
結論「魚油サプリは、健康な人にとっては不整脈のリスクを少し高める可能性がある一方、心臓病をすでに持つ人には一部の病気の進行を抑える効果がある」
この記事はこんな方におすすめ
✅ふだんオメガ3サプリを飲んでいる人
✅オメガ3サプリのメリットとリスクを正しく知りたい方
✅すでに心臓病を持ち、生活改善の参考にしたい方
✅信頼できる医学論文に基づいた情報を探している方
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:魚油サプリは「体にいい」と聞くけど、実際はリスクもあるの?
🟡結果:健康な人では不整脈が増える傾向。心臓病のある人では心筋梗塞や死亡のリスクが下がる。
🟢教訓:魚油サプリは“誰にでも効く万能薬”ではない。飲むかどうかは自分の健康状態をふまえて医師に相談するのが安心。
🔵対象:イギリスでの41万人を12年追跡した研究。

※本記事内の画像は主にChat GPTおよびGeminiを用いて、すべてAIで生成しております。
すべてイメージ画像であり、本文の内容を正確に表したものではありません。
あらかじめご了承ください。
はじめに
皆さん、こんにちは!
皆さんは何かサプリメントを飲んでいますか?
わたしはふだん総合ビタミン製剤に加えて、以前の記事でも「老化を遅らせる効果が期待できる」とご紹介したオメガ3を飲むようにしています。
正直、「せっかく飲んでいるんだから、オメガ3にもっと他の良い効果があったらいいのになぁ」と思うこともあります。
そんな中で、最近オメガ3(魚油サプリメント)に関する新しい研究を見つけました。
発表されたのは、イギリスの医学誌 BMJ Medicine。
心臓や血管の病気を幅広く扱う専門誌です。
そしてその研究では、魚油サプリを飲むことが必ずしも“良いことばかりではない” という、驚きの結果が示されていました。
今回はその研究をもとに、「魚油サプリが健康な人と心臓病のある人で、病気の進み方にどう違う影響を与えるのか」を、一緒に読み解いていきましょう。

自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。
以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。
今回読んだ論文
“Regular use of fish oil supplements and course of cardiovascular diseases: prospective cohort study”
(魚油サプリメントの定期摂取と心血管疾患の進行:前向きコホート研究)
Ge Chen, Zhengmin Min Qian, Junguo Zhang et al.
BMJ Med. 2024 May 21;3(1):e000451.
PMID: 38800667 DOI: 10.1136/bmjmed-2022-000451
掲載雑誌:BMJ Medicine【イギリス:IF 10.0(2024)】 2024年5月
研究の要旨
研究目的
魚油サプリメントを定期的に摂取することが、健康な状態から心房細動や重大な心血管イベント、死亡に至るまでの病気の進行にどのような影響を与えるかを調べた。
研究方法
イギリスの40〜69歳の約41万6千人を対象に、平均12年間追跡し、入院記録や死亡登録をもとに心臓や脳の病気への進行を解析した。
研究結果
健康な人では魚油サプリメントを飲んでいる人の方が心房細動や脳卒中になる可能性がやや高かったが、心臓病をすでに持つ人では一部の病気の進行が抑えられる関連がみられた。
結論
心臓や脳の病気がない人にとっては魚油サプリメントが新たなリスクになる可能性があるが、病気を持つ人では一部の進行を和らげる可能性が示された。
考察
魚油サプリメントの効果は摂取量や成分の違い、または対象となる人の健康状態によって変わる可能性があり、因果関係を確認するにはさらに研究が必要である。
研究の目的
この研究の目的は、魚油サプリメント(オメガ3サプリメント)の常用が、心臓や血管の病気の進み方にどのような影響を与えるかを明らかにすることでした。
具体的には、健康な人が心房細動を起こすリスクや、すでに心臓病を持つ人がさらに心筋梗塞や脳卒中、死亡へと進むリスクに対して、魚油サプリメントが「害となるのか」「有益なのか」「無関係なのか」を調べることを目的としています。

