
結論「糖尿病がある人で、運動不足のまま1日に8時間以上座っていると、死亡リスクは約1.8倍、心疾患による死亡リスクは最大3.5倍にまで高まる」
この記事はこんな方におすすめ
✅糖尿病と診断されて生活習慣の見直しを考えている方
✅デスクワークで座りっぱなしの生活に不安を感じている方
✅運動は苦手だけど、健康リスクを減らす工夫を知りたい方
✅両親やパートナーなど、糖尿病の家族の健康を守りたい方
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:糖尿病だけでも心配なのに、座ってばかりの生活ってもっと悪いの?
🟡結果:週の運動が少なく、1日8時間以上座っている人は、死亡リスクが約1.8倍、心疾患による死亡リスクは最大3.5倍も高くなることがわかりました。
🟢教訓:週150分以上の運動ができていれば、たとえ長時間座っていても、リスクはほとんど上がらないという結果に。“動くこと”が命を守るカギになりそうです。
🔵対象:アメリカの20歳以上の糖尿病患者 約4700人を対象に、10年以上追跡した大規模研究。日本人にも応用可能ですが、生活習慣の違いを考慮する必要があります。

※本記事内の画像は主にChat GPTおよびGeminiを用いて、すべてAIで生成しております。
すべてイメージ画像であり、本文の内容を正確に表したものではありません。
あらかじめご了承ください。
はじめに
皆さん、こんにちは!
1日のうち、どれくらい座って過ごしていますか?
私自身、外科医という仕事柄、手術の日は何時間も立ちっぱなし。
でも一転して、デスクワークの日は朝から夕方までほぼずっと座りっぱなしなんです。
ずっと座っていると腰は痛くなるし、実は痔もちでもあるので、おしりの負担を減らすために穴あき座布団は手放せません(笑)
そんな日々の中で気になっていたのが、「座りすぎって本当に健康に悪いの?」ということ。
とくに、糖尿病がある人は座っている時間が長いと寿命にまで影響する…そんな研究が出てきたんです。
本日ご紹介するのは、アメリカの医学雑誌『Diabetes Care』に掲載された、糖尿病患者の“座り時間”と“運動量”が死亡リスクにどう関係するのかを調べた大規模研究。
今回はその内容を、やさしく解説していきます。

自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。
以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。
今回読んだ論文
“Sitting Time and Its Interaction With Physical Activity in Relation to All-Cause and Heart Disease Mortality in U.S. Adults With Diabetes”
(糖尿病を持つ米国成人における座位時間と身体活動の相互作用が、全死亡および心疾患死亡に及ぼす影響)
Diabetes Care. 2024 Oct 1;47(10):1764-1768.
PMID: 39028423 DOI: 10.2337/dc24-0673
掲載雑誌:Diabetes Care【アメリカ】 2024年10月
研究の要旨
研究目的
糖尿病を持つ成人において、座っている時間と身体活動レベルの相互作用が全死亡および心疾患死亡リスクにどのように影響するかを調査する。
研究方法
2007〜2018年のNHANES(全米健康栄養調査)データを用い、20歳以上の糖尿病患者4,706人を追跡。座位時間とMVPA(中〜高強度身体活動)を評価し、死亡リスクとの関連を解析。
研究結果
MVPAが週150分未満の人で、座位時間が1日8時間以上の場合、死亡リスクが大幅に上昇した(全死亡でハザード比1.77、心疾患死亡で3.47)。一方、週150分以上のMVPAを行っている人ではそのリスクは上昇しなかった。
結論
糖尿病患者において、長時間の座位はMVPAが不十分な場合に限り死亡リスクを高める。
考察
座りすぎがリスクになるのは「運動不足の人」に限定される可能性があり、身体活動の促進がとくに重要である。
研究の目的
この研究の目的は、糖尿病をもつ人にとって、「座っている時間」と「運動量」の組み合わせが、どれくらい死亡リスクに関係しているのかを明らかにすることです。
糖尿病のある人は、もともと心臓病や早期死亡のリスクが高いことが知られています。
また、座っている時間が長いことや、運動不足が健康に悪影響を与えることは、一般の人を対象にした研究でよく示されています。
しかし、糖尿病をもつ人において、「どのくらい座っていて、どのくらい運動していると危ないのか」ということは、実はこれまであまり詳しく研究されてきませんでした。
そこでこの研究では、糖尿病を持つアメリカの成人を対象に、座る時間と運動量が死亡や心疾患のリスクにどう関わるのかを長期間にわたって調査しました。
研究の対象者と背景
この研究では、アメリカ合衆国の全国調査「NHANES」から得られたデータを使用しています。

