45歳からの運動、やりすぎ注意?筋肉と関節を守る最適な運動量とは【医学論文まとめ】

中高年夫婦が公園を楽しく速歩きしているイラスト。筋肉や関節の健康に適度な運動が重要であり、激しい筋トレは控えるべきことを示している。

結論「45歳以上の中高年では、やみくもな激しい運動はむしろ筋肉や関節のトラブルを増やす可能性があり、中強度(MVPA)中心の運動量がもっともバランスがよい」

この記事はこんな方におすすめ


45歳以上で「健康のために運動を始めたい」方

運動はいいと聞くけど「どれくらいやればいいかわからない」方

「やりすぎも良くない?」と疑問を持っている方

高血圧や関節痛など持病があり、運動量に迷っている方


はじめに

皆さん、定期的な運動されていますか?

私はいつも三日坊主でなかなか続きません(笑)

年齢を重ねるごとに「健康のために運動を始めよう!」と考える方は多いですよね。
でも実は、運動のやりすぎ筋肉や関節のトラブルを引き起こす可能性があることをご存知でしょうか?

今回ご紹介するのは、2024年にイギリスの国際公衆衛生雑誌『BMC Public Health』に掲載された運動と健康に関する最新の研究です。

この研究では中国国内の45歳以上15,909人を対象に、どれくらいの運動量が筋骨格系疾患リスクに影響するのかを詳しく調査しました。

その結果は意外なものでした——。

自己紹介

こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。

海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた

生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。

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信頼できる医学情報を発信する外科医・Dr.礼次郎が指を指すイラスト

今回読んだ論文

“”Physical activity levels and musculoskeletal disease risk in adults aged 45 and above: a cross-sectional study””

(45歳以上の成人における身体活動量と筋骨格系疾患リスクとの関連:横断研究)

BMC Public Health. 2024 Oct 25;24(1):2964. doi: 10.1186/s12889-024-20357-4.

PMID: 39455997 DOI: 10.1186/s12889-024-20357-4

掲載雑誌:BMC パブリック・ヘルス 【イギリス】 2024年10月より

筋骨格系疾患とは?なぜ中高年に多いのか?

筋骨格系疾患(以下MSD)とは、骨・筋肉・関節・腱などに起こるさまざまな障害のこと。
たとえば、変形性関節症・腰痛・リウマチ性疾患・サルコペニア(筋肉量減少)などが含まれます。

中高年になると加齢・筋力低下・姿勢の変化などによりリスクが高まるため、適切な予防が重要になります。

今回の研究の対象者は?どこの国、どんな人たち?

この研究は、中国の「CHARLS(China Health and Retirement Longitudinal Study)」という全国規模調査の2015年データを使用。

対象は


✅中国国内の45歳以上の男女 15,909人
年齢層は45〜59歳・60〜74歳・75歳以上
✅男女ほぼ半々
都市部・農村部の両方を含む


背景として、中国も日本と同様に急速な高齢化社会が進行中であり、生活習慣病や運動不足が社会問題となっています。
アジア人種という共通性もあり、日本人にとっても参考になる内容です。

結果は意外!運動とMSDリスクはU字型の関係だった

運動は1週間あたりに合計何METsになるかで、3つのレベルで分類されました:

【補足】METsってなに?

METs(メッツ)運動の強さ(消費エネルギー)を表す単位です。


1 METs = 安静時の消費エネルギー量
✅ 4 METs → 安静時の4倍のエネルギー消費


という意味です。

運動強度はIPAQ(国際身体活動質問票)による自己申告で決定します。

週あたりMETsはこう計算されます。

週METs = METs × 時間(分) × 回数(週)

例)MVPA(4.0 METs)で30分×5日 → 600 METs/週

研究の結果

結果は次の図の通り:

👉 こちらが論文の45歳以上の年齢別にみた運動量(METs)とMSDリスクの関係の図です👇

Physical activity levels and musculoskeletal disease risk in adults aged 45 and above: a cross-sectional study - BMC Public Health
Background Musculoskeletal disease (MSD) is a major cause of disability among older adults, and understanding the role o...

横軸は週当たりMETsの値、縦軸がMSDのオッズ比(OR)。ORが1より下ならリスク減少1より上ならリスク増加と判断できます。

図の曲線がU字型になっているのがポイントです👇。

  • 運動が少なすぎる → リスクが高い
  • ちょうどいい運動量(1500〜1600 METs前後) → リスクが一番低い
  • 運動量が多すぎると一部リスクが上がる傾向も(特に2000〜3000 METs付近)
  • 3000METs以上は一部また低下傾向 → ただしここはサンプルが少なく誤差も大きくなるので注意(論文でもその旨が述べられています)

結果をまとめると


✅ 少なすぎる運動はダメ。

✅ 中くらいの運動(1500〜1600 METs/週)が一番バランス良し(MSDリスクが低下)
✅ 高強度の運動をやりすぎると、全体としてはMSDリスク増加傾向(特に60〜74歳)


ということが明らかになりました。

【筆者の考察】日本人にとって注意すべきポイント

われわれ日本人も同じアジア人種であるためこの結果は多くの機知に富みます。


✅ 日本人もアジア人種で体格・筋肉量が類似
✅ 日本人女性は特にサルコペニアの発症率が高いという報告もあり
✅ 無理なVPA(例:高齢になってから急に始めるランニングや筋トレ)には注意が必要
✅ 高血圧有病率も日本は高いため、特に高血圧の方はVPAを控え、中強度(MVPA)中心の継続が望ましい
✅ 日本の都市型ライフスタイルではLIPA(通勤時の歩行など)も意識的に増やす工夫が必要


なお、この論文には以下の限界もあります:


✅ 本研究は横断研究であり、因果関係は確定されたものではありません。
✅ IPAQ(国際身体活動質問票)は自己申告のため、一定の誤差が含まれる可能性があります。


どんな運動をすればいい?具体例

★ おすすめのMVPA例(週1500METs程度)


✅ 速歩き(30分 × 5回/週)
✅ 軽い筋トレやストレッチ(20分 × 3回/週)
✅ 階段の利用


👉 ポイントは**「継続できること」と「オーバーワークにならないこと」**。

まとめ


✅ 高強度運動(VPA)は全体としてリスク増加 → ほどよい中強度(MVPA)を意識するのがベター
✅ 45歳以上ではやりすぎも不足もNG → ちょうどいい運動量が大切
✅ 何事も無理しすぎは良くないですね😓


締めのひとこと

「運動は“ちょうどいい”がいちばん。あなたに合ったペースで、筋肉も関節も元気に保ちましょう✨。」


以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。

これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。

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