ナッツ=健康は本当?ローストピーナッツで心臓病リスクが1.5倍に!

健康的なナッツと不健康なローストピーナッツを対比したイラスト|ナッツの選び方で心臓病リスクが変わる

結論「塩味・ローストされたピーナッツの摂取は、心臓病(虚血性心疾患)のリスクを約1.5倍に高める可能性があることが遺伝学的手法から明らかになりました」

この記事はこんな方におすすめ


✅健康のためにナッツを日常的に食べている人
✅加工食品のリスクについて知りたい人
✅心臓病の予防を意識している中高年層
✅食生活の見直しを考えている健康志向の方


はじめに

皆さん、こんにちは!
突然ですが、ナッツって「とっても体に良さそう」なイメージ、ありますよね?
健康的なスナックとして紹介されることも多くて、普段からおやつ代わりに食べている方も多いんじゃないでしょうか。

実は私もその一人で、ローストピーナッツならロカボだし罪悪感ゼロ!と信じて、毎日のようにポリポリ食べていました。

そんなとき、たまたま目に留まったのが今回ご紹介する研究論文です。
「加工されたナッツと心臓病の関係」を、遺伝子レベルで解き明かしているということで、思わず引き込まれてしまいました。

この論文は、イギリスの科学雑誌『Scientific Reports』に2025年に掲載されたもの。
今回はその内容をもとに、「加工ピーナッツが心臓に与える影響」について、わかりやすくお伝えしていきます。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、

生の一次情報をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

今回読んだ論文

“Mediators of the association between nut consumption and cardiovascular diseases: a two-step mendelian randomization study””

(ナッツ類の摂取と心血管疾患との関連における媒介因子:二段階メンデル無作為化研究)

Sci Rep. 2025 Jan 4;15(1):829.

PMID: 39755742 DOI: 10.1038/s41598-024-85070-z

掲載雑誌:Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ) 【イギリス】 2025年1月より

研究の対象者と背景

この研究は、イギリスとフィンランドの大規模な遺伝情報データベース「UK Biobank」と「FinnGen」を用いて行われました。

参加者は主に40〜69歳のヨーロッパ系の男女で構成されており、遺伝子情報や食生活の自己申告データ(ナッツの摂取状況)をもとに解析が行われました。

日本人とは人種・体質・食文化が異なる点に注意が必要です。特に、ナッツの摂り方(甘味系、塩味系、生かローストか)、代謝傾向(脂質や糖代謝)などは民族差が大きいため、この結果がそのまま日本人に当てはまるとは限りません。

ただし、「加工食品が心臓や代謝に悪影響を及ぼす可能性がある」という点では、日本人にも共通する重要な示唆が含まれており、参考になる部分は多いといえます。

研究の手法と分析の概要

この研究では、「メンデル無作為化(MR)分析」という遺伝子を活用した手法を使って、ナッツの摂取と心臓病の因果関係を調べました。

ナッツの摂取状況のデータ収集

研究に使われたデータは、イギリスの「UK Biobank」とフィンランドの「FinnGen」という、合計で約100万人分の遺伝子・健康データを活用したものです。

参加者たちは、前日の食事内容について「どんなナッツをどれくらい食べたか」を画面で入力するアンケートに回答しており、この食事調査は複数回にわたって実施されました。これにより、ナッツの摂取傾向がより正確に記録されています。

調査対象となったナッツの分類は以下の4種類です:


✅無塩ピーナッツ
✅無塩のその他のナッツ(例:アーモンド、くるみ)
✅塩味またはローストされたナッツ
✅塩味またはローストされたピーナッツ


研究では、それぞれのナッツをよく食べる傾向のある人たちに共通する『遺伝子パターン(SNP)』を抽出し、その遺伝的傾向がどの心臓病と関連しているかを解析しました。対象となった心臓病には、虚血性心疾患(IHD)、心筋梗塞、心房細動などが含まれます。

さらにこの研究では、ナッツの摂取が心臓病に影響を与える『ルート』にも注目しています。つまり、「ナッツが直接心臓に悪いのか?」それとも「血糖値やコレステロールなどの代謝を通じて、結果的に心臓に悪影響が出るのか?」という間接的な影響を調べました。

この『影響のルート』を分析するために使われたのが、「2段階メンデル無作為化(2-step MR)」という手法です。これは以下のように2段階で行われます:

【補足】SNPとは?