対象となった人たち
・2007年〜2018年のNHANESデータに登録された
・20歳以上の糖尿病患者
・最終的に抽出されたのは4,706人
糖尿病と診断されている人たちが対象です。
インスリンの使用歴や糖尿病の罹患期間、BMI、生活習慣(運動・喫煙・飲酒)なども記録されています。
◾背景となる問題意識
アメリカでは、糖尿病の有病率が高く、合併症や心疾患による死亡が社会問題となっています。
とくに「座りっぱなしの時間」と「運動不足」が健康にどう影響するかは、一般集団では研究が進んでいますが、糖尿病のある人だけに絞ったデータはほとんどなかったのです。
◾日本人への応用は?
日本人も座っている時間が長く、糖尿病の患者数も年々増えています。
ただし、体格や食生活、文化的な運動習慣の違いがあるため、結果をそのまま日本人に当てはめるのは注意が必要です。
それでも、「座りすぎ」と「運動不足」のリスクを減らすというメッセージは、わたしたちにも大きく響く内容です。

研究の手法と分析の概要
この研究は、観察研究(前向きコホート研究)として実施されました。
すでに集められた健康調査データ(NHANES 2007〜2018)をもとに、糖尿病患者の死亡リスクを長期的に追跡しています。
分析された項目
参加者から収集された次の3点が、主に分析対象となりました:
・1日の座位時間(例:仕事・通勤・テレビ・読書など)
・1週間の身体活動時間(MVPA)
・その後の死亡状況(全死亡および心疾患による死亡)
加えて、年齢・性別・体重・喫煙・飲酒・睡眠・食事・服薬などの影響を統計的に補正し、座り時間と運動量が独立してどの程度関係するかを評価しました。

◾座位時間と身体活動の分類
座位時間の区分 | 内容 |
4時間未満 | 比較的少ない |
4〜6時間 | 中程度 |
6〜8時間 | やや長い |
8時間以上 | 長時間の座位 |
運動量(MVPA)は、以下のように分類されました
MVPAの分類 | 内容 |
非活動的(Inactive) | 週10分未満 |
活動不足(Insufficiently active) | 週10〜149分 |
活動的(Active) | 週150分以上(推奨水準) |
MVPAの計測方法
MVPAは、参加者へのアンケートで次のようにして集計されました:
・仕事での運動(例:重い荷物を運ぶ、立ち仕事など)
・通勤や買い物での移動(歩行や自転車)
・レジャーやスポーツ(ランニング、ウォーキングなど)
それぞれ「週に何日・1日何分行っているか」を聞き、中〜高強度の身体活動時間を合算して、週あたりの総MVPAを算出しました。
分析の方法と信頼性を高める工夫
この研究では、参加者の「座っている時間」と「運動量」が将来の死亡にどう関係しているかを調べるために、
“いつ亡くなったか”を追跡してリスクを比較する方法が使われました。
ここで活躍するのが「Cox比例ハザードモデル」という統計手法です。
Cox比例ハザードモデル
たとえば「座っている時間が長い人ほど早く亡くなる傾向があるのか?」を調べるとき、単純な比較だけでは、年齢や喫煙、肥満など他の要因が影響してしまいます。
Coxモデルでは、そうした他の影響(=交絡因子)を取り除いたうえで、
「本当に“座り時間”や“運動量”がリスクに関係しているのか?」を分析することができます。

研究結果
この研究では、「1日の座っている時間」と「運動量」の組み合わせが、糖尿病をもつ人の死亡リスクにどれほど影響するかを分析しました。
大きな発見:座りすぎ+運動不足でリスク激増
もっともリスクが高かったのは、
「1日に8時間以上座っていて、運動量が週140分未満だった人」です。
このグループでは、
・すべての原因による死亡リスクが約1.8倍
・心臓病による死亡リスクは約3.5倍
にまで上がっていました(比較対象:座り時間が短く運動している人)。
座っている時間の影響が「統計的に有意(信頼できる差)」として現れたのは、1日8時間を超えたところからでした。
この8時間が、ひとつの「リスクの分かれ目」として注目されています。
いっぽう、運動していれば…
同じように「1日8時間以上座っている」人でも、
週に140分以上の運動をしていた人では、心疾患による死亡リスクの上昇は見られませんでした(HR 0.89)。
一方で、全死亡リスクはHR 1.20とやや高く見えたものの、これは統計的に有意ではなく、偶然の範囲内と考えられます。
著者らは、「十分な運動をしていれば、長時間の座位は死亡リスクとは関連しない」と結論づけています。
組み合わせ別にまとめると…
週の運動量(MVPA) | 1日の座り時間 | 死亡リスク(全死因) | 心臓病の死亡リスク |
少ない(140分未満) | 8時間以上 | 1.77倍 | 3.47倍 |
多い(140分以上) | 8時間以上 | 1.20倍 | 0.89倍(※有意差なし) |
多い | 4時間未満 | 基準値(1.0) | 基準値(1.0) |
※リスクの数値は「ハザード比(HR)」と呼ばれ、1.0より大きいほど危険性が高いことを意味します。

