
結論「『コーヒーは“朝に飲む”のが最も健康に良い』。そのタイミングひとつで、死亡リスクが大きく変わることが明らかになりました」
この記事はこんな方におすすめ
✅毎日コーヒーを飲んでいるけど「時間帯」は気にしていない方
✅健康のために簡単に始められる習慣を探している方
✅医学的な根拠に基づいた「正しい飲み方」を知りたい方
✅夜のコーヒーが体に悪いって本当?と気になっている方
時間のない方・結論だけサクッと知りたい方へ
🔴疑問:「コーヒーの飲み方」って、何か気をつけるべきことある?
🟡結果:朝6〜9時に飲むと死亡率が最大15%低下。長時間飲むと逆効果に
🟢教訓:「いつ飲むか」が健康を左右する。朝の一杯が一番の効果
🔵対象:アメリカの成人約4万人を調査。信頼性の高い大規模研究です

はじめに
皆さん、こんにちは!
コーヒーって、なんとなく「体にいい」と言われることも多いですが、
実は“飲む時間”によってその効果が変わるかもしれない
——そんな研究結果が最近いくつも報告されています。
以前このブログでは、「糖尿病のある方が朝8時より前にコーヒーを飲むと死亡リスクが上がる」という、ちょっと意外な研究をご紹介しました。
でも今回ご紹介するのは、糖尿病に限らず、もっと広く一般の成人を対象にした研究なんです。
だから、前回よりも多くの方に関係のある内容だと思います。
前の研究と混同されないように気をつけつつ、今回はまた違った角度から、「コーヒーを飲む“時間帯”と健康リスクの関係」についてお伝えしていきますね。
この研究は、イギリスの循環器専門誌『European Heart Journal(欧州心臓病学雑誌)』に掲載されたもの。
心臓や血管の病気に関する信頼性の高い研究が多く載っている、格式ある医学雑誌です。
「朝のコーヒーが寿命を延ばすって本当?」
今回はそんな素朴な疑問に、科学の目で迫っていきます。

自己紹介
こんにちは! 某県の大規模病院で外科医として約20年の経験を持つ「医学論文ハンター・Dr.礼次郎」です。
海外の権威ある医学雑誌に掲載された論文を一編ずつ読み解いた、
生の「一次情報」をもとに、医学に詳しくない方にもわかりやすく解説しています。
日々、皆さんに信頼できる医療情報をお届けします!

今回読んだ論文
“Coffee drinking timing and mortality in US adults”
(米国成人におけるコーヒーを飲む時間帯と死亡率の関連)
Eur Heart J. 2025 Feb 21;46(8):749-759.
PMID: 39776171 DOI: 10.1093/eurheartj/ehae871
掲載雑誌:European Heart Journal【イギリス】 2025年2月
研究の目的
この研究の目的は、コーヒーの「摂取量」ではなく「飲む時間帯」が死亡リスクにどう関係しているかを明らかにすることです。
これまでの研究では、コーヒーの健康効果、とくに心血管疾患や糖尿病、死亡率への影響が多く調べられてきましたが、「飲むタイミング」に注目した研究はごくわずかでした。
一方、コーヒーに含まれるカフェインには概日リズム(体内時計)を変化させる作用があり、時間帯によってはむしろ健康に悪影響を及ぼす可能性があるという指摘も出てきています。
そこで本研究では、「コーヒーを飲むタイミング」と「全死亡・心血管死亡リスク」との関連を、長期的に追跡して調べることを目的としました。
特に、朝だけにコーヒーを飲む人、一日中飲む人、全く飲まない人の間で、そのリスクに違いがあるかどうかが分析されています。

