午後の有酸素運動が血糖に効く?最新研究でわかった「ベストな時間帯」

午後にジョギングする男女と血糖値が安定していることを示すイラスト

結論「『午後に有酸素運動をすることが、血糖値のコントロールに効果的である』との研究結果が示されました」

この記事はこんな方におすすめ

✅血糖値が気になっていて、運動で改善したいと考えている人
✅有酸素運動と無酸素運動、どちらが効果的か迷っている人
✅健康のために運動しているけど「いつやるべきか」気になる人
✅朝活やジム通いの時間帯で悩んでいる人

時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ

🔴疑問:運動する時間帯って、血糖値のコントロールに影響あるの?
🟡結果:午後に運動した方が、血糖値の上昇が穏やかだった
🟢教訓:血糖が気になるなら「午後の有酸素運動」がベストかも!
🔵対象:スペインの健康な成人を対象にした研究ですが、私たちにも参考になります

はじめに

皆さん、こんにちは!
突然ですが、皆さんは「運動って朝にやる方がいいのかな?それとも午後?」と迷ったことはありませんか?私は朝に運動しても、なんだか日中ずっと疲れを引きずってしまうことがあって、「午後の方が合ってるのかも…?」と感じていました。

本日ご紹介するのは、そんな「運動の時間帯と血糖コントロールの関係」に注目したスペインの最新研究です。
掲載されたのは、アメリカの「国際スポーツ栄養学会誌(Journal of the International Society of Sports Nutrition)」。スポーツや栄養、代謝についての信頼性の高い専門雑誌です。

今回は、この研究をもとに「運動するならいつが効果的なのか?」について、わかりやすく解説していきます。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、

生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

今回読んだ論文

“Glycaemic Response to Acute Aerobic and Anaerobic Exercise Performed in the Morning or Afternoon in Healthy Subjects: A Crossover Trial”

(健康な被験者における朝または午後に実施した急性の有酸素運動および無酸素運動が血糖応答に及ぼす影響:クロスオーバー試験)

J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2433740.

PMID: 39611609 DOI: 10.1080/15502783.2024.2433740

掲載雑誌:Journal of the International Society of Sports Nutrition(国際スポーツ栄養学会誌)【アメリカ】 2024年12月より

研究の目的

「運動が健康にいい」のはよく知られています。でも、同じ運動でも「朝にするのか、午後にするのか」で、体への効果が変わるのでは?と気になったことはありませんか?

これまでの研究では、運動の“種類”や“強度”については多く調べられてきましたが、「運動の時間帯」が体の血糖コントロールにどう影響するのかについては、あまり詳しくわかっていませんでした。

さらに、これまでの研究の多くは糖尿病や肥満のある人を対象にしており、健康な人での影響はほとんどわかっていなかったのです。

そこでこの研究では、普段あまり運動をしていない健康な成人が、
朝と午後それぞれの時間帯に
有酸素運動と無酸素運動の両方を体験し
それぞれのパターンで血糖やホルモンの変化がどう違うのかを調べています。

私たちがふだん「朝に運動しようかな、それとも午後のほうがいい?」と悩むときに、実際にどちらがより効果的なのかを科学的に明らかにしようとした、とても実生活に役立つ研究です。

研究の対象者と背景

この研究はスペインの大学病院と研究機関の協力のもと実施され、対象は23人の健康な成人(平均年齢34歳、女性14人・男性9人)です。選ばれたのは、普段あまり運動習慣のない人たちで、週に20分以上の中程度の運動を2回未満しか行っていない非トレーニング層が対象です。

この条件により、運動の影響を受けやすい“ふつうの人”に近いデータが得られました。

もちろん、スペインと日本では体格や食生活などの文化的な違いがありますが、血糖の変化に関わる「体内時計(サーカディアンリズム)」は人種を問わない共通の生理現象です。そのため、日本人にとってもこの研究の知見は参考にしやすいと言えます。

研究の手法と分析の概要

この研究は、「運動を何週間も続けた結果どう変化したか?」を調べたものではありません。

1回の運動によって、その場で血糖やホルモンがどう変化するか(=即時的な反応)を明らかにすることが目的です。

試験の方法:ランダムクロスオーバー試験

この研究では「ランダムクロスオーバー試験」という方法が使われました。これは、すべての参加者がすべての条件(朝・午後/有酸素・無酸素)を1回ずつ体験する方式です。

さらに、実施する順番は人によってバラバラ(ランダム)に決められています。

例えば、ある人は「朝の有酸素→午後の無酸素→…」、別の人は「午後の有酸素→朝の無酸素→…」というように順序が異なります。

この方法により、個人差(性別、体質、生活習慣など)の影響を取り除いたうえで、「時間帯」や「運動の種類」の違いが血糖に与える影響を正確に比べられるというメリットがあります。

実際の運動スケジュール

研究期間は全体で4週間、その間に次の4パターンの運動を、週に1回ずつ実施しました:

朝の有酸素運動(8:00〜10:00)
朝の無酸素運動(同時間帯)
午後の有酸素運動(15:00〜17:00)
午後の無酸素運動(同)

※各セッションの間には6日間の「休養期間(ウォッシュアウト)」があり、前の運動の影響が次に持ち越されないように配慮されています。

運動の内容と実施方法

有酸素運動:32分間のサイクリング(心拍数65〜70%の中強度)