“中途半端な運動”でも座りすぎるとリスク大
実は、MVPAが少ない人では、座位時間が6〜8時間の段階でも、全死亡リスクがすでに約2.8倍にまで上昇していました(HR 2.82)。
つまり、「8時間以上」が明確な分かれ目である一方で、運動不足の人にとっては6時間でも座りすぎの域に入る可能性があるのです。
さらに細かい分析では、「完全な運動不足」でなくてもリスクが高まることが示されています。
たとえば、週に少し運動している(10分〜149分)程度の人でも、1日8時間以上座っていると死亡リスクが約2倍にまで上昇していました。
つまり、「ちょっとだけ運動してるから大丈夫」は通用しない可能性があり、しっかり週150分以上の活動が重要であることが強調されます。
運動量が少なくても「座らない」なら多少マシ
一方で、週の運動量が少ない人でも、
1日の座位時間が4時間未満におさえられていれば、死亡リスクは比較的低く抑えられていました。
この傾向は誰にでも当てはまる?
研究では、性別・人種・肥満度・服薬状況などを細かく分けて分析されましたが、
どのグループでも「座りすぎ+運動不足」の組み合わせがもっともリスクが高いという傾向は一貫して確認されました。
つまり、これは特定の人に限った話ではなく、糖尿病をもつあらゆる人に共通する“危険な生活パターン”だと言えるのです。
このように、運動と座り時間は「セットで考える」ことが命を守るカギであると、研究は強く示しています。

研究の結論
この研究が示した結論は明快です。
「糖尿病を持つ人が長時間座っている場合、運動不足が重なると死亡リスクが著しく高まる」
しかし、週に150分程度の運動をしていれば、そのリスクは大きく減少するということも明らかになりました。
つまり、座りっぱなしの生活はすぐに危険というわけではなく、
「運動しているかどうか」が、それを緩和する大きなカギとなっていたのです。
この結果は、糖尿病を持つ人々の健康維持や命を守るうえで、非常に実用的な示唆を与えるものです。

【礼次郎の考察とまとめ】
なぜ「座りすぎ+運動不足」が危険なのか?
論文の著者たちは、次のように考察しています。
座っている時間が長いと、血流が滞りやすくなり、代謝や血糖のコントロールが悪化します。
とくに糖尿病を持つ人では、インスリン抵抗性や血管機能の低下といった問題がすでにあるため、
「動かない生活」がそれをさらに悪化させ、心臓や血管に負担をかけてしまうのです。
また、運動をすることで得られる
・血糖コントロールの改善
・血圧の安定
・抗炎症作用
といった効果が、座りすぎの悪影響を打ち消してくれていると考えられます。

じゃあ、わたしたちはどうすればいいの?
目指すのは「動きながら生活する」こと
日常生活の中で、「意識して動く時間をつくる」ことが最重要です。
週150分の運動というとハードルが高く感じるかもしれませんが、
・1日30分×週5日
・朝と夜に15分ずつのウォーキング
・昼休みに10分の散歩を3回
など、小分けでも大丈夫です。
座りすぎを防ぐ工夫も◎
・長時間のデスクワークでは1時間に1回立ち上がる
・電話中に立って話す
・エレベーターをやめて階段を使う
といった「ちょい足し行動」も効果的です。
糖尿病でなくても参考になる
今回の研究は糖尿病患者を対象としたものですが、
座りっぱなしの害+運動の大切さは、すべての人に共通する教訓でもあります。

「運動が苦手…」という方へ
特別なスポーツを始める必要はありません。
まずは“座りっぱなしを少し減らすこと”から始めるだけで意味があります。
締めのひとこと
健康は日々の“ちょっとした動き”の積み重ねです。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
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