と分析の概要
研究チームは、「パスタを食べる頻度や量」が、肥満や生活習慣病の指標にどんな影響を与えるかを明らかにするため、参加者たちの食事と健康データを2年間追跡しました。
まず、年に一度の「食事アンケート(FFQ)」で、146品目の摂取頻度と量を記録。特にパスタについては、乾燥重量60g=1食分として1日あたりの平均摂取量を算出しました。
次に、以下のような身体データを毎年測定しています:
・体重
・BMI(体格指数)
・腹囲(お腹まわりのサイズ)
・血圧(上・下)
・空腹時の血糖値
・HbA1c(直近1〜2ヶ月の平均血糖)
・HDLコレステロール(善玉)・中性脂肪
これらのデータとパスタの摂取量を突き合わせて、「パスタをよく食べる人は、どんな健康変化があるか?」を解析。
年齢、性別、身体活動、カロリー摂取、喫煙・飲酒など、影響を及ぼしうる他の要素を公平に調整し、“パスタだけ”の効果が見えるように統計処理されています。
※「摂取量の違い」はどう比較したの?
パスタの摂取量に応じて、参加者を以下の4つのグループに分類しています:
・第1四分位(最も少ない):1日あたり約3.3g
・第2四分位(やや少ない):1日あたり約18.1g
・第3四分位(やや多い):1日あたり約33.5g
・第4四分位(最も多い):1日あたり約56.2g
このように細かく分けることで、「どの程度食べたら、どんな変化が出るのか?」を段階的に検証している点が、分析の信頼性を高めています。
研究結果:パスタをたくさん食べた人ほど、体重・お腹まわりが減っていた」
この研究で最も注目すべき結果は、パスタの摂取量が多い人ほど、体型に良い変化が見られたということです。
2年間の追跡調査の結果、1日あたりのパスタ摂取量が増えるほど、体重・BMI(体格指数)・腹囲(お腹まわりのサイズ)が段階的に減少していたことがわかりました。
特に、最も多くパスタを食べていたグループ(1日約56g)の人たちでは、以下のような改善が確認されました:
・体重:−0.56kg
・BMI:−0.22
・腹囲:−0.38cm
この変化は、年齢や性別、運動習慣、摂取カロリー、飲酒・喫煙など他の影響を取り除いた「パスタの影響だけを抽出した結果」として、有意な差があるとされています。
さらに注目すべきは、白ごはん、パン、ジャガイモなどの“精製炭水化物”をパスタに置き換えた場合、体重や腹囲の減少がさらに大きくなるという結果です。
つまり、「ただパスタを食べる」のではなく、「他の主食と置き換える」ことに意味があるということです。
パスタ摂取量 (1日あたり) | 体重(kg) | BMI | 腹囲(cm) |
約3.3g(最少) | −0.06 | −0.02 | −0.02 |
約18.1g | −0.15 | −0.05 | −0.08 |
約33.5g | −0.37 | −0.14 | −0.23 |
約56.2g(最多) | −0.56 | −0.22 | −0.38 |
※太字は統計的に有意な変化(P < 0.05)

「体重・BMI・腹囲」以外には大きな変化は見られなかった
なお、パスタ摂取量と関連があったのは、体重・BMI・腹囲に限られました。
以下の健康指標については、パスタの摂取量による明確な変化は確認されませんでした:
・血圧(上・下)
・空腹時血糖値
・HbA1c(1〜2ヶ月の平均血糖)
・HDLコレステロール(善玉)
・トリグリセリド(中性脂肪)
これは、パスタを食べたことで血糖値や血圧、脂質が改善するわけではなかったという意味です。
ただし、逆に言えば「パスタを多く食べても、それらが悪化することもなかった」という結果でもあり、炭水化物を食べること=リスク増大と考えるのは早計だと示しています。
研究の結論
研究チームは、「他の炭水化物(特に精製されたもの)よりも、パスタの方が肥満リスクを下げやすい」と結論づけています。
その背景には、パスタならではの特徴があります:
✅低GI食品であるため、血糖値が急上昇しにくく、インスリン分泌が安定しやすい
✅乾燥パスタの構造的特徴により、消化吸収がゆるやかで腹持ちが良い
✅トマトやオリーブオイル、野菜などと一緒に食べられる地中海型の調理スタイルが栄養的にも優れている
特に、インスリンの効きが悪くなっている人(インスリン抵抗性)にとっては、血糖値の急上昇を防げるパスタは理想的な主食のひとつである可能性が示されています。
ただし、これらの結果はあくまで「食文化と調理法を踏まえたうえでの傾向」であり、極端な置き換えや単品摂取が推奨されているわけではありません。
※ちなみに生パスタ(フレッシュパスタ)は、水分が多く柔らかいため消化が速く、GI値が高くなる傾向があります。
【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点
この研究はスペインで行われ、パスタはトマトやオリーブオイルと一緒に食べるのが一般的です。日本でもパスタは親しまれていますが、クリームソースや高脂肪なトッピングを加えることも多いですよね。
私の意見として言えば、「ごはんの代わりにパスタを食べればOK」と単純に考えるのではなく、「どう調理するか」も含めた工夫が必要です。
低脂質・野菜多めの地中海風パスタにすれば、日本人の食卓にも無理なく取り入れやすくなるでしょう。

まとめ
この研究はスペインで行われ、対象者はオリーブオイル・魚介類・野菜を多く含む「地中海式食生活」を送っています。
日本でもパスタは人気ですが、クリームソースやベーコンなど脂質の多いアレンジも多いため、そのまま真似をすれば同じ効果が得られるとは限りません。
私の意見としては、パスタの健康効果を取り入れるなら、以下の点に注意するのが良さそうです:
・固めにゆでる(アルデンテ)ことでGI値を抑える
・ソースはトマトベースや野菜中心にし、脂質は控えめに
・パスタだけで満腹を狙わず、たんぱく質や食物繊維と組み合わせてバランスを取る
・「置き換え」で主食の全体量を減らすことが前提(=食べすぎない)
「ごはんの代わりに少しパスタを取り入れる」というだけで、無理なく健康管理ができるなら、それはとても良い選択肢だと思います。
締めのひとこと
おいしく食べて、しっかり痩せる。主食をちょっと変えるだけで、体も気分も変わるかもしれません。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
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