
結論「ホエイプロテインは、運動と一緒に摂取することで、悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪を減らす効果があり、特に「50歳未満の健康な成人」においてその効果が顕著に表れました。ただし、「飲むだけ」では効果は得にくく、運動とのセットが前提です。」
この記事はこんな方におすすめ
✅健康診断のコレステロールや中性脂肪の数値が気になる方
✅「プロテイン=筋肉のためだけ」と思っていた方
✅食事やサプリで心臓・血管の健康を守りたいと考える方
✅40〜50代、そろそろ“内側の健康”にも目を向けたい方

はじめに
皆さん、こんにちは!
突然ですが、「プロテインって結局、筋肉をつけたい人のためのものでしょ?」と思っていませんか?
実は私もつい最近までそう思っていて、プロテイン=筋トレ用サプリというイメージがずっと頭にこびりついていました。
でもあるとき、健康診断で中性脂肪やコレステロールの数値にちょっと赤信号が灯ってしまいまして…。運動不足と間食のクセがじわじわ効いてきたのかな、と反省するきっかけになったんです。
そこで気になり始めたのが、「日常の食事やサプリメントが、血液や心臓の健康にどう影響しているのか?」という点。
本日ご紹介するのは、そんな疑問にヒントを与えてくれる最新の研究です。
この論文は、イギリスの臨床栄養学専門誌『Clinical Nutrition』に掲載されたもので、ホエイプロテインと心代謝の健康に関する信頼性の高い分析が行われています。
今回はこの研究をもとに、「プロテイン=筋肉のためだけじゃない」新しい視点を、分かりやすくお伝えしていきます。
自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Mr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!
今回読んだ論文
“The effects of whey protein supplementation on indices of cardiometabolic health: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials””
(ホエイプロテイン補給が心代謝健康の指標に与える影響:無作為化対照試験の体系的レビューおよびメタ解析)
Clin Nutr. 2025 Jan:44:109-121.
PMID: 39647241 DOI: 10.1016/j.clnu.2024.12.003
掲載雑誌:Clinical Nutrition(臨床栄養) 【イギリス】 2025年1月より
研究の対象者と背景
21件の無作為化対照試験(RCT)を統合したこの研究では、対象者は20〜70代の健康な成人から肥満・高血圧・糖尿病の方まで多岐にわたります。
イギリス、アメリカ、ブラジル、日本、デンマークなど複数の国が含まれ、50歳未満の健康な成人で効果が特に強くみられました。

日本人は欧米人に比べ、筋力・脂質のつき方・乳製品の消化などに差があり、乳糖不耐症の割合も多いため、ホエイプロテインの効果や反応には個人差が出る可能性があります。
研究の手法と分析の概要
この研究は、ホエイプロテインが心臓や血管、代謝の健康に与える影響を客観的に調べるために、「メタ解析(meta-analysis)」という手法を用いています。
メタ解析とは、すでに行われた複数の臨床研究(ここでは21件のRCT)をひとまとめにして、より信頼性の高い結果を導き出すための統計的手法です。
対象となったのは、成人(18歳以上)を対象とした無作為化対照試験(RCT)で、比較対象としては糖質ベースの偽薬(マルトデキストリンなど)や、同等の栄養条件を備えたコントロール群が用いられました。ホエイプロテインの摂取期間は最低でも4週間以上に設定されています。
【補足】無作為化対照試験(RCT)とは?
「無作為化」とは、参加者をランダムに振り分けること。「対照試験」とは、片方にはホエイプロテイン、もう片方にはプラセボ(偽薬)などを与えて比較する方法。これにより、効果の“本当の原因”を特定しやすくなります。医療研究における最も信頼度の高い方法の一つです。
どんな項目が評価されたの?
研究では以下の6つの項目を中心に分析しています:
✅収縮期血圧(SBP)
✅拡張期血圧(DBP)
✅HDLコレステロール(善玉)
✅LDLコレステロール(悪玉)
✅総コレステロール
✅中性脂肪(トリグリセリド)
✅HOMA-IR(インスリン抵抗性の指標)
これらはすべて、心臓病や糖尿病のリスクに関わる重要な数値で、日常の健康診断でもよく目にするものですね。