研究の対象者と背景
この研究では、アメリカに住む成人男女約4万人(40,725人)を対象に行われました。

データは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)から取得されており、年齢、性別、人種、所得、生活習慣など、さまざまな属性を含む代表的な一般人口が調査対象になっています。
加えて、血液や尿などの生体データを含むより詳細な健康情報を持つ別のグループ(WLVS/MLVSの1,463人)も分析に含められています。
対象者の多くはコーヒーを日常的に飲んでおり、その飲むタイミング(朝、終日、飲まないなど)によってグループに分類されました。
この研究はアメリカの成人を対象にしており、食習慣やライフスタイルが日本とは少し異なる可能性があります。
ただし、コーヒーの効果に関わる「カフェインの影響」や「体内時計(概日リズム)」といった生理的メカニズムは人種を問わず共通であるため、日本人にとっても一定の参考になる内容です。
【補足:WLVS/MLVS】
◎WLVS = Wellness and Lifestyle Virtual Study(ウェルネスとライフスタイルに関する仮想調査)
◎MLVS = Multiomics Lifestyle Virtual Study(マルチオミクスとライフスタイルに関する仮想調査)
どちらもアメリカで行われている、遠隔参加型の生活習慣と健康に関する調査研究です。
・参加者はスマートウォッチなどのウェアラブル機器を用いて、睡眠・心拍・活動量などのデータを日常的に記録
・一部の人は、血液や尿、遺伝情報などのバイオマーカー(生体指標)も提供しており、より詳細な体内情報が得られます
・こうした多面的な情報により、「いつコーヒーを飲むか」が生理的な働き(ホルモン、代謝など)にどう影響するかまで深掘りできるのが特徴です
研究の手法と分析の概要
この研究は、観察研究(前向きコホート研究)というスタイルで行われました。
研究チームは、調査開始時点のデータ(食事内容、生活習慣、健康指標など)をもとに、その後平均6.7年間にわたり参加者を追跡し、死亡との関連を調べたのです。
具体的には以下のようなステップで進められました:
対象者は、コーヒーの摂取タイミングによって自動分類(クラスタリング分析)されました。
・朝だけ飲むグループ
・ 一日中飲むグループ
・飲まないグループ など
その後、各グループの「死亡リスク(全体・心血管関連)」が比較されました。
統計解析には、Cox比例ハザードモデルという手法が用いられ、年齢、性別、BMI、喫煙歴、飲酒、病歴、睡眠、身体活動など多くの交絡因子を調整しながら分析されています。

【補足:各種用語】
観察研究(前向きコホート研究)
対象者の生活や健康状態を、時間の流れに沿って長期的に追いかける研究方法です。
治療や介入はせず、自然な状態での変化を見るのが特徴です。信頼性が高く、疫学研究ではよく使われます。
Cox比例ハザードモデル
参加者の生存時間と、それに影響を与える要因(ここではコーヒーの飲み方)との関係を分析する統計手法です。
年齢や生活習慣などの「他の影響」を調整しながら、特定の要因の影響だけを取り出すことができます。
クラスタリング
参加者のコーヒー摂取パターンを、AI(機械学習)で分類する方法です。誰が朝型か、終日型かを客観的に判定しています。
研究結果:朝にだけコーヒーを飲む人は、死亡リスクが最も低かった!
まず最大の発見は、「朝だけコーヒーを飲む人」は、死亡リスクが明らかに低かったということ。
✅️全体の死亡リスクが15%低下
✅️心血管疾患による死亡リスクも9%低下
とくに、朝6〜9時の間にコーヒーを飲んでいたグループで、この傾向が顕著でした。
一方で、コーヒーを飲み始めてから最後に飲み終えるまでの時間が6時間を超えるような「長時間にわたる飲み方」をしていた人では、心血管疾患による死亡リスクが25%高いという結果も出ています(HR: 1.25)。
たとえば、朝7時に1杯、午後2時にもう1杯といった習慣が、これに該当する可能性があります。
さらに、このリスク上昇傾向は男性でやや強く見られたという記載もあり、今後の研究で性差の影響がより詳しく検討されることが期待されます。
なお、摂取量に関する補足的な分析では、「朝に1〜2杯だけ飲む人」が最も安定してリスク低下の恩恵を受けていたことも示されており、過剰摂取を避けるという意味でも実践的なヒントとなりそうです。

生体のデータからも裏付けが!
補助的に行われたWLVS/MLVSという詳細な健康データを持つグループの分析では、朝型のコーヒー摂取習慣が以下のような生理的な利点と関連していました:
✅️メラトニンの代謝が正常で、体内時計が乱れていない(=睡眠リズムが整っている)
✅️空腹時インスリン値やHOMA-IRが良好で、インスリン抵抗性が低く、代謝が安定している
これらの結果は、「朝のコーヒー」が単なる嗜好ではなく、生理的にも健康的な効果をもたらしている可能性を示唆しています。
さらに、朝にだけコーヒーを飲む人たちは、WLVS/MLVSの解析で「生活習慣スコア(lifestyle score)」も高く、
食事・運動・睡眠など他の健康行動にも良好な傾向が確認されました。
これは、彼らの行動そのものが総じて健康的である可能性を反映しているとも考えられます。
『カフェイン入り』の効果が明確だった
さらに注目すべき点として、この健康効果は「カフェイン入りのコーヒー」でのみ確認されたという点も重要です。
カフェインなしのコーヒー(デカフェ)では、明確なリスク低下は見られませんでした。
✅健康効果の中心には“カフェイン”が関わっている可能性があり、「朝に飲むカフェインコーヒー」が鍵となる
という示唆が得られます。