無酸素運動(HIIT):15秒の全力ペダリングを15回、各回45秒の休憩つき

すべての運動は、心拍数をリアルタイムでモニタリングしながら、エアロバイクを使って実施されました。

採血と分析のタイミング

それぞれの運動セッションごとに、以下の3つのタイミングで血液を採取しています:

運動前(朝は空腹状態)
運動直後
運動終了2時間後

血液検査では、血糖値・インスリン・C-ペプチド(インスリン分泌の目安)などを測定。

それらの数値の「変化率」を、運動の時間帯や種類ごとに統計的に比較することで、どの条件が血糖コントロールに優れているかを探りました。

【補足:各種用語】

・クロスオーバー試験:全員がすべての条件を体験する方式。個人差(性別・体質など)の影響を除いて、純粋に運動の「時間帯」や「種類」の違いを比較できる設計です。
・インスリン:血糖を下げるホルモンで、膵臓から分泌されます。
・C-ペプチド:インスリンの前段階である「プロインスリン」が分解されるときに、インスリンとほぼ同じ量だけ生成・分泌される物質です。
→C-ペプチド自体には生理的な作用はありませんが、インスリンの分泌量を推定するための重要な指標です。
・HIIT(High-Intensity Interval Training):日本語で「高強度インターバルトレーニング」と呼ばれ、日本では「タバタ式トレーニング」という名称でも知られています。短時間で高強度な運動を断続的に行うトレーニング法。筋肉を一気に使うため、無酸素運動に分類されます。

研究結果:午後の有酸素運動が、血糖とホルモンの両面で最も安定した反応を示した!

この研究では、「運動の種類(有酸素 vs 無酸素)」と「時間帯(朝 vs 午後)」の組み合わせが、血糖値や代謝ホルモンにどう影響するかを比較しました。

血糖の反応

無酸素運動(HIIT)では、運動直後の血糖値が有酸素運動よりも有意に高く上昇しました。
・一方、有酸素運動では血糖の上昇が比較的穏やかで、午後に行った場合に最も血糖の上昇が抑えられていたことがわかりました。
・また、全体的に朝より午後の方が血糖コントロールに有利な傾向が見られました。

ホルモンの変化:インスリンとC-ペプチド

運動は血糖だけでなく、それを調整するホルモンにも影響します。

この研究では:
有酸素運動の後に、インスリンとC-ペプチドの濃度が明確に減少していました。
→これは、体がインスリンに対してより敏感になり、少ない分泌量で血糖を効率よく処理できていることを示します。
無酸素運動では、これらのホルモンに明確な変化は見られませんでした。

運動タイプ・時間帯別:血糖とホルモンの反応まとめ

運動の種類時間帯血糖値の変化インスリン・Cペプチドコメント
有酸素運動やや上昇減少血糖やや上がるが、ホルモン反応は良好
有酸素運動午後最も穏やか減少(効果的)血糖もホルモンも安定、最も良い条件
無酸素運動明確に上昇変化なし血糖はやや上がりやすい
無酸素運動午後やや上昇変化なし血糖は少しマシ、だが効果は限定的

このように、有酸素運動を行うなら午後が最も効果的です。
一方、無酸素運動については時間帯による大きな違いは見られず、朝でも午後でもライフスタイルに合わせてOKという結果でした。

研究の結論

この研究から明らかになったのは、運動の「種類」と「時間帯」によって、血糖やホルモンの反応が大きく異なるということです。


有酸素運動は、午後に行うと血糖上昇が抑えられ、インスリンやC-ペプチドも効率的に減少
一方、無酸素運動では時間帯による大きな差は見られなかったが、血糖はやや上昇しやすい傾向があった


したがって、血糖コントロールを重視する人にとっては、「午後の有酸素運動」が最も効果的な選択肢であると考えられます。

【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点

この研究はスペインで行われましたが、日内リズムやホルモン分泌のサイクルは、スペイン人も日本人も大きくは変わりません。
したがって、この結果は日本人にもある程度当てはまると考えてよいでしょう。

とくに注目すべきは、「午後の有酸素運動」がホルモンバランスや血糖に与える好影響です。
これは、たとえば仕事終わりの夕方にウォーキングや軽いジョギングをするだけでも、体に良い反応が得られる可能性を示唆しています。

一方で、筋トレやHIITのような無酸素運動をしている人も多いかと思います。
そうした方にとっては、「朝でも午後でも時間に縛られず継続できるタイミングで行えばOK」と理解してよいでしょう。
重要なのは、運動そのものを続けることであり、時間帯はあくまで“最適化”の話です。

まとめ

この研究は、ふだん私たちが何気なく行っている運動が、「いつやるか」によって体への効果が変わってくるという、ちょっと意外で興味深い発見を示してくれました。

午後の有酸素運動は、血糖を安定させ、ホルモンの働きを助けてくれる頼もしい味方。
いっぽう無酸素運動は時間を選ばず、自分のペースで自由に取り入れてOK。

もしあなたが最近、運動の時間帯に悩んでいたなら、今回の研究が少しでもそのヒントになればうれしいです。

締めのひとこと

運動の“タイミング”が、体にもっと味方をしてくれるかもしれません。


以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

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