脂肪と筋肉のバランスが「がん」を防ぐ?部位別の脂肪・筋肉量比が明かす最新がんリスク

筋肉と脂肪のバランスを天秤で表現した体組成管理のイラスト。健康的な男女と運動・食事を象徴するモチーフが描かれたアイキャッチ画像。

結論「筋肉に対する脂肪の割合(脂肪・筋肉量比)は、男女で異なる種類のがん発生リスクと深く関わっていることが大規模な研究で明らかになりました。」

この記事はこんな方におすすめ

✅ がんを予防するためにどんな体型を目指すべきか知りたい方
✅ ただ体重を減らすだけのダイエットに疑問を感じている方
✅ 筋肉量と脂肪量のバランスが健康にどう影響するか興味がある方
✅ 最新の医学研究に基づいた健康維持のヒントを探している方

時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ

🔴 疑問:BMIなどの単なる体重だけでなく、「脂肪と筋肉のバランス」はがんの発生にどう関係しているのでしょうか?

🟡 結果:男女約43万人を対象とした調査で、筋肉に対する脂肪の割合が高いと、女性では乳がん(1.64倍)や子宮がん(13.90倍)など多くのがんリスクが上昇し、男性では食道がん(11.90倍)や大腸がん(3.16倍)などの消化器系がんリスクが上昇することが分かりました。

🟢 教訓:単なる体重管理(BMI)だけでなく、筋肉を維持しながら余分な脂肪を減らす「質の高い体づくり」ががん予防に繋がる可能性があります。

🔵 対象:イギリスの大規模データベースに登録された約43万人の一般市民です。欧米人のデータですが、体の代謝メカニズムの観点から日本人にも大いに参考になる内容です。

※本記事内の画像は主にChat GPTおよびGeminiを用いて、すべてAIで生成しております。
すべてイメージ画像であり、本文の内容を正確に表したものではありません。
あらかじめご了承ください。

はじめに

皆さん、こんにちは! 

「最近、体重は変わらないのにお腹周りだけぽっこりしてきた……」

と鏡を見てため息をつくこと、ありませんか?

健康のためにダイエットを意識する方は多いと思いますが、ただ体重を落とすだけでは、本当に健康な体を手に入れたとは言えません。

わたしも日々さまざまな医療情報に触れる中で、数字上の体重以上に「筋肉と脂肪の中身のバランス」を整えることの重要性を強く感じています。 

本日ご紹介するのは、まさにそんな疑問に答えてくれる、単なる体重の増減ではなく「筋肉と脂肪のバランス」が、将来のがんリスクにどう関わっているのかを明らかにした画期的な研究です。 

この論文は、イギリスから発行されている権威ある総合医学雑誌『BMC Medicine』で発表されたものです。 

今回は、どのような体組成を目指すのが健康への近道になるのかを、一緒に読み解いていきましょう。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、

生の一次情報をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。
以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。

今回読んだ論文

“”Total and regional fat-to-muscle mass ratio and risks of pan-cancer: a prospective cohort study””

(全身および部位別の脂肪・筋肉量比と全がんリスク:前向きコホート研究)

Ruizhi Wang, Yudi Xu, Yuyuan Zhang, et al.

BMC Med. 2025 May 28;23(1):296. doi: 10.1186/s12916-025-04102-1.

PMID: 40437455 DOI: 10.1186/s12916-025-04102-1

掲載雑誌:BMJ Public Health【イギリス IF 8.14 2024】 2025年より

Total and regional fat-to-muscle mass ratio and risks of pan-cancer: a prospective cohort study - PubMed
Our findings suggested that both total and regional FMR may serve as potential biomarkers for assessing the risk of over...

研究の要旨(Abstract)

研究目的 

全身および部位別の脂肪と筋肉の比率が、がんの発生リスクとどう関連しているかを男女別に明らかにすることです。

研究方法 

イギリスの大規模データベースに参加した約43万人の健康な男女を長期間追跡し、体組成とがん発生との関係を統計的に分析しました。

研究結果 

筋肉に対して脂肪の割合が高いと、男性では消化器系や腎臓がんのリスクが上昇し、女性では乳がんや子宮がんなど多くのがんリスクが上昇することが判明しました。

結論 

全身および部位別の脂肪と筋肉の比率は、全体および特定部位のがんリスクを評価するための重要な指標となる可能性があります。

考察 

筋肉と脂肪の代謝的な相互作用ががんの発症に影響を与えている可能性があり、体重だけでなく体組成の管理が重要であると考えられます。

研究の目的

なぜ研究者たちは、このテーマを調べようと考えたのでしょうか。背景と目的を詳しく見ていきましょう。

肥満の評価はBMIだけで十分なのか? 

