えっ!?糖尿病の人は朝のコーヒーが寿命を縮める!?時間帯によるリスクと最新研究に学ぶ安全な飲み方【医学論文まとめ】

糖尿病の中年男性が朝6時に驚いた表情でコーヒーを持つ姿|健康リスクとカフェイン摂取時間を示すイラスト

結論「糖尿病の人にとって、朝イチのコーヒーは“命取り”になる可能性がある——飲むなら午前8時以降が正解。」

この記事はこんな方におすすめ


✅糖尿病や高血糖で日常生活に不安がある方

✅健康志向でコーヒー・紅茶の飲み方を見直したい方

✅医師や栄養士など、患者指導をする立場の方

✅朝のカフェイン摂取習慣があるすべての人


はじめに

皆さん、こんにちは!

突然ですが、皆さんは「朝のコーヒー」、なんとなく“体に良い”と思っていませんか?

「頭がシャキッとするし、健康にも良いってよく聞くし…」そんな理由で飲んでいる方、きっと多いはずです。

実は私も、「朝にコーヒーを飲むのは体に良い習慣」だと信じて疑わず、毎朝せっせと飲み続けていました。

でも、偶然見つけた1本の論文に目を通して、思わず「えっ!?」と声が出るほど驚いてしまいました。

それはなんと——「コーヒーを飲む時間帯によっては、死亡リスクが高まる可能性がある」という衝撃の研究結果でした。

本日ご紹介するのは、そんな“朝の一杯”がもたらす意外なリスクと、それを回避するためのヒントが詰まった最新の医学研究です。

アメリカで行われた大規模調査をもとに、糖尿病患者にとって「いつ飲むか」が寿命にまで影響する可能性を示した注目の内容です。

今回はその研究をわかりやすく解説しつつ、健康的にコーヒーや紅茶を楽しむための新しい視点をお届けします。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた

生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

今回読んだ論文

“”Relationship between timing of coffee and tea consumption with mortality (total, cardiovascular disease and diabetes) in people with diabetes: the U.S. National Health and Nutrition Examination Survey, 2003-2014″”

(糖尿病患者におけるコーヒーと紅茶の摂取タイミングと死亡率(総死亡、心血管疾患、糖尿病)との関連:米国NHANESデータ(2003〜2014年))

BMC Med. 2024 Nov 11;22(1):526. doi: 10.1186/s12916-024-03736-x.

PMID: 39523296 DOI: 10.1186/s12916-024-03736-x

掲載雑誌:BMC・メディシン 【イギリス】 2024年11月より

研究の対象者と背景

この研究は、2003〜2014年に実施されたアメリカ国民健康栄養調査(NHANES)に参加した糖尿病患者5,378人を対象としています。平均18年間追跡した大規模調査です。

調査参加者は、18歳以上で、自己申告の糖尿病診断や血糖値などに基づいて選ばれました。

人種構成も幅広く、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系を含む多民族の人々が対象となっており、さまざまな生活スタイルや体質が反映されています。

もちろん、日本人と体質や生活習慣が異なる部分はありますが、「カフェインの摂取タイミングが体に与える影響」という視点は、私たち日本人にとっても非常に参考になる内容です。
特に糖尿病や生活習慣病が増えつつある現代の日本において、こうしたグローバルな研究から得られるヒントは見逃せません。

研究の手法と分析の概要

この研究では、対象者が「前日1日で飲食した内容と時間」を思い出して答える“リコール式(24時間食事調査)”を使って、コーヒーや紅茶を飲んだ時間帯を記録しました。

飲用時間は以下の4つに分類されました:


✅午前5時〜8時(早朝)
✅午前8時〜12時(午前中)
✅正午〜午後6時(昼〜夕方)
✅午後6時〜翌朝5時(夜〜深夜)


さらに、コーヒーと紅茶は明確に区別して評価され、それぞれの時間帯ごとに死亡リスクとの関連が分析されています。

ただし、いくつかの注意点もあります:


✅カフェインの有無(デカフェなど)は区別されていない
✅ブラックかラテか、砂糖やミルクの有無などの飲み方の違いも反映されていない
✅緑茶やハーブティー、エナジードリンクなど他の飲料は調査対象外


それでも、5,000人以上の糖尿病患者という大規模なデータに基づく結果からは、「飲む時間帯によって死亡リスクが変わる」という強い傾向が見えてきました。

【補足】リコール式とは?

「24時間リコール法」とは、「昨日、何を・いつ・どれだけ食べた/飲んだか」を思い出して答える調査方法です。
栄養疫学では標準的な方法で、具体的には次のような情報を面接形式で収集します:


✅飲んだ内容(例:コーヒー、紅茶)
✅飲んだ時間(例:午前7時)
✅飲んだ量(例:250ml)
✅飲み方(ブラック、加糖、ミルク入りなど)


ただし、記憶に頼るため誤差が入りやすく、習慣的な摂取パターンまでは完全に反映されていない点には注意が必要です。

研究結果:朝の時間帯と死亡リスクの関係

この研究では、以下のFigure2のような興味深い結果が得られました。

ひとつずつ解説していきます。

Relationship between timing of coffee and tea consumption with mortality (total, cardiovascular disease and diabetes) in people with diabetes: the U.S. National Health and Nutrition Examination Survey, 2003–2014 - BMC Medicine
Background Previous observational studies have suggested diabetic patients should synchronize their foods and nutrient i...

