
結論「テレビを1日2時間以上見る男性は、腎結石になりやすい。特に5時間以上の視聴でリスクは16%上昇」
この記事はこんな方におすすめ
✅健康診断で腎機能に注意されたことがある男性
✅テレビや動画を長時間見てしまう生活が気になる方
✅食事や生活習慣で腎臓の健康を守りたいと考えている方
✅腎結石の再発を予防したいと思っている方
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:長時間テレビを見る生活って、腎臓にも悪いの?
🟡結果:1日2時間以上の視聴で腎結石リスクが上昇、5時間以上では16%増加
🟢教訓:「座ったまま動かずに過ごす時間」がカギ。テレビ視聴はほどほどに、抗酸化食も忘れずに
🔵対象:アメリカの20歳以上の男性が対象。日本人にも共通する“座りがち習慣”への警鐘

はじめに
皆さん、こんにちは!
突然ですが、気づいたら1日中テレビやYouTubeを見ていた…なんてこと、ありませんか?「ちょっと疲れたから休憩」と思ったら、あっという間に2時間、3時間…気がつけば夜になっていたこと、私も何度もあります。
そんな私がふと「この生活って身体に悪いのかな?」と感じていた時に出会ったのが、今回の研究です。
本日ご紹介するのは、アメリカの『International Urology and Nephrology(国際泌尿器科・腎臓学雑誌)』に2024年に掲載された、テレビ視聴時間と腎結石リスクの関係を調べた研究。
今回は、日々のテレビ視聴と腎臓の健康との意外なつながりについて、やさしく解説していきます。
自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

今回読んだ論文
“Television viewing, oxidative stress, and kidney stone risk in males: a cross-sectional study with mediation analysis of the NHANES data (2011-2018 years).”
(テレビ視聴時間、酸化ストレス、男性の腎結石リスク:NHANESデータ(2011~2018年)を用いた横断研究およびメディエーション分析)
Int Urol Nephrol. 2025 Mar;57(3):929-938.
PMID: 39487905 DOI: 10.1007/s11255-024-04255-7
掲載雑誌:International Urology and Nephrology(国際泌尿器科・腎臓学)【アメリカ】 2025年3月より
研究の目的

この研究では、「テレビを見る時間が長いと、男性の腎結石リスクが高くなるのでは?」という疑問を検証しています。
あわせて、テレビを長く見る人は食生活が乱れやすくなる傾向があり、そのような食事が腎結石の発症に関係している可能性についても調べられました。
近年の研究で、長時間座って過ごす生活スタイルが、糖尿病や肥満、心臓病などのさまざまな病気のリスクと関係していることがわかってきました。
しかし、こうした「座りっぱなしの生活」と「腎結石」との関係は、これまでほとんど研究されていませんでした。
そこで本研究では、アメリカ全国の健康調査データを活用して、テレビ視聴時間と腎結石の関係を明らかにするとともに、その背景にある食生活の質の違いがどのように関係しているのかを詳しく分析しています。
研究の対象者と背景
この研究は、アメリカ全土で実施されている大規模な健康調査「NHANES(全米健康栄養調査)」のデータを用いて行われました。

対象となったのは、2011年から2018年までの調査に参加した、20歳以上のアメリカ人男性4,167人です。
そのうち、417人(約10%)が腎結石の既往があると自己申告しています。
※なお、ここでいう「腎結石」は、NHANES調査で「腎結石になったことがありますか?」という質問への自己申告に基づいており、医学的に“尿管結石”として診断されたケースも含まれている可能性があります。調査上は腎結石として一括して扱われており、尿管結石と明確に区別されてはいません。
アメリカ人を対象とした研究ではありますが、テレビの視聴習慣や座りがちな生活、加工食品に偏りがちな現代の食習慣は、日本人にも共通しています。
したがって、この研究結果は日本の私たちにとっても十分参考になる内容です。
※本研究では、テレビ視聴は「椅子やソファに座ってモニターを見続ける行動」として評価されており、これはアメリカで一般的な生活スタイルに基づいています。
研究の手法と分析の概要
この研究は、「横断的な観察研究」として、NHANES(全米健康栄養調査)のデータを使い、参加者の生活習慣と腎結石の関係を分析したものです。
主に以下の情報が収集され、評価の対象となりました:
・テレビ視聴時間(1日あたり)
・食生活に含まれる栄養素のバランス(抗酸化力に関連)
・腎結石の有無(自己申告)
・年齢、BMI(体格指数)、高血圧や糖尿病の有無、喫煙・飲酒習慣など
特に注目されたのは、「食事の内容が腎結石リスクにどう関係しているか」という点です。この研究では、食生活が体に与える影響を評価するために、「食事性酸化バランススコア(DOBS)」という指標が用いられました。
また、データ分析には以下の統計手法が用いられました:
・多変量ロジスティック回帰分析:腎結石の有無という結果に対して、どの要因がどれほど関係しているかを数値で評価します。
・メディエーション分析(媒介分析):たとえば「テレビ視聴」が「食生活の乱れ」を通じて腎結石に関与しているかどうかを調べる手法です。
これらを組み合わせることで、テレビ視聴が腎結石に「直接的に」または「間接的に」影響しているかを詳しく検証することができました。
【補足】DOBS(食事性酸化バランススコア)とは
DOBSとは、食事に含まれる栄養素のバランスをスコア化したもので、抗酸化力のある食品と、体にストレスをかけやすい食品の比率から成り立っています。
・高スコア:ビタミンCやE、食物繊維など、体にやさしい抗酸化栄養素が多い
・低スコア:脂質や鉄分など、酸化ストレスを高めやすい成分が多い
このスコアを用いることで、単に摂取量ではなく「食事の質」全体を評価できるようになります。