性別や生活習慣にかかわらず効果は一貫
追加の解析によると、性別・人種・喫煙・飲酒の有無にかかわらず、朝にコーヒーを飲む人の死亡リスクは一貫して低い傾向にありました。
特に、お酒を飲まない人や非喫煙者では、リスク低下の幅がより大きかったと報告されています。
主な結果のまとめ表
コーヒー摂取パターン | 全死亡リスク | 心血管死亡リスク | 生理的特徴・備考 |
朝だけ飲む(カフェインあり) | −15% | −9% | 睡眠・代謝が良好、広い層で効果あり |
一日中飲む(朝~夜) | ±0%(差なし) | +25% | 睡眠や代謝に悪影響の懸念 |
飲まない・またはデカフェ | 基準値または変化なし | 同上 | 効果なしまたは不明 |
研究の結論:朝にコーヒーを飲むと、心臓と命を守る可能性がある
この研究では、朝だけにコーヒーを飲む人は、そうでない人に比べて死亡リスクが約15%、心臓病による死亡リスクが約9%低いことがわかりました。
特に、コーヒーを朝のうちに飲むだけにとどめていた人たちにおいて、この良い影響が顕著だったのが特徴です。
また、逆に一日の中で6時間以上の時間にわたってコーヒーを飲み続けている人たちでは、心臓や血管の病気による死亡リスクが25%高くなる傾向があることも明らかになりました。
そしてもうひとつ重要な点として、このリスク低下効果は「カフェイン入りのコーヒー」でのみ見られたという結果も出ています。
カフェインの入っていないコーヒー(いわゆる「デカフェ」)では、同じような効果は確認されませんでした。
なぜ時間帯で効果が変わるのか?
著者らはこの結果について、「体内時計(サーカディアンリズム)」との関係を指摘しています。
朝の時間帯は、コルチゾールというホルモンや心拍、血圧が自然に上がる時間帯であり、そこにカフェインの刺激が加わっても体にとって過剰なストレスになりにくいと考えられています。
一方で、昼から夕方、夜にかけてのコーヒーは、体がリラックスに向かう流れに逆行する形になり、交感神経が長時間刺激されることによって血圧や心拍数が慢性的に高まり、心血管系に負担がかかる可能性があるとされています。
また、夜遅くのカフェイン摂取は睡眠の質を低下させ、代謝や血糖調整のリズムを乱すことも報告されており、これが長期的に見ると死亡リスクの上昇に関連しているのかもしれません。
つまり、「コーヒーは体に良い」というのは、飲む時間帯と、カフェインが含まれていることがポイントだということが言えそうです。

【礼次郎の考察とまとめ】:食べたものが、顔に出る。
ただ飲むだけじゃもったいない。「いつ飲むか」でコーヒーの価値が変わる時代へ
コーヒー好きとしては「毎朝の一杯は健康にいい」と言われると、なんだか嬉しくなってしまいますよね。
でも今回の研究が面白いのは、「どれだけ飲むか」ではなくて、「いつ飲むか」が重要だという点です。
特に印象的だったのは、長時間にわたって飲み続けるような飲み方(例えば朝7時に1杯、昼過ぎにもう1杯…というような生活スタイル)では、かえって心臓に負担がかかるリスクがあるという点。
これは、コーヒーの成分が体内の「リズム」や「ホルモンの流れ」と関係している可能性を示しているのかもしれません。
また、「デカフェでは効果がなかった」という結果も、コーヒーの香りやポリフェノールだけでは説明できない、カフェインそのものの生理作用があることを示唆していて興味深いですね。
とはいえ、この研究はアメリカのデータをもとにしたものなので、食生活や体質の違いがある日本人にはそのまま当てはまるとは限りません。
ですが、少なくとも「夜遅くにコーヒーを飲む習慣」は見直してもよさそうですし、これからは「朝の一杯」をもっと大切にしてみてもいいかもしれません。

締めのひとこと
朝の一杯が、未来のあなたを守るかもしれません。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし本記事が参考になったら、他の記事もぜひのぞいてみてください。
これからも皆さまの知的好奇心を満足させられる情報をお届けできるよう努力していきます。
本ブログでは、Pubmed、医中誌、Clinical Key、ヒポクラ、m3、日経メディカル、ケアネットなどの信頼性ある医療情報サイトを参考に、論文の検索・選定を行っています。
記事の内容は、筆者自身が論文を読み解き、わかりやすく要約・執筆しています。
コメント