研究の対象者と背景
この研究は、イギリスに住む40〜69歳の成人41万5737人を対象に行われました。

対象者は UKバイオバンク という大規模な健康データベースに参加していた人たちで、2006年から2010年の間に登録され、その後 中央値で11.9年間追跡されました。
調査開始時点で健康な人と、すでに心臓や血管の病気(心筋梗塞・脳卒中・心不全など)を持っている人が両方含まれており、それぞれに分けて解析が行われました。
👉 つまり、「健康な人」と「既に病気を持っている人」の両方で、魚油サプリメントの効果がどう違うのかを比較できる設計になっています。
解析対象の内訳
・健康な人(ベースラインで心血管病なし)
→ ここから「新しく心房細動や心筋梗塞・脳卒中・心不全になるか」を追跡。
・心房細動をすでに持っていた人
→ ここから「重大心血管イベント(MACE:心筋梗塞・脳卒中・心不全)」や「死亡に進むか」を追跡。
・心不全をすでに持っていた人
→ ここから「死亡に進むか」を追跡。
・主要心血管イベント(MACE)をすでに経験していた人
→ ここから「死亡に進むか」を追跡。

研究の手法と分析の概要
研究の種類
この研究は 前向きコホート研究 です。
多くの人を長期間追跡し、サプリを飲んでいたかどうかで結果を比べました。
この研究でいう魚油サプリメントは、市販のオメガ3サプリメントと同じものを指しています。
ただし、成分や摂取量は人によって異なり、正確な内容は分かっていません
データ収集
・魚油サプリメントの使用状況(自己申告)
・入院記録
・死亡登録
これらのデータを組み合わせて解析しました。
調べた出来事(アウトカム)
対象としたのは以下の3種類です:
・心房細動(不整脈の一種)
・主要心血管イベント:心筋梗塞・脳卒中・心不全
・死亡
自己申告の限界
魚油サプリを飲んでいるかどうかは参加者自身の申告に基づくため、摂取量や種類までは正確に分からない。
解析方法
統計には 多状態モデル(multi-state model) を用いました。
これは「健康 → 心房細動」「心房細動 → 心筋梗塞」など、病気の進み方を段階ごとに評価できる方法です。

【補足:各種用語】
前向きコホート研究
健康状態や生活習慣を記録し、将来どんな病気になるかを追跡する方法。
多状態モデル
病気が進行する“ステップごと”にリスクを調べられる統計的手法。
研究結果
健康な人への影響
魚油サプリメントを日常的に飲んでいる健康な人では、
・心房細動のリスク:約13%増加(統計的に有意)
・心不全のリスク:約8%低下(統計的に有意)
一方で、
・心筋梗塞のリスク
・死亡リスク
には差が見られませんでした。
心臓病を持つ人への影響
すでに心臓や血管の病気がある人では、病気の進行をやや抑える傾向が確認されました。
・心房細動から重大な心血管イベントへ進むリスク:約8%低下
・心房細動から心筋梗塞へ進むリスク:約15%低下
・心房細動から死亡に至るリスク:約12%低下
・心不全から死亡に至るリスク:約9%低下
ただし、
・重大な心血管イベントを経験した人の死亡リスク
には差がありませんでした。

まとめ表
対象 | 魚油サプリを飲む人の変化 | 有意差 |
健康な人 → 心房細動 | 約13%リスク増 | 有意差あり(P<0.001) |
健康な人 → 脳卒中 | 約5%リスク増 | 境界的(P=0.050) |
健康な人 → 心不全 | 約8%リスク減 | 有意差あり(P=0.011) |
健康な人 → 心筋梗塞 | 変化なし | 有意差なし(P=0.711) |
健康な人 → 死亡 | 変化なし | 有意差なし(P=0.280) |
心房細動あり → 重大イベント | 約8%リスク減 | 有意差あり(P=0.008) |
心房細動あり → 心筋梗塞 | 約15%リスク減 | 有意差あり(P=0.006) |
心房細動あり → 死亡 | 約12%リスク減 | 有意差あり(P=0.002) |
心不全あり → 死亡 | 約9%リスク減 | 有意差あり(P=0.040) |
重大イベントあり → 死亡 | 変化なし | 有意差なし(P=0.937) |
研究の結論
魚油サプリメントは、すべての人にとって「心臓に良い万能サプリ」ではありません。
健康な人への結論
健康な人では、不整脈のリスクがやや高まる一方、心不全のリスクは下がるという複雑な結果でした。
心臓病を持つ人への結論
心臓や血管の病気をすでに持っている人では、病気の進行が抑えられ、心筋梗塞や死亡への移行リスクが低下しました。
総合的な結論
同じサプリでも「健康な人」と「病気を持つ人」とでは作用が異なり、状況次第で「害」にも「益」にもなり得ることが示されました。