この研究では、糖尿病のある人がコーヒーや紅茶を飲む時間帯によって、その後の「死亡リスク」に差があることが明らかになりました。

とくに違いが大きかったのが、


✅午前5:00〜7:59(早朝)
✅午前8:00〜11:59(朝食後の午前)


の2つの時間帯です。

【補足】ハザード比(HR)ってなに?

この表に出てくる数字「HR」は、
「あるグループが、死亡などのイベントをどれくらい起こしやすいか(=速さの違い=リスク)」を表す指標です。


HR = 1.00 基準グループ(飲まなかった人)と同じリスク

HR > 1.00 「死亡が起こる速さ」が高い=「死亡を起こしやすい」(リスクが高い)

HR < 1.00 「死亡が起こる速さ」が低い=「死亡を起こしにくい」(リスクが低い)💡 


たとえば:


HR = 1.25 → 死亡する“速さ”が25%高い=1.25倍死亡を起こしやすい(相対的にリスク↑)
HR = 0.80 → 死亡する“速さ”が20%低い=0.80倍死亡を起こしにくい(相対的にリスク↓)

※これは「実際に亡くなった人数」ではなく、「どれくらい起きやすいかのスピードの差=おきやすさ」を示します。


【補足】「心血管疾患」と「心疾患」の違いって?

論文内にははっきりとした定義はありませんが、概ね以下の理解で良いかと思います。


心血管疾患(CVD):心臓や脳の血管に関する広い病気(脳卒中も含む)

心疾患(Heart disease):心臓だけに関する病気(狭心症・心筋梗塞など)


→ つまり、「心疾患」は「CVD」の一部。どちらも下がったことで、心臓系全体に良い影響があることを示唆しています。

午前5:00〜7:59にコーヒーを飲むと…死亡リスクが上昇!

この時間帯にコーヒーを飲んだ糖尿病の人では、以下の4つの死亡リスクが高くなっていました

☕️ 起きてすぐの「朝イチのコーヒー」が、かえって体に負担をかけている可能性があります。

午前8:00〜11:59にコーヒーを飲むと…死亡リスクが低下!

同じコーヒーでも、「朝食後など落ち着いた時間」に飲んでいた人ではリスクが下がっていました

☕️ 時間をずらすだけで、体に良い変化が現れる可能性があります。

紅茶の場合は?

午前8:00〜11:59に紅茶を飲んでいた人では、心血管疾患(CVD)による死亡リスクが38%低下(HR = 0.62)
他の時間帯や病気では大きな差は見られませんでした。

紅茶も「朝食後に飲む」のが良い影響を持つかもしれません。

なぜ、コーヒーや紅茶を飲む「時間帯」でこれほど差が出たのか?

研究チームは、次のような生理的要因が関係していると考察しています:

糖尿病患者に起こりやすい「暁現象(dawn phenomenon)」とは?

糖尿病の人は、朝の5時〜8時頃にかけて、インスリンの働きが鈍くなり、血糖値が自然に上がる現象がよく見られます。これを「暁現象(dawn phenomenon)」と呼びます。

これは、夜明け前に体内で分泌される成長ホルモンやコルチゾールなどの影響で、肝臓が糖を放出しやすくなるためです。

この時間帯にカフェインを摂るとどうなる?


✅カフェインは交感神経を刺激し、血糖値や血圧をさらに上昇させる可能性がある
✅とくに暁現象のピークと重なる午前5〜8時の摂取は、体に過度な負荷となる可能性がある


そのため、この時間帯にコーヒーや紅茶を飲むと、糖尿病における合併症や心血管リスクを高める恐れがあると考えられます。

午前8時以降は「体が整ってくる時間帯」

一方、午前8時以降になると、体内時計を司る遺伝子(例:BMAL1)が活性化し始め、血糖や血圧をコントロールするホルモンのバランスも整ってきます。

この時間帯であれば、同じカフェインでも身体への刺激が緩やかになり、むしろポジティブな作用(集中力の向上など)が期待されると推測されています。

【筆者の考察】日本人にとっての注意点とは?

アメリカのデータに基づいたこの研究結果ですが、日本人にとっても十分参考になります。


✅日本人は欧米人よりインスリン分泌能力が弱く、血糖値コントロールが難しい人が多いことが知られています。

✅さらに、朝食を抜いてコーヒーだけ飲むという習慣がある方も多く、これは暁現象のピークにカフェインだけを投入する形になり、最悪のタイミングになりかねません。


したがって、糖尿病がある方、もしくは血糖値が気になる方は、「朝はまず何かを軽く食べる → その後にコーヒーや紅茶」という順番を意識することが大切かもしれません。

まとめ:飲み方ではなく「飲むタイミング」を見直そう

この研究の示唆はシンプルですが深いものです。


✅コーヒーや紅茶が悪いのではなく、「いつ飲むか」が重要
✅とくに糖尿病の人にとっては、「朝イチのカフェイン」はリスク増大の可能性がある
✅一方で、午前8時以降に飲む習慣なら、死亡リスクの低下にもつながるかもしれない


コーヒーをやめる必要はありません。
ほんの少し“時間をずらす”だけで、体に優しい飲み方ができるのです。

締めのひとこと

「朝の一杯、ちょっとだけ時計を見てから。それが、未来の健康を守る第一歩になるかもしれません。」


以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

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