バテない走りを作る“筋トレ習慣”のすすめ!90分走った終盤でも失速しない脚を作る10週間の筋トレ法

90分走ってもバテない筋力を活かす男性ランナーのイラスト|筋トレの効果を実感できるマラソン後半の粘りを表現

結論「筋トレを取り入れると、90分走っても“走りがバテにくく”、ラストの粘りがグッと強くなるとわかりました。」

  1. この記事はこんな方におすすめ
  2. 時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
  3. はじめに
  4. 自己紹介
  5. 今回読んだ論文
  6. 研究の目的
  7. 研究の対象者と背景
  8. 研究の手法と分析の概要
      1. 研究の流れ
      2. 評価された項目
      3. 分析の工夫
    1. 読者も実践できる!10週間の筋トレメニュー詳細
    2. 各週共通:種目と構成
      1. バーベルスクワット
      2. レッグプレス
      3. レッグカール(ハムストリングス)
      4. ジャンプスクワット(自体重)
      5. ホッピング(片脚で連続ジャンプ)
      6. バウンディング(大股ジャンプ)
    3. 【補足:各種用語】
      1. ランダム化比較試験(RCT)とは?
      2. ランニング効率(RE:Running Economy)とは?
      3. TTE(Time to Exhaustion)とは?
  9. 研究結果:90分走っても“バテない脚”を作るカギは筋トレだった!
    1. ポイント①:「走りの効率」が長時間でも保たれた
    2. ポイント②:「疲れても走れる粘り強さ」が平均35%アップ!
    3. ポイント③:「悪化しなかった項目」もチェック
  10. 研究の結論:筋トレは「バテない走りをつくる」
  11. 【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点
    1. 教訓①:筋トレは「体を重くする」のではなく「エネルギー効率を高める」
    2. 教訓②:欧米人と日本人の身体的違いを理解する
    3. 教訓③:長距離ランナーほど“後半の粘り”を鍛える意義が大きい
  12. まとめ
  13. 締めのひとこと

この記事はこんな方におすすめ

✅長距離を走ると後半でバテてしまう
✅マラソンで「ラストスパート」が苦手
✅持久力はあるけど「スピードの持続」ができない
✅ランニングに筋トレを取り入れるべきか迷っている

時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ

🔴疑問:長く走った後でも“最後まで力を出し切る”には、どうすればいいの?
🟡結果:週2回の筋トレを10週間続けたランナーは、90分後でも走りの効率が落ちにくく、疲れてからの粘りが約35%アップ!
🟢教訓:持久系ランナーでも、正しい筋トレを取り入れれば、バテにくくなり、ラストスパートにも強くなれる。
🔵対象:イギリスの男性トレーニングランナーが対象。体格や筋力の差に配慮しつつ、日本人にも応用可能。

はじめに

皆さん、こんにちは!

皆さんの中には、「走るのは好きだけど、長く走ると後半つらくなる…」なんて感じたことがある方はいらっしゃいますか?

私は以前、趣味で10km程度のランニングをしていた時期がありました。

ペースを気にせず走っていると、最後の方で脚が重くなって思うように進まなくなることがよくありました。

「どうしたらもっと楽に、長く、走れるんだろう?」と疑問に思っていたんです。

本日ご紹介するのは、そんな悩みにヒントを与えてくれる最新の研究です。

イギリスのスポーツ医学専門誌『Medicine & Science in Sports & Exercise』に掲載されたもので、ランニングに「筋トレ」を取り入れることが、持久力や“走り切る力”にどのような影響を与えるかを調べた内容です。

今回は、この研究をもとに、「筋トレで走りはどう変わるのか?」をわかりやすく解説していきます。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、

生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

今回読んだ論文

“Strength Training Improves Running Economy Durability and Fatigued High-Intensity Performance in Well-Trained Male Runners: A Randomized Control Trial”

(筋力トレーニングは、持久走におけるランニング効率の持続性および疲労時の高強度パフォーマンスを改善する:トレーニングされた男性ランナーを対象とした無作為化対照試験)

Med Sci Sports Exerc. 2025 Jul 1;57(7):1546-1558.

