
結論「タンパク質を減らすと、ヒトの身体は「エネルギー浪費モード」に切り替わる。」
この記事はこんな方におすすめ
✅「食べてないのに太る」「食べてるのに痩せている」人の違いを知りたい方
✅カロリー計算だけでなく「PFCバランス(栄養比率)」が代謝に与える影響に興味がある方
✅最新の代謝ホルモン(FGF21)やミトコンドリアの働きを医学的に知りたい方
✅極端な食事制限のメリットと、それに潜む「筋肉減少」のリスクを正しく理解したい方
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:食事の「タンパク質」を減らすと、身体のエネルギー代謝はどう変化するのでしょうか?
🟡結果:健康な男性がタンパク質を制限した結果、体重を維持するために必要なカロリーが約20%も増加しました。つまり、身体の燃費が悪くなり、エネルギーを大量に消費するようになったのです。
🟢教訓:タンパク質比率を下げることで代謝は活発化しますが、同時にしっかりカロリーを摂らないと筋肉が落ちてしまうリスクがあります。「低タンパク」の実践には慎重なカロリー管理が必要です。
🔵対象:デンマークの健康な痩せ型男性(20代後半)を対象とした『Nature Metabolism』掲載の研究です。

※本記事内の画像は主にChat GPTおよびGeminiを用いて、すべてAIで生成しております。
すべてイメージ画像であり、本文の内容を正確に表したものではありません。
あらかじめご了承ください。
はじめに
皆さん、こんにちは!
「ダイエットには高タンパク質!」というのが最近の常識ですが、ふと「じゃあ、タンパク質を減らしたら身体はどうなるんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
実は、「野菜中心であっさりした食事(低タンパク)をしているのに、すぐにお腹が空いて結局たくさん食べてしまう」……
そんな経験がある方もいるかもしれません。
それはもしかすると、意志が弱いからではなく、身体の代謝システムが「あるモード」に切り替わっているからかもしれません。
本日ご紹介するのは、私たちの食欲やエネルギー消費の根本に関わる最新の研究です。
掲載されているのは、科学界のトップジャーナル『Nature Metabolism』。
今回は、常識とは逆の「低タンパク質食」が引き起こす、驚きの代謝変化について一緒に読み解いていきましょう。

noteで簡略版も公開しています↓↓↓
自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!
※本記事は、PubMed掲載の査読付き論文をもとに、現役医師が一次情報をわかりやすく解説しています。
以下に出典を明示し、信頼性の高い医療情報をお届けします。
今回読んだ論文
“”Dietary protein restriction elevates FGF21 levels and energy requirements to maintain body weight in lean men””
(食事タンパク質の制限は、痩せ型の男性においてFGF21レベルを上昇させ、体重維持に必要なエネルギー量を増加させる)
Trine S Nicolaisen, Aslak E Lyster, Kim A Sjøberg, et al.
Nat Metab. 2025 Mar;7(3):602-616. doi: 10.1038/s42255-025-01236-7. Epub 2025 Mar 6.
PMID: 40050437 DOI: 10.1038/s42255-025-01236-7
掲載雑誌:Nature Metabolism【イギリス IF 20.8(2024)】 2025年より
研究の要旨(Abstract)
研究目的
ヒト(健康な男性)において、食事中のタンパク質を制限することが、エネルギー消費量や代謝ホルモンにどのような影響を与えるかを解明すること。
研究方法
体重を一定に保つようカロリー調整を行った上で、標準食と低タンパク質食(炭水化物または脂質で代替)を5週間摂取させ比較した。
研究結果
低タンパク質食では、体重を維持するためにエネルギー摂取量を約20%増やす必要があり、代謝ホルモンFGF21が著しく上昇した。
結論
タンパク質摂取を制限すると、エネルギー効率が悪化(消費が増大)し、体重維持により多くのカロリーが必要になることが示された。
考察
このエネルギー消費の増大は、FGF21を介して脂肪組織のミトコンドリアが活性化し、熱産生(アンカップリング)が促されたためと考えられる。
研究の目的
「カロリーはカロリーである」という物理学的な視点に対し、生物学的な視点からは「栄養バランスによって代謝が変わるのではないか?」という議論が続いています。
これまでマウスの実験では、タンパク質を減らすと食欲が増し、エネルギー消費が高まることがわかっていました。
これを「プロテインレバレッジ仮説(タンパク質が欲しくて食欲が増す)」などと関連付けて説明されますが、「ヒトでも同じように代謝が上がるのか?」「それは炭水化物を増やしたせいなのか、タンパク質が減ったせいなのか?」という点は不明確でした。
この研究は、食事内容を厳密に管理することで、ヒトにおける「タンパク質制限とエネルギー代謝」の関係を白黒つけようとしたものです。