SNP(Single Nucleotide Polymorphism:スニップ)とは「一塩基多型」といって、ヒトの遺伝子配列の中の1か所に見られるわずかな違いのことです。

たとえば「加工ピーナッツをよく食べる傾向のある人」に共通して見られる遺伝的特徴を見つけ、それが病気のなりやすさとどう関係しているかを調べます。

※ただし、SNPが直接その人の食生活を決めているわけではなく、あくまで“関連”を見ている点にもご注意ください。

【補足】2段階メンデル無作為化とは?

第1段階:ナッツの摂取が、血糖値・インスリン・LDLコレステロールなどの代謝指標にどのように影響しているかを分析
第2段階:これらの代謝指標が、実際に心臓病の発症リスクにどう関係しているかを解析

この2つの段階を組み合わせることで、「ナッツ → 代謝異常 → 心臓病」という間接的なメカニズムを明らかにし、どのくらいの割合がこの経路を通じて説明されるかまで推定しています。
なお、この手法では第1段階と第2段階で異なる集団データを使う「二標本MR」という形式が採用されており、より広範な情報を統合して分析が可能となっています。

研究結果:加工ピーナッツが心臓病リスクを高める、その仕組みも明らかに

今回の研究で最も注目すべき発見は、「塩味やロースト加工されたピーナッツをよく食べる人では、虚血性心疾患(IHD)のリスクが約1.5倍に高まる」可能性があるという点です。

虚血性心疾患とは、心臓の血管が詰まりやすくなって血流が不足することで、狭心症や心筋梗塞を引き起こす重大な病気です。

さらにこの研究では、「なぜ加工ピーナッツが心臓病につながるのか?」というメカニズムについて、体の中の“間接的な変化”を通じて詳しく調べられました。

その結果、次のような代謝指標の変化を介して、心臓病のリスクが高まっていることが、遺伝的な分析から明らかになったのです。

加工ピーナッツが心臓に与える“間接的な影響”

媒介項目内容の説明影響の割合加工ピーナッツによる変化
空腹時インスリン(FI)血糖をコントロールするホルモンの量16.98%減少(−)
空腹時血糖(FG)食事していないときの血糖の高さ4.91%減少(−)
LDLコレステロール(LDL)動脈硬化を引き起こす“悪玉脂質”6.38%増加(+)

合計で約28%の影響が、これらの“体の中の代謝の変化”を通じて生じているとされ、特にインスリン(FI)の変化が最も大きな媒介経路であることが示唆されました。

これは、ナッツそのものが「直接心臓に悪い」のではなく、「加工されたピーナッツが代謝バランスを変化させ、結果的に心臓病のリスクを高める」という、非常に現代的かつ科学的な視点からの分析結果といえます。

このように、遺伝子の違いを活用して食事と病気の因果関係を見抜くという新しい手法によって、普段の食習慣が私たちの健康にどう影響しているかを、より正確に知る手がかりが得られつつあります。

研究の結論:加工されたナッツの“落とし穴”

この研究が教えてくれるもっとも大きなメッセージは、「ナッツ=健康に良い」という一般的なイメージに、一度立ち止まって考える余地があるということです。

特に「塩味」や「ロースト加工」がされたピーナッツは、食べやすく美味しい反面、体の代謝に変化を及ぼし、それが心臓病のリスクを高める可能性があるという事実は、見過ごせないものです。

逆に言えば、「どんな形でナッツを摂るか」を意識すれば、健康リスクを抑えることもできるかもしれません。

【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点

日本人でも、コンビニやスーパーで売られている「味付きピーナッツ」や「柿ピー」などを習慣的に食べている方は多いと思います。
これらの“加工されたナッツ類”には、塩分や熱加工による栄養の変化があり、特に心臓疾患のリスクを持つ方は注意が必要です。

まとめ

加工ピーナッツが持つ“見えないリスク”を、遺伝子の力を借りて解明したこの研究は、私たちの食習慣を見直すきっかけを与えてくれます。


健康に良いと思っていた食品でも、加工の仕方によってはリスクになる
体の中では血糖・インスリン・脂質など、複雑な変化が起きている
加工食品を選ぶときは「美味しさ+安全性」の視点を持つことが大切
特に毎日食べる“習慣化した食品”には、より慎重な選択が必要


こうした視点は、何気ないスナックの選択が「未来の健康」を左右するかもしれないということを、やさしく教えてくれます。

私自身もこの論文をきっかけに、おやつ棚のナッツ選びをもう一度見直しました。
皆さんも、何気なく手に取っていた“そのピーナッツ”、少しだけ見直してみませんか?

締めのひとこと

「ナッツは健康にいい」のは本当。でも“どんなナッツをどう食べるか”が、もっと大事なのかもしれません。


以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

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