研究結果:1日2時間以上のテレビ視聴で腎結石のリスクが上昇」
この研究で最も注目すべき発見は、1日にテレビを2時間以上見る人では、腎結石のリスクが明らかに高くなるということです。
特に、5時間以上テレビを見る人では、腎結石になるリスクが約16%も増加するという結果が得られました(オッズ比:1.16、P=0.01)。
さらに、食生活の質を示す指標である食事性酸化バランススコア(DOBS)も、腎結石リスクと関係していることがわかりました。
DOBSが高い(=抗酸化作用の高い栄養素を多く含むバランスの良い食事をしている)人では、腎結石のリスクが3%ほど低くなる傾向がありました(オッズ比:0.97、P=0.004)。
しかし重要なのは、このDOBS(食事の良さ)を考慮してもなお、長時間のテレビ視聴が腎結石リスクに独立して関与していたという点です。
つまり、「長時間、座って過ごす姿勢」自体が腎結石のリスク因子となっている可能性が高いということが示唆されました。
【補足】オッズ比(Odds Ratio)とは?
オッズ比とは、「ある条件の人が、病気などの結果になる確率がどれだけ高いか(または低いか)」を表す数値です。
・オッズ比が1.00:基準(=平均的なリスク)
・1より大きい:リスクが高まっている(例:1.16なら16%リスク増)
・1より小さい:リスクが低くなっている(例:0.97なら3%リスク減)
今回の研究では、テレビ視聴5時間以上で「オッズ比1.16」となっており、テレビを見ない人より16%リスクが高くなることを意味します。
グラフで見る変化(Figure.4)

論文中のFigure.4では、テレビ視聴時間が2時間を超えたあたりから腎結石のリスクが右肩上がりに増加している様子が曲線で示されています。
・縦軸(Y軸):腎結石になる確率(リスク倍率)
・横軸(X軸):1日あたりのテレビ視聴時間(時間)
このグラフから、「テレビはちょっとだけなら問題ないけど、長く見すぎると明確にリスクが高まる」という傾向が視覚的にわかります。
主な結果まとめ(表)
項目 | 腎結石リスク(オッズ比) | 備考 |
テレビ視聴 〜2時間/日 | 基準(1.00) | 最も低リスク |
テレビ視聴 5時間以上/日 | 1.16 | 16%リスク増、P=0.01 |
DOBS(食生活スコア)上昇 | 0.97 | 3%リスク減、P=0.004 |
※食事の質(栄養バランス:DOBS)も腎結石リスクに影響するが、テレビ視聴との関係性はそれ単独で有意とされた。
研究の結論
座ったまま長時間テレビを視聴する生活スタイルが、男性の腎結石リスクを高める可能性があることが、この研究で明らかになりました。
その影響は、食事の内容による間接的なものだけではなく、「長時間座り続ける姿勢」そのものが、腎結石の発症に直接関わっている可能性が示唆されています。

【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点
私たち日本人も、長時間座ってテレビやスマホを見てしまう習慣は珍しくありません。
特にデスクワークやリモートワークが多い現代では、「座りっぱなし」が日常の一部になっています。
腎結石は、突然の激痛を伴うつらい病気です。そして一度できると再発しやすいという特徴もあります。
だからこそ、日々の生活習慣が予防につながるという今回の研究結果は、非常に重要な示唆を含んでいると感じます。
特に注目したいのは、食事を良くしても、“座りっぱなし”を続けていると腎結石のリスクは下がらないという点です。
これはつまり、「食事+姿勢(生活習慣)」の両方を見直す必要があるということ。
テレビやスマホの視聴自体が悪いわけではなく、それに伴う「動かない時間」が長くなることが問題なのです。
1時間ごとに立ち上がる、ストレッチを挟む、水分をとる。そうした些細な工夫が、将来の健康を守る一歩になります。

まとめ
✅座って長時間テレビを見る人は、腎結石リスクが高くなる
✅1日5時間以上でリスクは約16%増(オッズ比1.16)
✅食生活のバランスが良い人ではリスクがやや低下(オッズ比0.97)
✅しかし、食事だけではテレビ視聴との関係を説明できない
✅長時間の“座りっぱなし”が、腎結石のリスク因子になっている可能性がある
忙しい日常の中でも、少しの意識でリスクは減らせます。
まずは「座る時間」を減らすこと、そして「バランスの良い食事」を心がけることが大切です。
締めのひとこと
座りっぱなしは危険ですよ。そろそろちょっと動いてみませんか?

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
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