水分不足が便秘の原因?14,000人調査で明らかになった驚きの関係

水を飲む女性と笑顔の腸キャラクター、便秘解消を象徴する健康イラスト

『水分をたっぷりとる人ほど、便秘のリスクは明らかに下がる』というのがこの研究の結論です。

この記事はこんな方におすすめ

✅慢性的な便秘に悩んでいる
✅食物繊維をとっているのに効果が感じられない
✅水分補給を軽視しがち
✅健康的なお通じを目指したいが何をすればよいか分からない

時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ

🔴疑問:「水分を多くとると、便秘に効くの?」
 → 食物繊維や運動だけじゃ不十分?水分との関係を調査しました。
🟡結果:1日3.4リットル以上の水分で、便秘リスクが46%減少
 → 飲み物だけでなく、食事の水分も含めての話です。
🟢教訓:「水分は腸の味方。飲み物+食事でしっかりと」
 → ただし飲みすぎはNG。体に優しい量をコツコツ摂るのがコツ。
🔵対象:アメリカの成人14,492人(主に白人系)
 → 日本人にも応用できる「水分と腸の働き」の基本メカニズムです。

はじめに

皆さん、こんにちは!

突然ですが、皆さんは「なんとなくお腹がスッキリしない…」と感じることありませんか?

私自身、野菜やヨーグルトを意識して摂っていたのに、頑固な便秘が続いた経験があります。正直「こんなに気をつけてるのに、なぜ?」と途方に暮れました。

本日ご紹介するのは、そんな悩みに答えてくれる「水分摂取量と便秘の関係」に関する研究です。

この論文は、イギリスの公衆衛生専門誌『BMC Public Health』に2025年に掲載されたもので、アメリカの大規模調査NHANESのデータをもとに行われました。

今回は、その研究をもとに、なぜ「水分」が便秘予防に効くのか、どうやって生活に取り入れるべきかをわかりやすく解説していきます。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、

生の一次情報をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

今回読んだ論文

“The Association of moisture intake and constipation among us adults: evidence from NHANES 2005-2010”

(アメリカ成人における水分摂取量と便秘の関連性:NHANES 2005–2010のデータから)

BMC Public Health. 2025 Jan 31;25(1):399.

PMID: 39891106 DOI: 10.1186/s12889-025-21346-x

掲載雑誌:BMC パブリック・ヘルス 【イギリス】 2025年1月より

研究の対象者と背景

この研究はアメリカの国民健康栄養調査(NHANES)に基づいたものです。

対象は2005〜2010年に調査を受けた20歳以上の成人14,492人。日常的な食事や飲み物からの水分摂取量と、便秘の頻度を分析しました。

対象者の人種構成は主に非ヒスパニック系白人で、日本人とは体質や食文化が異なります。しかし、「水分が腸の働きを助ける」という基本的な仕組みは人種にかかわらず共通するため、この研究から得られる教訓は日本人にも応用可能です

研究の手法と分析の概要

この研究では、アメリカCDC(疾病予防管理センター)が実施する大規模健康調査「NHANES(ナハネス)」の2005年〜2010年のデータを使用しました。

NHANESは、米国の一般市民を対象とした全国規模の信頼性の高い健康・栄養調査であり、食事や生活習慣、病気の有無など幅広い情報を収集しています。

対象としたデータ

・対象者:20歳以上の成人 14,492人

・除外条件:20歳未満、便秘のデータがない人、水分摂取データが不完全な人など

水分摂取量の評価方法

対象者には2日間の食事内容を詳細に記録してもらい、そこから「食べ物や飲み物すべてに含まれる水分量」を計算。
これにはアメリカ農務省の食品成分データベースを用い、食材ごとの水分含有量を正確に反映しています。
たとえば、スイカやスープのような“水分の多い食品”も含まれ、単なる「水を飲んだ量」だけではない点が重要です。

※水分摂取量は「kg」で表記されますが、これは「ml」単位と同等であり、たとえば「2.5kg=2,500ml(2.5リットル)」と考えると分かりやすいです。

便秘の定義と判定方法

便秘の有無は、以下の2つの条件のどちらかを満たすかどうかで判断されました:

1.排便回数が週に3回未満
2.便の形状が「硬くてコロコロ(Bristolスケール1・2)」

この2点を、事前に30日間の記録として回答してもらっており、「一時的な便秘」ではなく「比較的慢性的な便秘」が対象になっています。

【補足】Bristol便形状スケール(Bristol Stool Form Scale)とは?

Bristolスケールとは、便の形と硬さを7段階で分類した国際的な評価基準です。イギリスのBristol大学が開発しました。

そのうち、スケール1と2が「便秘」とされる状態に該当します:

スケール説明状態
1コロコロで硬い丸い粒(ウサギの糞のよう)重度の便秘
2ソーセージ状だけど硬くてゴツゴツしている便秘気味

これらの便は、腸内に長くとどまりすぎて水分が吸収されすぎた結果、固く乾燥してしまったものです。
逆にスケール3〜5は「理想的な便」、6・7は下痢傾向とされます。

分析方法

最も少ない水分摂取量(Q1)から、最も多いグループ(Q4)まで、4段階に分けて比較しました。

・使用された手法は「重回帰分析(ロジスティック回帰)」と呼ばれ、
年齢、性別、体型、生活習慣(喫煙・運動・飲酒)、既往歴(糖尿病・高血圧・うつ)など
→ 他に便秘へ影響する可能性がある要素を全て調整済み