PMID: 40016936 DOI: 10.1249/MSS.0000000000003685

掲載雑誌:Medicine & Science in Sports & Exercise(スポーツと運動における医学と科学)【イギリス】 2025年2月より

研究の目的

この研究の目的は、「筋力トレーニングが長時間のランニング後にも走る効率を保ち、疲労時における高強度のパフォーマンスを改善するかどうか」を明らかにすることです。

過去の研究では、筋トレが非疲労状態や中程度の強度でのランニングに対しては有益であることが示されていました。

しかし、マラソンのような長時間・高強度の運動を経た後に、筋トレがどのような効果をもたらすかについては、ほとんど知られていませんでした。

そこで本研究では、90分間のランニング後の効率性とパフォーマンスの変化に着目し、筋トレがその“粘り”にどう影響するのかを検証しています。

研究の対象者と背景

この研究に参加したのは、イギリス在住のトレーニングされた男性ランナー28人です。

彼らは全員、次のような条件を満たしていました:


・年齢:18〜45歳
・最近の10kmレースタイム:50分未満(平均39分)
・毎週のランニング量:20km以上
90分以上の連続ランに慣れている(最低月3回)


つまり「一般的な市民ランナーよりもやや上級者に近い層」が対象となっており、研究結果は一定の持久走経験がある人向けと言えます。

また、筋トレについては、過去6ヶ月間に下半身の筋力向上を目的としたトレーニングをしていない人に限定されています。

これは、筋力トレーニングの効果を純粋に評価するための条件です。

この研究は欧州の男性を対象としているため、筋肉量や体格の違いには注意が必要です。

日本人は欧米人に比べて筋肉量が少ない傾向があり、筋トレの効果がより出やすい可能性もあります。

一方で、同じトレーニング内容を実施した場合、過負荷によるケガのリスクが高まることも考えられるため自分の体力や経験に応じたメニューの調整が重要になります。

したがって、「ランニング歴があり、これからパフォーマンスをもう一段階引き上げたい」という方には、この研究の知見が十分参考になるでしょう。

研究の手法と分析の概要

この研究は、「ランダム化比較試験(RCT)」という、最も信頼性の高い研究デザインのひとつで行われました。

対象となった28人のトレーニングされた男性ランナーを、次の2つのグループにランダムに分けて比較しました:


・【E群】:ランニングのみを続けるグループ(対照群)
・【E+S群】:ランニングに加え、週2回の筋トレを10週間実施するグループ(介入群)


研究の流れ

・研究前に全員が同じ条件で走力テストを実施
10週間のトレーニング期間(ランニング+筋トレ or ランニングのみ)
・トレーニング後に同じテストを再実施して変化を比較

評価された項目

ランニング効率(RE):90分間のラン中に15分ごとに酸素消費を計測
疲労時の限界走行時間(TTE):90分走った直後に、95%の最大スピードで限界まで走行
筋力・ジャンプ力・体組成(筋肉量・体脂肪量)

分析の工夫

・トレーニング内容はすべて記録され、GPSログでランニング量を“スポットチェック”
食事や直前の運動・睡眠状況も統一
検査環境(温度・湿度・靴など)も統一して再現性を確保

これにより、「筋トレがランニングパフォーマンスに与える純粋な影響」をできるだけ正確に測定できるように設計されています。

読者も実践できる!10週間の筋トレメニュー詳細

この研究で行われた筋トレプログラムは、週2回、全身を使う“走れる筋力”をつくる内容となっていました。下半身中心ですが、瞬発力やパワー発揮を意識した内容です。

各週共通:種目と構成

バーベルスクワット

 - 初期(週1〜4):4セット × 6回(75〜85% 1RM)
 - 中期(週5〜7):3セット × 5回(80〜90% 1RM)
 - 後期(週8〜10):3セット × 4回(85〜90% 1RM)
 - 休憩:2〜3分

1RM(ワンアールエム)とは?
1RMとは「One Repetition Maximum」の略で、「1回だけ持ち上げられる最大の重量」のことを意味します。
たとえばスクワットで100kgがギリギリ1回だけできる場合、あなたのスクワットの1RMは100kgです。
トレーニングではこの1RMを基準に「何%の重さで、何回行うか」を設定することで、目的に応じた筋力強化が行えます。