研究の対象者と背景
この研究は、非常に厳密な管理下で行われました。
対象者
健康で痩せ型(BMI 22〜25程度)の若い男性(20代後半)。
人数
3つの実験系あわせて計20名以上(クロスオーバー試験を含む)。
場所
デンマークの研究機関(コペンハーゲン大学など)。
被験者は普段、タンパク質比率が約18%という欧米の標準的な食事をしています。
日本人の平均的な摂取比率(13〜15%前後)に比べるとやや高めです。
今回の実験ではこれを約9%まで制限していますが、もともとタンパク質摂取が少なめの日本人がさらに減らす場合、筋肉量維持の観点でよりシビアな影響が出る可能性があるため、注意が必要です。

研究の手法と分析の概要
この研究の最大のキモは、「Eucaloric(等カロリー)」ではなく「Weight Maintenance(体重維持)」を条件にした点です。
実験デザイン
5週間の食事介入試験。
比較した食事
標準食(HPD)
タンパク質 18%
低タンパク・高炭水化物(LPHC)
タンパク質 9%、炭水化物 70%
低タンパク・高脂質(LPHF)
タンパク質 9%、脂質 50%
手法
毎朝体重を測定し、体重が減りそうなら食事を増やし、増えそうなら減らすことで「体重を一定」に保ちました。
その上で、どれだけ食べたか(=どれだけ消費したか)を計算しています。
これにより、「痩せたから代謝が落ちた」といったノイズを排除し、純粋な「燃費の変化」を捉えることに成功しました。

【補足:各種用語】
FGF21(線維芽細胞増殖因子21)
肝臓などから分泌されるホルモン。
飢餓状態や低タンパク質状態で増え、脂肪の分解やエネルギー消費を促進する働きがあります。
ミトコンドリア
細胞内のエネルギー工場。酸素を使って活動エネルギー(ATP)を作ります。
アンカップリング(脱共役)
ミトコンドリアがATPを作らずに、エネルギーを「熱」として逃がしてしまう現象。
これ起きると、燃費が悪くなり(消費カロリーが増え)ます。
研究結果
さて、驚きの結果を見ていきましょう。
私たちの身体は、タンパク質が減ると必死にエネルギーを捨て始めるようです。
低タンパク質だと、燃費が極端に悪化する
最も重要な発見は、低タンパク質食(LPHCおよびLPHF)の期間中、参加者の体重を維持するためには、摂取カロリーを大幅に増やさなければならなかったことです。
• 実験開始から1〜2週間後より、必要なエネルギー量が上昇。
• 5週間後には、標準食の時と比べて約19〜21%(約2.5MJ/日)も多くのカロリーが必要になりました。
• これは、おにぎりに換算すると1日3〜4個分余計に食べないと、勝手に痩せてしまうという状態です。