さらに、「RCS解析(制限立方スプライン)」という方法で、
「水分摂取が増えれば増えるほど便秘リスクが下がるのか?」という“なめらかな変化”をグラフとして可視化しています。

【補足】統計用語のやさしい解説

ロジスティック回帰

「水分が多いと、どれくらい便秘になりにくいか」を他の条件を除いて計算する方法。
「オッズ比(OR)」という数値で示され、「1」より小さいと「リスクが下がる」ことを意味します。

RCS(制限立法スプライン)

数値の変化を“グラフでなめらかに可視化”する方法。今回のように「増えるほどリスクが減る」といった複雑なパターンを直感的に伝えることができます。

研究結果:水分摂取量が多い人は、便秘のリスクが“最大46%減少”

今回の調査では、1日の水分摂取量に応じて便秘のリスクがどう変化するかを、4段階のグループに分けて比較しています。
結果は明確でした。水分を多く摂っている人ほど、便秘のリスクが大幅に低かったのです。

■ 便秘リスクの低下率(オッズ比)

水分摂取量グループ便秘のリスク(オッズ比)備考
Q1(0.06〜1.90kg)基準(1.00)最も水分が少ない層
Q2(1.91〜2.53kg)0.80リスク20%減(※やや統計的にギリギリ)
Q3(2.54〜3.36kg)0.57リスク43%減、明確な差あり
Q4(3.37〜16.97kg)0.54リスク46%減、最も良好な結果

つまり、食事や飲み物から1日3.4kg以上の水分を摂っていた人は、最も水分が少ない人に比べて便秘のリスクが半分以下になっていました。

【補足】この数値の意味とは?

オッズ比(OR)1.00:比較の基準。これより小さいと「リスクが下がる」という意味です。
0.54は「46%リスク減」を意味します。(1.00 – 0.54 = 0.46)

非線形な関係も確認:「多ければ多いほど良い」傾向

また、以下に示すFigure 2のグラフ(食事からの水分摂取量と便秘の有病率との多変量調整済みの関連性を示したグラフ)では、水分摂取量が増えるごとに便秘リスクがなだらかに下がる「非線形のカーブ」が描かれていました。

The Association of moisture intake and constipation among us adults: evidence from NHANES 2005–2010 - BMC Public Health
Background Constipation is a common gastrointestinal disorder that affects the quality of life of millions of adults wor...

・縦軸(Y軸):便秘リスク(オッズ比)
・横軸(X軸):1日の水分摂取量(kg)
・カーブの傾き:水分量が2.5kg前後を超えるあたりから、便秘リスクがぐっと下がっていることが視覚的に分かります。

このように、研究結果は単なる「水分を摂れば良い」という話ではなく

どの程度摂取すれば効果が出るのか
その効果はどのくらいか
といった、多層的な知見が得られていることが分かります。

研究の結論:水分摂取は“便秘に効く”

この研究から明らかになったのは、水分摂取量が多い人ほど、便秘のリスクが確実に低くなるということです。
特に「1日3.4kg以上の水分をとっている人」では、最も少ないグループに比べて、便秘のリスクが46%も低いという明確な差が出ました。

また、この効果は単に「飲み物」ではなく、「食事に含まれる水分」も含めた“総水分”で評価されている点が重要です。
そして、摂取量が増えるごとにリスクが下がるという段階的なパターン(用量反応関係)も認められました。

【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点

日本人の水分摂取の目安は通常、1日あたり2.3~2.5Lとされており 、水分を食事も含めてしっかりとることが基本です。

しかし、この研究のQ4グループ(3.4L〜17L)はかなり広範囲で、1日の水分摂取量17Lは明らかに異常であり、腎臓・心臓に大きな負担をかける「過剰摂取」もしくは「水中毒」の領域です。

医学的には「水中毒」は1時間に1L、1日で3~4L以上でリスクが顕著になり、6L以上は低ナトリウム血症や浮腫、呼吸困難など命に関わるケースも報告されています。

そのため、便秘改善のために水分を増やす際には、


✅まずは2.5〜3Lを目安に、

✅無理せず、こまめに複数回に分けて摂取し、

✅腎臓・心臓に不安がある方は医師に相談することが重要です。


まとめ

アメリカの大規模データから、「水分摂取量が多いと便秘のリスクが大幅に下がる」ことは非常に注目すべき結果ですが、
「たっぷり飲むほど良い」というよりも、「適度にしっかり続けること」が肝要と考えられます。

日本人においては、2.3〜3.5L/日の総水分摂取(飲み物+食事)が基本ライン
その範囲内なら、自然に腸も動きやすくなり、便秘解消に効果あり

ただし、過剰摂取が引き起こすリスク(低ナトリウム血症・腎負担・浮腫など)には注意が必要です。
17Lという数字は明らかに常識外で、決して目指すべきではありません

便秘ケアをするときには、


✅水分補給を意識しつつ
✅身体の状態や心の健康も見ながら、
✅自分に合った範囲でコツコツ取り入れるのが一番やさしく、賢い方法です。


締めのひとこと

「便秘には水分が効くけれど、飲みすぎは要注意――“ほどよく、こまめに”が一番です。」


以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

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