レッグプレス

 - 3セット × 8〜10回(中重量)
 - 休憩:1〜2分

レッグカール(ハムストリングス)

 - 3セット × 8〜10回(中重量)
 - 休憩:1〜2分

ジャンプスクワット(自体重)

 - 3セット × 6〜8回
 - 意識:爆発的に真上へジャンプ

ホッピング(片脚で連続ジャンプ)

 - 各脚2セット × 8回ずつ
 - 意識:前方向への跳躍力・接地時間の短縮

バウンディング(大股ジャンプ)

 - 2セット × 20m走行
 - 意識:ストライド感覚と反発力

※プログラム中は、各種目のフォームとコントロールを厳守し、重さよりも「正しい動作と速さ」を重視
※セッションは1回あたり約60〜70分、週2回実施

このように、高重量トレーニングと跳躍系(プライオメトリクス)を組み合わせることで、筋力と神経の協調性を高め、走りのパフォーマンス向上に繋がったと考えられます。

【補足:各種用語】

ランダム化比較試験(RCT)とは?

参加者をランダムに2つのグループに分けて、異なる介入(今回は筋トレの有無)を行い、その効果を比較する方法です。
バイアス(偏り)が少なく、信頼性の高い結果が得られます。

ランニング効率(RE:Running Economy)とは?

同じスピードで走るときに、どれだけ酸素を使うか(エネルギー消費量)を表します。
少ない酸素で走れるほど“効率がよい”とされ、持久走には重要な指標です。

TTE(Time to Exhaustion)とは?

疲労状態で「もう無理」となるまでどれだけ長く走れるかを測定するもので、いわば“粘り強さ”の指標です。

研究結果:90分走っても“バテない脚”を作るカギは筋トレだった!

研究の結果、筋力トレーニングを取り入れたグループ(E+S)は、ランニング効率(RE)が改善され、疲れた状態でも粘り強く走り続けられる能力(TTE)が大きく向上したことが示されました。

ポイント①:「走りの効率」が長時間でも保たれた

90分間走った後でも、筋トレを取り入れたグループ(E+S)では、走るために必要な酸素の量(=エネルギー消費量)が減少していました。

これは「同じスピードで走っていても、体が疲れにくくなっていた」ことを意味します。

具体的には、E+S群ではランニング効率が2.1%改善、つまり酸素の消費量が少なくなっていました。

一方で、筋トレをしていないE群では、逆に酸素の消費量が0.6%増加し、走れば走るほど無駄にエネルギーを使うような状態になっていたのです。

グループランニング効率の変化(90分後)結果の意味
筋トレ群(E+S)−2.1%
改善:酸素消費が減少
走る効率が保たれた
疲労してもエネルギー効率が良いまま走れた
対照群(E)+0.6%
悪化:酸素消費が減少
走る効率が低下した
疲労により余分に酸素が必要になった

このように、“効率がいい”とは「少ない酸素で同じ動作をこなせる=疲れにくい状態」であることを意味します。

マラソンの後半などでは、この「酸素の節約力」が勝敗を分けるカギとなるのです。

ポイント②:「疲れても走れる粘り強さ」が平均35%アップ!

研究では、90分間の走行で十分に疲れた後に「どれだけ粘って走り続けられるか(TTE)」を測定しました。

その結果、筋トレを取り入れたグループ(E+S)では、この“粘り強さ”が約35%も向上していたのです。

逆に、筋トレをしていないグループ(E)では約8%も粘れなくなり、疲労によって走行時間が短くなっていました。

グループTTE(Time to Exhaustion)の変化意味
筋トレ群(E+S)約247秒 → 約324秒(+35%)疲れても頑張り続ける力が大幅アップ
疲労時の粘りが大幅向上
対照群(E)約194秒 → 約169秒(−8%)疲れるとすぐに粘れなくなる状態に
疲労でパフォーマンスが低下