サブグループ分析も実施
さらにこの研究では、「どんな人に効果が出やすいか」を知るために、次のようなサブグループ別の分析も行われました:
✅年齢(50歳未満 vs. 50歳以上)
✅摂取期間(12週未満 vs. 12週以上)
✅タンパク質の量(1日35g未満 vs. 35g以上)
✅運動との併用の有無(プロテイン単独 vs. 運動+プロテイン)
✅対照群の種類(本物のプラセボ vs. 糖質制御などの条件付き)
このように細かく条件を分けることで、「効果があるのはどんな人?」「どんな条件で効くの?」という問いに対する明確な答えを導き出そうとしています。
【補足】誰にどんな効果が出やすい?──サブグループ分析とは?
全体の平均だけを見ると、効果の大小がわかりにくいことがあります。
そのため、年齢、体型、摂取期間、運動習慣などの条件ごとに細かく分析することで、「どんな人に一番効果が出やすいのか」を明らかにするのがサブグループ分析の目的です。これは医療研究では非常に重要な手法です。
例えば──
「若くて運動してる人には効果があった。でも高齢者では目立った変化がなかった」
といった違いを明らかにすることで、そのサプリや栄養法を誰に勧めるべきかが明確になります。
このようにサブグループ分析を加えることで、「ホエイプロテインが誰にどれくらい効くのか?」という疑問に対して、より実践的で役立つ答えを導いています。
統計的信頼性の担保として、研究間のばらつき(異質性)やバイアス(偏り)についても検証することになり、結果の信頼性が高められます。
研究結果
研究結果は以下です。
LDLコレステロール(悪玉)の低下が確認されました
最も注目されたのは、LDL(悪玉)コレステロールの減少効果です。
特に「50歳未満で運動も行っていた人」では、LDLが平均5.4mg/dL低下しており、これは心疾患リスクの2〜3%低下に相当します。
LDLが下がるということは、動脈硬化の進行リスクを減らす意味でも大きな成果です。
総コレステロールも改善
運動と併用することで約6〜8mg/dL減少。LDLだけでなく総合的な脂質改善がみられます。
中性脂肪も12週以上で減少
中性脂肪は、摂取期間が12週以上だった場合に、平均6〜8mg/dLの減少。この傾向は特に健康な若年層に強く出ていました。

血圧・善玉コレステロール(HDL)・インスリン抵抗性には効果なし
SBP(収縮期血圧)やDBP(拡張期血圧)、HDL(善玉)コレステロール、HOMA-IR(インスリン抵抗性)については、統計的に有意な変化は見られませんでした。
サブグループ傾向
以下のような条件の組み合わせで、ホエイプロテインの効果が特に高くなることがわかりました:
分析項目 | 条件 | 傾向 |
年齢 | 50歳未満 vs 50歳以上 | 若年層で効果大 |
BMI | 標準体型 vs 肥満体型 | 標準体型への効果が強い |
運動 | 運動あり vs なし | 運動併用で効果明確 |
摂取期間 | 12週未満 vs 12週以上 | 12週以上で中性脂肪改善 |
タンパク質量 | ≤35g/日 vs >35g/日 | 高用量でも効果に大差無し |
研究の結論:プロテインは“努力する人”にこそ効果がある
ホエイプロテインは、運動と組み合わせることで心血管・代謝系の健康指標を改善する可能性が高く、特に若年・健康な成人において顕著です。
ただし、「飲むだけでOK」ではなく、継続的な運動との併用が前提条件です。
【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点
今回の研究で明らかになった最大の教訓は、プロテインだけに頼って“楽して健康を手に入れる”ことはできないという現実です。
でも逆に言えば、普段から運動や食事に気をつけている人にとっては、ホエイプロテインの効果は努力へのご褒美としての意味を持つのではないでしょうか。
「がんばってる人の努力が数値として報われる」──そんな前向きなデータです。
私自身、運動習慣にまだ自信があるとは言えませんが、この結果を知ってからは「少しでも動こう」と思えるようになりました。

まとめ
ホエイプロテインは、筋肉のためだけのサプリではありません。
血液・心臓・代謝の健康をサポートする、日常使いできる“食事の一部”として再評価されるべき存在です。
ただし、土台にあるのは運動や生活習慣。ホエイプロテインは“魔法の粉”ではなく、健康という山を登るときの、ちょっとした補助ロープのような存在。
上手に使えば、無理なく、でも確実に高みを目指すことができます。
締めのひとこと
プロテインは、努力する人の体に、きちんと応えてくれる“報酬”なのかもしれません。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
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