『なんとかなるさ~』楽観的な人は認知症になりにくい!5,000人調査でわかった楽観性が認知症を予防する理由を解説!

楽観的な高齢者が明るい公園を歩く一方で、不安げな高齢者がベンチに座っているイラスト。楽観性と認知症予防の関係を表現。

結論「『なんとかなるさ』と将来を前向きに考えられる人は、認知症のリスクが約半分に――。5,000人超の大規模調査で、楽観性が脳を守る可能性が明らかになりました。」

この記事はこんな方におすすめ

✅認知症の予防について、薬や運動以外の視点が欲しい方
✅「性格って変えられるの?」と感じている方
✅楽観性やメンタルヘルスが脳に与える影響に関心のある方
✅老後に向けて、前向きな心の整え方を考えたい方

時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ

🔴疑問:前向きな性格は、脳にもいい影響を与えるの?
🟡結果:将来に対して楽観的な人は、認知症のリスクが約半分になるという結果が出ました。
🟢教訓:「楽観性」は後からでも身につけられる性格の力。脳の健康にも役立つかもしれません。
🔵対象:ブラジル全国の50歳以上5,000人以上を対象とした調査。私たち日本人にも活かせる示唆あり。

はじめに

皆さん、こんにちは!

突然ですが、「性格と認知症って関係あるのかな?」と思ったこと、ありませんか?

私自身、そんな疑問をずっと抱えてきました。

というのも、私の祖母は元教師でとても厳格な人でした。

18歳で上京するまでずっと一緒に暮らしていて、礼儀にも生活習慣にもとても厳しい人でした。

でも、私が社会人になって数年後に久しぶりに帰省したとき、祖母は認知症を発症していて、まるで別人のようにニコニコと穏やかに笑っていました。

私のことも、もう覚えてはいませんでした。

もちろん仕方ないこととは分かっているのですが、やはり、寂しい気持ちが残ったのを今でも覚えています。

一方で、祖父はもともととてもおおらかで、何でも人に分け与えるような楽観的な性格の人でした。

最晩年には足腰が立たず寝たきりになってしまったのですが、頭は最後まで冴えていて、しっかりと会話ができました。

この違いはいったい何だったのか――。

ずっと心のどこかで疑問に思っていたとき、今回たまたま出会ったのが「性格特性と認知症の関係」を扱ったこの論文でした。

本日ご紹介するのは、ブラジルの高齢者5,000人以上を対象に行われた研究で、

「将来への前向きさ=楽観性」が認知症のリスクを下げる可能性を示した、注目すべき調査です。

この研究は、ブラジルの神経心理学専門誌『Dementia & Neuropsychologia』に掲載されたもの。

今回はこの研究をもとに、「性格が脳を守る」仕組みについて、わかりやすく解説していきます。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、

生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

今回読んだ論文

“Personality traits as protective factors of dementia development”

(認知症の発症を防ぐ性格特性)

Dement Neuropsychol. 2024 Oct 25:18:e20240135.

PMID: 39474025 DOI: 10.1590/1980-5764-DN-2024-0135

掲載雑誌:Dementia & Neuropsychologia(認知症と神経心理学)【ブラジル】 2024年10月より

研究の目的

この研究では、「性格が認知症に関係あるのか?」という素朴な疑問を解き明かそうとしています。

これまでの多くの研究は、「どんな人が認知症になりやすいか?」というリスクに注目してきました。

たとえば、高血圧や喫煙、運動不足などの体の問題や生活習慣が関係していることはよく知られていますよね。

でも、「じゃあ逆に、認知症になりにくい人ってどんな人?」という視点での研究は、実はあまり進んでいません。

特に、「性格」や「気持ちの持ち方」がどのくらい脳の健康に影響するのかは、まだよくわかっていなかったのです。

そこでこの研究では、「前向きな性格」や「落ち込みにくい気持ち」が、将来の認知症予防につながるかどうかを、大勢の高齢者データをもとに調べてみたというわけです。

研究の対象者と背景

今回の研究では、ブラジル全国に住む50歳以上の高齢者5,045人を対象にしています。

元は約9,400人が調査に参加していましたが、その中からうつ症状が強く出ている人を除外し、「認知症のリスク」と正確に向き合えるデータだけを使って分析されました。

参加者はブラジルの70の都市や町から集められ、年齢、性別、人種、教育レベルなども幅広くブラジル全体の高齢者の実情をよく反映しています。

たとえば、対象者の平均年齢はおよそ70歳。女性は約6割、学歴の平均は約4年。

人種構成も、白人や黒人、褐色人種などが含まれ、多様性があることが特徴です。

この研究はブラジルで行われたものですが、私たち日本人にもヒントになる部分がたくさんあります。

というのも、ブラジルも日本と同じく高齢化が進み、家族で介護する文化がある社会だからです。

もちろん、生活習慣や教育環境の違いなどから、結果をそのまま当てはめることはできませんが、「性格と脳の健康が関係あるかもしれない」という視点は、日本人にとっても大事な気づきになります。