ポイント③:「悪化しなかった項目」もチェック

最大酸素摂取量(VO2max)体組成(体脂肪・筋肉量)には有意な変化はなし
⇒これは「筋肉を大きくせず、効率やパワーのみ向上した」ことを示します

研究の結論:筋トレは「バテない走りをつくる」

この研究の結論は明確です。

筋力トレーニングを取り入れることで、トレーニングされたランナーは“走る効率”と“粘り強さ”の両方を向上させることができたのです。

具体的には:


長時間走っても無駄な酸素消費が増えず、効率的な走りが維持された

疲れた状態でも「もうひと踏ん張り」が利くようになった


これらの結果から導き出される最大のメッセージは、次のとおりです:

筋トレは「走りを遅くする」のではなく、「バテない走りをつくる」

これまで一部のランナーが懸念していた「筋トレをすると体が重くなって走れなくなるのでは?」という心配は、本研究によって否定されました。

むしろ逆に、効率的なエネルギー運用と疲労に強い身体を同時に手に入れられるということが、数字で示されたのです。

特にマラソンのように「後半に差がつく」競技では、この“バテない身体”こそが、記録更新の鍵になります。

その意味で、筋力トレーニングはランナーにとって「補助的」ではなく「必須」の要素になりつつあるのかもしれません。

次は、これを日本人の私たちがどう活かせるかを考えてみましょう。

【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点

この研究は、筋力トレーニングが走力にプラスの影響を与えることを明らかにしましたが、いくつかの点で日本人の市民ランナーが取り入れる際の注意も必要です。

教訓①:筋トレは「体を重くする」のではなく「エネルギー効率を高める」

まず押さえておきたいのは、「筋トレ=ムキムキになる=走れなくなる」という誤解を捨てることです。

本研究の筋トレは、高重量かつ低回数、ジャンプ系トレーニングを組み合わせることで、“筋肥大”ではなく“神経系の強化”を目的としています。

つまり、筋肉を“増やす”のではなく、“使い方をうまくする”ことで、疲れにくい身体に変えていくトレーニングです。

教訓②:欧米人と日本人の身体的違いを理解する

参加者は全員イギリス人の男性で、平均体格や筋肉量は日本人よりも大きい傾向があります。

そのため、同じ重量・回数をそのまま真似するのではなく、自分の体力に合わせた負荷設定が大切です。

とくに筋トレ初心者の場合は、まず自体重でのスクワットや簡単なジャンプから始め、ケガ予防を最優先に少しずつ強度を上げていくことをおすすめします。

教訓③:長距離ランナーほど“後半の粘り”を鍛える意義が大きい

本研究では「90分走った後にどれだけ粘れるか」が指標でした。これは、マラソンやトレイルランのような競技に最も関連する能力です。

ペースを保ったままラストまで走り切りたい…そんな市民ランナーにとっても、筋トレは“後半で崩れない身体”を作るための強力な武器になるはずです。

このように、日本人である私たちも、自分に合った安全な筋トレを続けることで、持久走のパフォーマンスを確実に向上させることができるというのがこの研究からの大きな学びです。

まとめ

今回は、「筋トレがランニング効率と疲労耐性をどう変えるか?」という興味深いテーマに取り組んだ最新の研究をご紹介しました。

要点を振り返ると…


筋トレを取り入れることで、長時間走った後でも無駄な酸素消費が抑えられた

疲れた状態でも“もうひと粘り”できる力が平均35%もアップ

筋肉を大きくすることなく、走りの効率と粘りを同時に改善

日本人が取り入れる際は、無理のない負荷設定が重要


つまり、筋トレはランナーにとって“重り”ではなく、エンジンの性能を引き上げる整備のような存在だということがわかります。

走ることに専念していた方も、週2回のシンプルな筋トレを加えるだけで、パフォーマンスが見違えるように変わる可能性があるのです。

私自身、以前は筋トレとランニングは別物だと思っていましたが、この研究を読んで考えが変わりました。

“速く走る”よりも“最後まで走り切る”ことが大切な場面は、実際のレースや日常のランでも多いですよね。

ぜひ、無理のない範囲でトレーニングに筋トレを取り入れてみてください。

「バテない走り」は、きっとあなたの新しい武器になります。

締めのひとこと

次回のランでは、筋トレで鍛えた“粘り強さ”を、ぜひその脚で感じてみてくださいね。


以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

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