これまで、肥満とがんのリスクに関する研究の多くは、身長と体重から計算されるBMI(体格指数)などを基準にしていました。

しかし、BMIには「脂肪が多くて体重が重いのか、筋肉が多くて体重が重いのかを区別できない」という大きな弱点があります。

脂肪と筋肉のバランスに着目 

筋肉は代謝を助ける働きがあり、過剰な脂肪は慢性的な炎症を引き起こしてがんの要因になり得ます。

そこで研究者たちは、単なる脂肪の絶対量ではなく、「筋肉に対して脂肪がどれくらいあるか」というバランスを調べることが、より正確ながんリスクの予測につながるのではないかと考え、この大規模な調査を行いました。

研究の対象者と背景

この研究は、どのような人々を対象に行われたのかを確認しましょう。

イギリスの約43万人のデータを使用 

本研究は、「UK Biobank」というイギリスの大規模な健康データベースを利用しています。

対象となったのは、研究開始時点でがんにかかっていなかった37歳から73歳の成人、合計435,986人(男性203,133人、女性232,853人)です。

参加者のほとんど(90%以上)は白人であり、長期間にわたって彼らの健康状態が追跡されました。

この研究の対象者は主にイギリスの白人であるため、体格や生活習慣の遺伝的背景が日本人とは異なります。

しかし、「過剰な脂肪が炎症を引き起こし、筋肉がそれを抑える」という基本的な体の代謝メカニズムは人類共通です。

したがって、数値の基準をそのまま当てはめることはできなくても、「筋肉を維持しつつ脂肪を適正に保つことががん予防に重要」という教訓は、日本人にも大いに参考にすべき内容といえます。

研究の手法と分析の概要

研究チームは、どのようにしてこの膨大なデータを分析したのでしょうか。

体組成の測定と長期間の追跡 

研究開始時に、生体電気インピーダンス法という機器を用いて、参加者の「全身」「体幹(胴体)」「腕」「脚」の脂肪量と筋肉量を測定しました。

この数値をもとに「脂肪・筋肉量比」を算出しました。

その後、長期間にわたって参加者を追跡し、新たにがんの診断を受けた人を記録しました。

信頼性を高めるための統計的工夫 

分析の際には、年齢、人種、学歴、喫煙や飲酒の習慣、運動量、食生活、家族のがんの歴史など、がんのリスクに影響を与えそうな多くの要因を統計的に取り除きました。

さらに、BMIと脂肪・筋肉量比の両方を組み合わせて分析を行ったり、曲線的な関係性がないかを詳細に調べたりすることで、結果の信頼性を高める工夫が凝らされています。

【補足:各種用語】

生体電気インピーダンス法(BIA)

体に微弱な電流を流し、電気の通りにくさ(抵抗)を測ることで、脂肪と筋肉の割合を推定する方法です。
一般的な家庭用の体組成計でも使われている技術です。

コホート研究

特定の条件を持った人々の集団を長期間にわたって追跡し、病気の発生率などを観察する研究方法です。
原因と結果の関連を調べるのに非常に適しています。

交絡因子(こうらくいんし)

調べたい原因と結果の両方に影響を与えてしまい、本当の関連性を歪めてしまう可能性がある別の要因のことです。
例えば「お酒とがん」を調べる際の「タバコ」などがこれにあたります。

非線形関係(ひせんけいかんけい)

原因となる数値が上がるにつれて結果も一定のペースで変化する直線的な関係ではなく、あるポイントから急に上がったり、U字型に変化したりする複雑な関係のことです。

研究結果

ここからは、本研究が明らかにした具体的な結果を見ていきましょう。分かっているようで知らなかった、驚きの事実が隠されています。

部位や性別で異なるがんリスクの上昇と具体的な「危険ライン」

研究の追跡期間中に、62,060人が新たにがんと診断されました。

分析の結果、全身の筋肉に対する脂肪の割合(脂肪・筋肉量比:FMR)が高いことは、男女それぞれで異なる種類のがんリスクと強く関連していることが明らかになりました。

皆さんが一番気になる「具体的にどれくらい脂肪が多いと危険なのか?」という基準について、本研究では明確な数値(カットオフ値)が示されています。

FMRは「脂肪量(kg) ÷ 筋肉量(kg)」で計算されます。

分析の結果、男性は「0.36(筋肉量に対して脂肪量が36%以上)」女性は「0.61(筋肉量に対して脂肪量が61%以上)」というラインを超えると、がんリスクに悪影響を及ぼす分岐点になることが判明しました。

女性においては、全身の脂肪の割合が高いと、全体のがんリスクが1.13倍に有意に上昇(FDR<0.001)しました。

特に、乳がん(1.64倍)子宮がん(13.90倍)などの女性特有のがんや、胆嚢がん(5.93倍)膵臓がん(2.59倍)腎臓がん(3.39倍)などのリスクが著しく高まることがわかりました。

一方、男性においては、全身の脂肪の割合が高いと、全体のがんリスクは逆に低下(0.89倍、FDR=0.021)し、前立腺がん(0.56倍)などのリスクも下がっていました。

しかし安心はできません。

男性でも食道がん(11.90倍)大腸がん(3.16倍)肝臓がん(37.57倍)膵臓がん(3.32倍)など、消化器系を中心としたがんリスクは大幅に上昇していたのです。