【礼次郎の考察とまとめ】
健康な人でリスクが増えた理由(著者の考察)
著者らは、魚油サプリメントが健康な人にとって不整脈や脳卒中リスクを高めた可能性について、いくつかの仕組みを指摘しています。
心臓の電気的安定性への影響
高濃度のオメガ3脂肪酸は、心筋細胞膜の性質を変えてしまい、電気信号の流れを乱す可能性があります。
その結果、心房細動が起こりやすくなると考えられています。
ナトリウム・カリウムポンプの抑制
細胞の電気的バランスを維持する仕組みが抑えられることで、拍動のリズムが乱れやすくなる可能性があります。
摂取量と成分比率の問題
サプリの量が多すぎると酸化ストレスがかえって増えることがあります。
また、EPAとDHAの比率によって作用が異なり、EPA単独では効果的でもDHAを加えると逆効果になる可能性も指摘されています。
個人差の影響
年齢や性別、喫煙習慣、食生活、服薬の有無などによって効果が変わることも報告されています。
例えば女性や非喫煙者では、リスク増が目立ったケースがありました。

病気を持つ人で効果が見られた理由(著者の考察)
一方、すでに心臓病を持つ人では、魚油の持つ「守りの作用」が働いた可能性があります。
・抗炎症作用により血管や心臓の負担が軽減され、病気の進行を和らげた。
・血小板の凝集抑制作用により血液が固まりにくくなり、心筋梗塞や脳卒中を防いだ可能性がある。
・中性脂肪の低下や血圧の軽減といった代謝改善作用も関わっていると考えられます。
こうした作用が合わさり、心房細動や心不全から次の重大なイベントへ進むリスクや死亡リスクを下げる方向に働いたと考えられます。

日常生活へのヒント
魚油サプリメントは健康な人が「予防のつもり」で飲むと、不整脈や脳卒中のリスクを増やす可能性があります。
一方で、すでに心臓病を持っている人では、病気の進行を少し抑える助けになるかもしれません。
日本人は普段から魚を食べる機会が多く、自然にオメガ3をとっていることが少なくありません。
そのため、追加でサプリを飲む必要があるかどうかは慎重に考えるべきです。
サプリを始める際は「とりあえず飲んでおけば安心」と思わず、医師に相談して自分に必要かどうかを見極めることが大切です。
今回の研究では健康な人の魚油サプリメントで心房細動が増える傾向が示されました。
ただし、それが一時的に戻る可逆的なものか、一度なると治らない不可逆的なものかは分かっていません。
もし可逆的なら服用をやめれば済みますが、不可逆的であれば取り返しのつかないことになります。
さらに、この研究は自己申告に基づくデータです。
魚油サプリを飲んでいるかどうかは参加者自身の申告であり、摂取量や成分比率までは分かっていません。
そのため「どの程度の量なら安全なのか」「追加摂取の安全域はどこにあるのか」が不明なままです。
以上を踏まえると、オメガ3という栄養素は、精製された分子をサプリで大量に摂るのではなく、魚介類を食事から自然に摂る方法が最も安全だろうと思います。
私自身もオメガ3サプリメントの服用はやめ、魚を多めに食べることで、以前の記事でも触れた「オメガ3で老化の速度を遅らせる」効果を享受していこうと考えています。
改めて、「何事も万能なものはない」ということを実感させられる研究でした。
締めのひとこと
食事がメイン、サプリは補助

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
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