研究の手法と分析の概要

この研究は、過去に集められた健康調査データをもとに分析した「観察研究(横断研究)」です。

つまり、特定の人たちを長期間追いかけたり新しい治療を試すのではなく、すでにある大量のデータを使って「性格と認知症の関係があるか?」を調べたというスタイルです。

使われたのは、「ELSI-Brazil(エルシ・ブラジル)」というブラジル政府主導の全国的な高齢者研究プロジェクトの一部で、2015〜2016年に全国70地域から集められた50歳以上の人たち9,412人分のデータがもとになっています。

このうち、うつの症状が強いと診断された人たちを除外し、最終的に5,045人のデータで分析が行われました。

調査では以下のような情報が集められていました:


・年齢、性別、教育年数、収入などの基本的な情報
・日常生活がどれだけ自立しているか
・簡単な認知テスト(記憶力や言葉の流暢さなど)
・性格に関する質問(特に「将来を楽観的に考えるかどうか」など)


これらのデータをもとに、「認知症の可能性があるグループ」と「ないグループ」に分け、それぞれの性格傾向を比べました。

そして、ロジスティック回帰分析という統計手法を使い、

「この性格の特徴があると、認知症のリスクがどのくらい変わるか?」を数値として算出しています。

この研究では、あくまで「性格と認知症の関係」を探るための分析が中心ですが、

データの質や規模の点で非常に信頼性の高い結果と言えます。

【補足:各種用語】

観察研究(横断研究)

→ 一定の時点で集められた情報をもとに、「Aの人にはBの傾向があるか」を調べる研究です。新しい治療はしません。

ロジスティック回帰分析

→ 「ある条件を持っていると、〜〜になる確率が高いか低いか?」を調べる統計手法です。

たとえば、「将来を楽観的に考えている人は、認知症になる確率が○%下がる」といった結果を出せます。

オッズ比(OR)

「1」より小さいと「発症リスクが下がる」大きいと「リスクが上がる」と読みます。

研究結果:楽観的な人は、認知症になりにくい!

――性格が脳の健康に関係するなんて、ちょっと意外ですよね。

この研究でいちばん注目すべき発見は、「将来について楽観的に考える人は、認知症になる確率が約半分になる」という結果でした。

参加者の性格に関する13項目を調べたうち、唯一「将来を前向きに考えるかどうか(楽観性)」だけが、認知症のリスクを明らかに下げていることが分かりました。

比較された性格・心理項目一覧と結果

質問項目(要約)認知症との関係統計的な信頼性(p値)
将来を楽観的に考える
(楽観性)
リスク47%減少
(OR=0.53)
p=0.006(有意)
将来の計画を自由に立てられる関連なしp=0.15
楽しいことを追求できている関連なしp=0.32
毎日を楽しみにしている関連なしp=0.50
人生に意味を感じている関連なしp=0.91
自分のしていることを楽しめている関連なしp=0.92
人と一緒にいるのが好き関連なしp=0.39
過去の経験を思い返して幸せを感じる関連なしp=0.63
新しいことをするのが好き関連なしp=0.67
自分の達成に満足している関連なしp=0.28
人生にチャンスが多いと感じている関連なしp=0.14

OR(オッズ比)0.53は、「その性格を持つ人が、認知症になる確率が約半分になる」という解釈ができます。
p値(p=0.006)は、「この結果は偶然ではなく、しっかりとした関係がある」と言える基準値以下(p<0.05)という意味です。

楽観性って、どんな気持ち?

この研究で言う「楽観性」とは、

たとえば「うまくいく気がする」「明日が楽しみ」「困難があっても何とかなると思える」――そんな“前向きな心のクセ”のことを指します。

そして興味深いのは、この楽観性の効果は、学歴や収入、性別、人種などの違いとは関係なく見られたという点です。

つまり、誰にでも関係のある性格の力であり、特別な環境や教育を受けた人だけの話ではありません。

他の性格特性はどうだったの?

