
結論「すべての高齢者に効果があったわけではありませんが、心臓病リスクが高めの人では「下の血圧(拡張期血圧)」が改善し、また心疾患リスクのスコア(FRS)にも軽度の改善傾向が見られました。」
この記事はこんな方におすすめ
✅高齢の家族の健康維持に不安がある方
✅「薬に頼らない方法」で血圧をコントロールしたいと考えている方
✅瞑想やマインドフルネスに興味があるが、効果が気になる方
✅介護や医療の現場で高齢者の生活改善に関心がある方
はじめに
皆さん、こんにちは!
突然ですが、皆さんは「瞑想って本当に体にいいの?」と疑問に思ったことはありませんか?
私自身も「ストレスにいいって聞いたから…」と軽い気持ちでアプリを入れてみたことがあるのですが、数日で挫折しました。効果がよくわからなかったんですよね。
でも、もし瞑想が「高齢者の健康」、特に心臓や血圧に本当に役立つとしたら、これは見逃せない話です。
本日ご紹介するのは、フランスの研究チームが行った、65歳以上の人を対象とした18か月の本格的な瞑想プログラムの効果を調べた研究です。
この研究は、イギリスに本部を置く Springer Nature が発行する高齢医学専門誌『BMC Geriatrics(BMC老年医学)』に掲載された、信頼性の高い医学論文です。
今回は、この研究をもとに、「瞑想が本当に高齢者の健康に役立つのか?」をわかりやすく解説していきます。

自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

今回読んだ論文
“Effect of an 18-month meditation training on cardiovascular risk in older adults: a secondary analysis of the Age-Well randomized controlled trial””
(高齢者における18か月間の瞑想トレーニングが心血管リスクに与える影響:Age-Well無作為化対照試験の二次解析)
BMC Geriatr. 2024 Nov 16;24(1):954.
PMID: 39550530 DOI: 10.1186/s12877-024-05550-9
掲載雑誌:BMC Geriatrics(BMC老年医学) 【イギリス】 2024年11月より
研究の対象者と背景
この研究はフランスで行われました。対象となったのは、65歳以上の元気な高齢者134名です。全員、認知機能に問題はなく、普段通りの生活を送れている人たちでした。

参加者は、次の3つのグループにランダムに分けられました:
✅瞑想グループ:週1回のグループ瞑想と、毎日の自宅練習を18か月間継続
✅外国語学習グループ:英語学習を同じ頻度で実施
✅何もしないグループ:普段通りの生活を続ける
つまり、瞑想の効果が、他の知的活動や無介入と比べてどう違うかを比較した研究です。
この研究結果を日本人に当てはめる場合は少し注意が必要です。たとえば、日本人は欧米人と比べて塩分に敏感で高血圧になりやすく、生活習慣も異なります。ただし、瞑想や座禅の文化がある日本では、瞑想を生活に取り入れやすい土壌があるとも言えます。一定の効果が期待できる反面、食事や医療制度の違いもあるため、慎重に考えるべきでしょう。
研究の手法と分析の概要
この研究では、18か月の介入前後で参加者の「心臓病リスク」や「血圧」などの数値を比較しました。特に注目されたのが以下の2つの指標です
✅Framinghamリスクスコア(FRS)
✅拡張期血圧(いわゆる「下の血圧」)
【補足】Framinghamリスクスコアとは?
FRSとは、「今後10年間に心臓病になるリスク」を数字で表したものです。年齢や性別、血圧、コレステロール、喫煙歴などを元に算出され、数値が高いほどリスクが高いとされます。
瞑想プログラムの内容は?
瞑想グループが実践したのは、「CMBAS(高齢者向けマインドフルネス瞑想)」というプログラムです。内容は以下の通りです
✅週1回、2時間の対面セッション(グループ形式)
✅毎日20分の自宅練習を推奨
✅実践内容は「呼吸への集中」「身体感覚への気づき」「優しさを育む瞑想」など
高齢者でも無理なく続けられるように、体への負担が少ない姿勢ややさしいガイドが工夫されていました。

研究結果:リスクが高い人には“下の血圧”が下がるという明確な変化が
気になる研究結果は以下の通りです。
✅全体で見ると、心臓病のリスク(FRS)に大きな違いは出ませんでした。
✅しかし、「もともとリスクが高かった人たち(FRSが10%以上)」に限ると、
→ 瞑想グループでは「拡張期血圧」が平均で約5mmHgも下がっていたという結果が出ました。
✅さらに、高血圧に進行した人の割合も、瞑想グループが最も少なかったという傾向が見られました。
ここで参考になるのが、論文中で最も重要なデータ表「Table 2」です。
この表では、「瞑想をした人」と「しなかった人」の体の状態が、瞑想の前後でどう変化したのかが詳しく比較されています。
※詳細な説明を読む前に、結論だけ知りたい方は【筆者の考察】へ進んでいただいても大丈夫です。
Table 2:かんたん解説

Effect of an 18-month meditation training on cardiovascular risk in older adults: a secondary analysis of the Age-Well randomized controlled trial - BMC GeriatricsBackground Cardiovascular risk factors represent an important health issue in older adults. Previous findings suggest th...
この表の見方はこうです:
✅左の列:測定した健康項目(血圧、体型、血糖、脂質など)
✅真ん中:各グループの瞑想前・後の平均値
✅右端の「p値」:変化が“偶然ではない”と言えるかどうかの目安です。
→「p値」が0.05より小さい場合、たまたまではなく“本当に効果があった”と考えられます。
下記の表でわかりやすくまとめてみました:

つまり、Table 2は「劇的で明確な変化ではないけれど、長く続けることで少しずつ良くなっている可能性を示している」データです。
この表にある変化はすべて「わずか」ですが、瞑想は薬のような即効性ではなく、継続してじわじわ体に良い影響を与えるものです。
副作用もなく、生活に取り入れやすいという意味では、小さな改善傾向が出ていること自体が重要な成果と言えるでしょう。
研究の結論:リスクが高い高齢者には、瞑想が「下の血圧」を下げる効果あり
18か月の瞑想は、すべての高齢者の心臓病リスクを大きく改善するものとは言えませんでした。
しかし、もともとリスクが高めの人にとっては、「拡張期血圧の低下」など、体に明確な良い変化をもたらした可能性があります。
【筆者の考察】日本人のわれわれがこの論文から学び活かせる教訓や注意点
この研究から私たちが学べるポイントをいくつか挙げてみます。
✅すべての人に同じ効果があるわけではないが、リスクが高めの人には特に注目すべき結果である
✅薬に頼らず血圧をコントロールしたい人にとって、瞑想は副作用がない安全な選択肢となり得る
✅日本人は座禅や呼吸法など、もともと瞑想に馴染みがあるため、継続しやすい可能性がある
✅一方で、継続には家族や社会のサポートが必要であり、孤立しがちな高齢者には工夫が求められる

まとめ
✅瞑想は、高齢者の「心臓病リスク全体」を下げる万能薬ではない
✅ただし、リスクが高い人には明確な血圧改善の効果が期待できる
✅日本人にとっても実践しやすい方法であり、今後の健康習慣として注目したい
どんなに医学が進歩しても、「静かに自分の心と向き合う時間」が、私たちの健康に寄り添ってくれるという事実は、ちょっと素敵だなと感じます。
薬では得られない、じわじわ効いてくる力――それが瞑想なのかもしれません。
締めのひとこと
「静かに座る時間が、あなたの未来の健康を守ってくれるかもしれません。」

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
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