「炭水化物」でも「脂質」でも同じ現象が起きた
「炭水化物が多いから代謝が上がったのでは?」という疑いを晴らすため、減らしたタンパク質を「脂質」に置き換えた実験も行われましたが、結果は同じく約21%のエネルギー必要量増加でした。
つまり、「タンパク質が少ないこと」自体が、代謝アップ(燃費悪化)のスイッチだったのです。
「FGF21」ホルモンの爆発的増加
このエネルギー消費の増加と連動して、血中のFGF21濃度が劇的に上昇していました。
標準食に戻すと、このホルモンも速やかに低下しました。
FGF21が身体に対して「エネルギーを燃やせ!」と指令を出している可能性が強く示唆されました。
結果のまとめ表
| 項目 | 標準的な食事 (HPD) | 低タンパク・高炭水化物 (LPHC) | 低タンパク・高脂質 (LPHF) |
| タンパク質比率 | 約 18% | 約 9% | 約 9% |
| 体重維持に必要なカロリー | 基準値 | 約 +20% 増加 | 約 +20% 増加 |
| 血中FGF21濃度 | 基準値 | 激増 (約3倍) | 激増 (約3倍) |
| インスリン感受性 | 基準値 | 改善 | 変化なし |
| 体組成 (筋肉/脂肪) | 維持 | 維持 (※高カロリー摂取により) | 維持 (※高カロリー摂取により) |
変化しなかったこと(重要な陰性所見)
ここで非常に重要なのが、「筋肉量(除脂肪体重)」と「体脂肪量」は変化しなかったという点です。
ただしこれは、「体重が減らないように無理やりたくさん食べさせたから」維持できただけです。
もし、普通のカロリー量で低タンパク質食をしていたら、消費エネルギー増大+材料不足により、急速に筋肉と体重が減少していたでしょう。
これらの変化は統計的にも有意(P<0.05)であり、偶然の誤差ではありません。

研究の結論
「タンパク質希釈」に対する身体の適応
この研究の結論は、「ヒトは食事中のタンパク質比率が下がると、FGF21などのホルモンを介してエネルギー消費を劇的に高め(燃費を悪くし)、過剰に入ってくる炭水化物や脂質を処理しようとする」ということです。
これは、タンパク質という生命維持に必須の栄養素を確保するためにたくさん食べる必要がある際、余分なカロリーで太りすぎないようにするための、生物としての防御反応(適応)かもしれません。

礼次郎の考察とまとめ
論文著者らの考察
著者らは、脂肪組織のミトコンドリアで「脱共役(アンカップリング)」が起きていると考察しています。
実際に、参加者の皮下脂肪組織を採取して分析したところ、ミトコンドリアの電子伝達系に関わるタンパク質が増加している一方で、ATP合成に関わる部分は低下していました。
これは、「エネルギーを空焚きして熱として捨てている」状態を示唆しています。

日常生活へのアドバイス
この結果を見て「タンパク質を減らせば痩せるんだ!」と飛びつくのは危険です。
「低タンパク+低カロリー」は最悪の組み合わせ
この実験では「おにぎり3〜4個分」余計に食べて初めて筋肉が維持されました。
もし、カロリー制限をしつつタンパク質も減らすと、代謝は上がっても材料が足りず、自分の筋肉を分解してエネルギーにする「カタボリック(異化)」が加速します。
絶対にやめましょう。
停滞期の「ゆさぶり」には使えるかも?
ダイエットで行き詰まった時、一時的にPFCバランスを大きく変える(リフィードなど)ことで、代謝ホルモンFGF21を刺激し、停滞を打破できる可能性はあります。
ただし、期間を決めて行うべきです。
日本人は「隠れ低タンパク」に注意
私たちはもともと欧米人よりタンパク質摂取が少なめです。
意識せずにおにぎりや麺類ばかり食べていると、知らず知らずのうちにこの「エネルギー浪費モード」になっているかもしれません。
一見痩せているのに筋肉がない「サルコペニア肥満」の原因にもなり得るため、やはり基本はタンパク質確保が重要です。

「燃費が悪くなる」というのは、生物としては「生きるのが下手になる」ことでもあります。
人体のシステムは、私たちが思う以上に複雑なバランスの上に成り立っているのですね。
締めのひとこと
「人体という精密機械は、ガソリンの種類によって、エコカーにもスクラップカーにも変貌する。」

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
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記事の内容は、筆者自身が論文を読み解き、わかりやすく要約・執筆しています。
免責事項
本記事でご紹介した内容は、あくまで特定の査読済み医学論文の科学的知見を解説することのみを目的としており、筆者(Dr.礼次郎)個人の、診療上の推奨や個人的な意見ではありません。
特定の治療方法、治療薬、生活スタイル、食品などを批判する意図や、推奨する意図は一切ございません。
本記事は、医師による診断や個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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