この研究では、将来の見通しに関する楽観性以外にも、「毎日が楽しみ」「新しいことが好き」「人生に意味を感じる」など、ポジティブな気持ちや行動の傾向がいくつも検討されました。

しかし、それらはどれも認知症のリスク低下と統計的に有意な関係が見られませんでした。

言い換えると、ポジティブでも“具体的に何を前向きに捉えているか”が重要であり、

特に「未来への希望・見通し」が脳に良い影響を与えている可能性が高いという結果です。

この結果から言えること

「性格なんて生まれつきでしょ?」と思われがちですが、実はそうではありません。

楽観性は、あとから育てることができる“心のスキル”でもあります。

たとえば、


✅日々の中で小さな希望を持つこと
✅失敗しても前向きに受け止める練習
✅ストレスをため込まずにうまく気持ちを切り替える方法――


こうしたメンタルヘルスへの取り組みが、将来的に認知症を予防する一助になるかもしれないのです。

筆者たちはこの結果を受けて、今後は「楽観性を育てる介入(トレーニングやカウンセリングなど)」が認知症予防プログラムの一部として活用できる可能性もあると述べています。

注意点も忘れずに

ただし、今回の研究は「観察研究」であるため、「楽観的だから認知症にならなかった」とはっきりした因果関係を証明したわけではありません。

あくまで「楽観的な人は、そうでない人よりも認知症が少なかった」という関連性を示すものであり、このあとに続く研究が必要であることも強調されています。

研究の結論

この研究からわかったことは、とてもシンプルで大切なことです。

それは――

「将来を前向きに考える気持ち=楽観性」は、認知症のリスクを下げる力があるかもしれないということ。

13の性格項目の中で唯一、認知症を予防する可能性があると示されたのが、「未来について前向きに考えるかどうか」でした。

そしてこの効果は、年齢や性別、学歴や収入、人種といった背景には関係なく、すべての人に共通して見られたという点も重要です。

つまり、特別な才能や環境がなくても、日々の考え方をちょっと変えるだけで、脳の健康に良い影響を与えられるかもしれない――

この研究は、そんな可能性を私たちに示してくれました。

もちろん、性格が直接的に認知症を防ぐとまでは言い切れませんが、将来的には「楽観性を育てるトレーニング」が、認知症の予防策のひとつとして使われる日が来るかもしれません。

この結論は、「性格=変えられないもの」という思い込みに一石を投じ「今からでも脳の健康を守るヒントがある」と読者に伝える希望ある内容になっています。

【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点

今回の研究から得られる最大の教訓は、「将来への希望を持つ気持ち」が、脳の健康を守る可能性があるということです。

特に私たち日本人は、社会全体が「慎重で心配性な性格」を美徳とする傾向があり、「失敗を避けること」や「計画通りに進めること」が重視されがちです。

しかし、この研究が示すように、「なんとかなるさ」という前向きな思考パターンが、実は老後の脳を守る“クッション”のような役割を果たしているかもしれません。

もちろん、文化や教育の違いから、ブラジルと日本では性格傾向や社会的なサポート体制も異なります。

ですので、この結果を日本人にそのまま当てはめることはできません。

それでも、「心の持ちようが脳に影響するかもしれない」という視点は、私たちの生活にとっても非常に価値のある気づきです。

楽観性を育てるって、どうすればいい?

論文では、楽観性を高める具体的な方法までは書かれていませんが、心理学やメンタルヘルスの分野では、以下のような方法が「楽観性を高める介入」として知られています


✅毎日の終わりに「今日あった良かったことを3つ書き出す」習慣
✅未来についてポジティブな想像をする「ビジュアライゼーション」
✅認知行動療法(CBT)による思考の修正
✅ポジティブ心理学に基づくコーチングや対話


こうした取り組みは、自分の思考グセを少しずつ修正する訓練であり、誰にでも始められるものです。

楽観性は「生まれつきの性格」だけでなく、「日々の選択と行動で育てていける心のスキル」でもあるのです。

まとめ

今回ご紹介した研究は、「将来に対する前向きな気持ち」が、認知症のリスクを下げる可能性があるという、心に残る結果を教えてくれました。

食事や運動だけでなく、「気持ちのあり方」までが脳の健康とつながっている――

そんな視点は、忙しくストレスの多い現代を生きる私たちにとって、すごく励みになりますよね。

もちろん、性格を急に変えるのは簡単ではありませんし、毎日ポジティブでいるのも難しいもの。

けれど、未来を信じてみること、明日がちょっと楽しみになることそんな小さな気持ちが、もしかしたら10年後、20年後の自分の脳を守ってくれる力になるかもしれない――

この研究は、そう感じさせてくれる貴重なメッセージを私たちに投げかけてくれています。

締めのひとこと

未来を明るく想像することは、脳にも、心にも、やさしい栄養なのかもしれません。


以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

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