結果のまとめ表

以下の表は、全身の脂肪の割合が高いことによる主な部位別がんのリスク変化(ハザード比)をまとめたものです。

がんの種類女性のリスク変化男性のリスク変化
全体のがん上昇(1.13倍)低下(0.89倍)
大腸がん有意な変化なし上昇(3.16倍)
食道がん有意な変化なし上昇(11.90倍)
肝臓がん有意な変化なし上昇(37.57倍)
腎臓がん上昇(3.39倍)上昇(4.38倍)
乳がん上昇(1.64倍)評価対象外
子宮がん上昇(13.90倍)評価対象外
前立腺がん評価対象外低下(0.56倍)

変化が見られなかったがんについて(陰性所見)

一方で、男女ともに肺がんや悪性黒色腫(メラノーマ)などについては、脂肪の割合が高くても統計的に明らかなリスクの上昇(有意な線形関係)は見られませんでした。

これは、脂肪が多くてもこれらのがんが直接的に引き起こされるわけではないという見方ができます。

肺がんやメラノーマには、喫煙や紫外線といった他の強力な要因が大きく関わっているためと考えられます。

BMIと組み合わせることで見えた「隠れ肥満」のリスク

さらに研究チームがBMI(体格指数)と脂肪の割合を組み合わせて分析したところ、「BMIは正常でも、脂肪の割合が高い(隠れ肥満)」人において、がんの発生リスクが顕著に上昇しているケースが確認されました。 

この結果は、私たちにとって「単に体重計の数字を気にするだけでは不十分であり、筋肉を維持しつつ脂肪をコントロールすることが本当の意味でのがん予防につながる」という非常に実感しやすい意味を持っています。

研究の結論

体組成評価がもたらす未来のがん予防 

研究チームは、全身および部位別の脂肪・筋肉量比が、全体および特定の部位のがんリスクを評価するための「新しい有用なバイオマーカー」になり得ると結論づけました。

これは、これまでの体重に頼った健康管理から一歩進んで、個人の筋肉と脂肪のバランスに合わせた精密な予防策の提案が可能になるという、科学的に非常に意義深い発見です。

礼次郎の考察とまとめ

論文著者らの考察

なぜ脂肪と筋肉のバランスが影響するのか

著者らは、過剰な脂肪組織が体内に慢性的な炎症や酸化ストレスを引き起こし、これががんの引き金になると推測しています。

一方で、筋肉もまたホルモンを分泌し、炎症を抑えたり代謝を改善したりする良い働きをします。

つまり、筋肉が少なく脂肪が多い状態は、体をがんが発生しやすい環境にしてしまう可能性があると解釈しています。

ただし、この研究は観察研究であるため直接的な因果関係を完全に証明したわけではなく、より精密な測定機器を使ったさらなる研究が必要であるという限界も述べています。

日常生活へのアドバイス

それでは、この研究結果を私たちの毎日の生活にどう活かしていけばよいのでしょうか。

日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓を踏まえて、明日からできる行動ヒントを提案します。

体重計の数字だけで一喜一憂しない

BMIが正常範囲であっても、筋肉が少なく脂肪が多い「隠れ肥満」は要注意です。

体脂肪率や筋肉量も測れる体組成計を活用して、中身のバランスを確認しましょう。

過度な食事制限ダイエットは避ける

食事を極端に減らすと、脂肪だけでなく大切な筋肉まで落ちてしまいます。

たんぱく質をしっかり摂りながら適正な食事量を守りましょう。

日常に少しの「筋トレ」を取り入れる

筋肉は炎症を抑える味方です。激しいジム通いが難しくても、階段を使う、スクワットをするなど、下半身の大きな筋肉を維持する工夫から始めてみましょう。

今回の研究は、「ただ体重が軽ければ健康」という考え方に警鐘を鳴らすものでした。

筋肉は、私たちの体を動かすだけでなく、病気から体を守る盾のような役割を果たしています。

年齢とともに筋肉は落ちやすくなりますが、筋肉は何歳からでも育てることができます。

無理のない範囲で、ぜひ今日から筋肉を喜ばせる生活を少しだけ意識してみてくださいね。

体重という「量」の管理から、筋肉と脂肪のバランスという「質」の管理へシフトすることが、未来のあなたを守る最強の盾になるはずです。

締めのひとこと

筋肉は裏切らない、それは病気から身を守る盾としても同じことです。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

本ブログでは、Pubmed医中誌Clinical Keyヒポクラm3日経メディカルケアネットなどの信頼性ある医療情報サイトを参考に、論文の検索・選定を行っています。
記事の内容は、筆者自身が論文を読み解き、わかりやすく要約・執筆しています。

画像は主にChat GPT・Geminiを使用しAIで作成しております。

あくまでも、すべてイメージ画像です。

本文の内容を正確に表した画像ではありませんのでご注意ください。

免責事項

本記事でご紹介した内容は、あくまで特定の査読済み医学論文の科学的知見を解説することのみを目的としており、筆者(Dr.礼次郎)個人の、診療上の推奨や個人的な意見ではありません。

特定の治療方法、治療薬、生活スタイル、食品などを批判する意図や、推奨する意図は一切ございません。

本記事は、医師による診断や個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

実際の治療方針や服薬については、必ず主治医にご相談ください。

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